第三回 生き急ぐ

 僕の嫁はせっかちだ。



 行列は嫌い。

 保育園の提出物は翌日に出す。

 信号を避ける為に抜け道を選ぶ。

 飯も早食い。


 しかも、せっかちさが良い方に作用しているのか、仕事が早い(しかも出来る)ので、僕よりバンバン出世している。



 一方の僕は、マイペース。

 のんびり屋というべきか、食事にも一時間かけたりもする。


 そんな僕はいつも嫁に


「そんなに生き急いでどうするの?」


 と、言っている。

 時間にゆとりがあるのなら、急ぐ必要はないのだ。

 何をそんな好き好んで焦るのか。全く理解できない。


 しかし、ある日嫁に言われてしまった。


「いや、小説を書きたいのか書かなきゃいけないのか、楽しんでいるのか、義務か知らんけど、いそいそと書いて、空いた時間に映画とか読書。そうかと思えば、山に登ったり、釣りしたり。読書も山のような積読もあるやん。全然楽しそうに見えないし、筑前の方が生き急いどうやん」


 と。



 図星!!



 世の中には余暇時間に見合わないほど、楽しい事が多過ぎるのだ。



 なお、妻は余暇時間にソファーで横になり、テレビを見ながらキャンディークラッシュしかしていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る