第17話 『マリア・ガーネットとマルガリタ・アメジスト、天国を奪い取る。』

 終わったー、終わったー! 

 ふんわり初めてふんわり終わる予定だったのにいつの間にかフルマラソンみたいになっていた長編が終わったー! これで放置していた本が読めるー! 


 ……という解放感と、二か月近く頭の中にあった物語と別れることになった寂しさが同居する複雑な気持ちでいるピクルズジンジャーです、こんばんは。


 そんなわけで、気の向くままテンションの続くままに書き続けていたら私の中で最も長いお話になりました本作。

 あとがきもつられたようにやたら字の多いものとなっています。裏話に興味がおありの方はどうぞお立ち寄りください。



◆きっかけ◆

(……というか何かに萌え狂って頭がパーン!ってなった時の人間ってつくづく怖いなっていう話)


 2018年1月、年が明けてまだしばらくしか経っていないというのに日常生活上での疲労と前作が思ったように書けなかったというストレスで気持ちが塞いでおりました。


 そんなおり、TwitterのタイムラインはBLに関する話題で盛り上がっていました。某テレビ番組がきっかけとなり、タイムラインが真剣BLしゃべり場に。


 私はこの通り女子と女子の関係を書くのが好きなものなので、日ごろBLに関する話は基本的によそ様の家庭の事情ないしは対岸の火事という距離感で接しております。

 が、盛り上がっている話題に参加できないとなんとなく寂しくなってくるものです。

 そのため、ついつい自分の中にネタがないものかと記憶の引き出しをひっくり返すような行動に出てしまいます。


 そんな中、「そういえば少し前に子供が見ていた男児向けアニメの悪役コンビが猛烈にエロ……非常に好みの二人だったな」ということをふと思い出しました。

 圧倒的に強くてカリスマ性のあるキャラクターAとそのキャラクターをとにかく心酔しまくっていて何があっても信じぬくB、一見BがAに依存しまくっているように見えて実はBがいるからこそ自分自身でいられるA……というようなモロに好みの関係だったのでグッと心臓を掴まれてしまったのでした。BLに関する話題で思い出すくらいなので当然そのキャラクター二人はどちらも男子なわけなのですが、私は「お前でなければ自分の背中は預けられぬ」という塩梅の代替のきかない同性二人の関係がえらく好きなのです。


 とは言えこのアニメは時々しか見ていなかったので、結局どうなったかは把握していなかったのです。


 そうなるとつい気軽に手元のスマホのお世話になってしまいますね。

 ↓

 アニメ本編のストーリーを把握してしまいますね。

 ↓

 そしたらpixivで二次絵を漁ってしまいますね。

 ↓

 いわゆる「公式が最大手」と呼ばれるような二人だったので、ひれ伏したくなるような二次作品が山のようにあったわけですね……。


 あとはもう、頭がパーン! ってなるだけですね……。



 で、ストレスと疲労で疲れた肉体とパーン! ってなった頭が掛け合わさると、萌えと頭の中にためていた物語のストックが化合し妙な化学反応を起こした結果やたら長くて変なストーリーが出来上がったらするわけですね……。ああ怖い。本当怖い。これのせいで連載期間中は日常業務や趣味が滞りまくりました。



 そんなわけで、疲労とストレスと萌えが生み出したのが本作ということになります。


 発端がキャラ萌えなわけで広義の二次創作品ということになるかと思いますが、元作品やキャラクターからの乖離が激しく原型をほぼとどめていないため、既存作品にインスパイアされたオリジナルという形で発表することにしました。原型留めていたら問題ですしね……。


 当初はエッセンス程度は残していた元作品要素も、書き進めていくうちに完全に別物になっていったので、本作を読んだだけではインスパイア元の二人にはたどりつけないんじゃないでしょうか……。このあとがきではヒントっぽいことを書いていますが純粋に本作だけでは難しいと思います。

 逆に本作だけで「この二人ってもしやあの二人?」とたどりつけた方がいらっしゃったとしたら尊敬いたします(そして「わたしというフィルターを通した結果あの二人がこんな感じになっちゃってすみません」と謝りたい)。



◆ストーリーについて◆

 本作は拙作のスピンオフに相当する作品です。

 本編にあたる作品がこちらになります。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884092843


 御覧の通り中途半端で終わらせているために続編の構想を練っておりました。

 

