第二十七回 架空歴史時代小説の醍醐味(加筆修正版)

 ちょいと気付いた事がございましてね。


「それは、欲望という名の海」での事なのですが――。


 舞台は1782~83年辺り。

 この時期の福岡は~っと調べていたら……


 亀井南冥、奥村玉蘭、仙がい義梵も登場させられるという事に気付いてしまいました。

 ※誰だ? という人は是非、検索を。


 同年代作品「独狼の雷蔵」では、長谷川平蔵を登場させ史実人物を解禁したわけですが、今回もそれが出来る環境にあると気付いて震えております。


 例えば、金印を鑑定した亀井南冥。

 彼は、筑前國早良郡姪浜にある忘機亭という亀井家の開業医院で生まれ、史実だと福岡藩の儒医となって甘棠館を作っています。


 本作ではどうなるのか。

 物語当時は、40歳ぐらい。「欲海」では福岡藩は「黒田騒動」によって改易されているので、史実の制約はない。

 そして、彼の故郷たる姪浜(袙浜)は、萩尾家の門地!!


 あっ! あ! あ~~!

※シナプスが繋がった瞬間


 快感だ!

 登場できる素材と、登場できる理由(リアリティ)が繋がった瞬間の快感!!

 これこそが、架空歴史の醍醐味か!!


 そういえば、この経験は2度目だった。

 1度目は、〔くちなわの平蔵〕こと長谷川平蔵を出した時。彼が1782年辺りに西の丸仮御進物番という「田沼の賄賂係」をしていたという事実を知り、

「これは、平蔵を田沼の側近、闇を引き受ける工作員として使える!」

 と、知った時だ。

 お陰で、長谷川平蔵は以下のような登場を果たしました。




◆◇◆◇◆◇◆◇


「玄順の手下かい?」


 貞助の問いに、その武士は首を横にした。


「平山雷蔵殿とお見受けするが」

「そうだが」


 雷蔵は、懐紙で扶桑正宗の血脂を拭いながら答えた。


「やはり。噂に違わぬ念真流の冴え。お見事でした」

「……」

田沼主殿頭たぬま とものかみ様の命で参上いたしました」

「田沼だと」


 雷蔵の表情が、微かに動いた。

 田沼主殿頭。かの老中、田沼意安たぬま おきやすである。


「独狼の雷蔵殿にお会いしたいそうで」

「俺に? 天下の田沼さんが何の用だ」

「さて、詳しい事は。ですが、おおよそ腕を貸して欲しいのでしょう」


 雷蔵は鼻を鳴らした。


「俺は今、益屋淡雲という男の世話になっていてね。一言の断りもなく仕事ヤマを受けるのは、裏の義理というものに反する」

「それは承知しております。益屋殿の所には、田沼様自ら行かれるそうで」

「そうか。なら仕事ヤマ次第だな……。だが、その前に名乗ったらどうなんだ。人の義理に反するぞ」


 すると武士は、僅かばかりの笑みを浮かべ頭を下げた。


「これは申し訳ない。私は西の丸仮御進物番、長谷川平蔵はせがわ へいぞうと申します」


◆◇◆◇◆◇◆◇




 ん~たまんない。

 もしかすると、なろうの歴史小説はこうした醍醐味を楽しむものかもしれません。


 しかし、想像が膨らむな~。

 広瀬淡窓の父・博多屋三郎右衛門。

 久留米の松下筑陰や樺島石梁。

 高山彦九郎、林子平、蒲池崑山、岩倉具選?


 ま、こうした登場はインフレさせたら駄目だろうから、そこそこね。

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