 その流れで「時に対立し時に共闘する、ヤンキー漫画や部活動漫画などに不可欠なライバル校みたいなチームがほしい」と考えていた折に上にあったような唐突な萌えのウエーブに飲み込まれ、ドタバタとキャラクターとストーリー概要が出来上がった次第です。


 本作はあくまでもスピンオフであり、このシリーズの本編の主人公はあくまでピンク色のウィッチガールことアサクラサクラさんです。本作では悪役側に近いトリックスター的な立ち位置にいますが、本編の主人公はあくまでもコイツです……ともう一回強調します。

 なおこの子は本編で魔法少女を大殺戮するある意味本物のウィッチガールスレイヤーになっています。


 この子は書いている時は楽しいし、もっとえげつない煽りを吐かせてやろうとか下衆な行動をさせてやろうという妙なチャレンジ精神に火をつけるキャラクターでもあるのですが、書き終わった後の「ああまた世間様に顔向けできないようなヤツを出してしまった……」という反動も凄まじいキャラクターでもあります。まるでなにか悪いおクスリのようなヤツです。


 えげつないやつですが、自分の仕事は好きでやっておりプライドをもって取り組んでいるという一面もあります。本作ではあまりそういう面は出していませんが。


 犬耳のウィッチガールことキリサキッカは本作の経験を経て何かしらおもうことがあり、本編でああなってそうなるという流れになります。


 本作は本編の前日譚にあたりますので、アサクラサクラと所属事務所ハニードリームとの仲もまあ良好であり、キリサキキッカを餌付けしている蜜月期間にあたります。

 仲のいい先輩と後輩だったサクラとキッカを書けたことに満足しております。自己満ですが。



◆ネーミング◆

 おわかりかと思いますが、ホームの少女たちの名前は「カトリックの聖女の名前・誕生石」で出来上がっています。

 主役二人にはそれなりに意味があるのですが、あとのメンバーはぶっちゃけ適当でございます。


 ガーネット、アメジスト……ということで「スティーブンユニバース」(※カートゥーンネットワークで放送されている米国産アニメ)のキャラクターと名前がかぶってしまいましたが、特に関係はないです。

 しかし「スティーブンユニバース」は大変すばらしいアニメですので機会があれば是非ご覧になってください。本当に……。あの作品は人類の宝ですよ。



 ブラッディ家の人々の名前も、ベルを除いて聖人や天使にちなんでいます。ピーターにマイクって英語の教科書かよ……ニューホライズンかよ……と思わんでもなかったのですが、欧米圏の名前は守護聖人にちなんでるらしいからこれでいいのだ! ということで開き直りました。

 そんなわけで、マリア・ガーネットの本名であるジョージナは聖ジョージが由来です。

 使い魔の名前がアスカロンなことから、ジョージナの正体が何かは分かる人には分かるだろう。ブラッディ家の事情は無駄に引っ張らずに早めにバラシとけ……ということであのような構成になりました。


 ブラッディは「エクソシスト」の原作者のファミリーネームから引っ張りました。


 ベルはまあ……ピーターの相方の妖精といえばということで。ティンカーベルは「いかけやの鈴」という意味だそうですので、「武器兵器含む魔法の道具を作って売りにきた野心家の姫」というイメージもここからできあがりました。


 マイク→マイケル→ミカエルということで、シスター二人の名前は天使の名前をつけました。ここの教会は教会を模したインチキ施設なのでこういうインチキな名前でやっているという設定です。

 ミカエルと対をなす人、という意味でラスボスに相当するキャラクターの名前が悪魔や堕天使っぽいネーミングにしてあります。



◆悪い妖精の国について◆ 

 悪い妖精の国の名前は大体「甘い物+何かポップでスイートで楽しい感じの単語」でできています。私の作品で今後この法則でできた妖精の国が出てきたらそこはヤクザじみたところだなと思ってくださって結構です。


 ラストプリンセスが悲惨な死に方をしているせいでなんとなく清廉そうなドルチェティンカーも例外ではないです。そもそも「うちが作った武器兵器で名をあげたらあ!」という所からして大概ドヤクザなところであると察していただければ……。


 物語の背景になっている悪い妖精の国の抗争も、中世土豪の争いとかヤクザのシノギ争いの話なのでどこが正しくてどこに言い分があるとかそういうものじゃないのです(だからいかに正当性のありそうな理由を持ち出せるかが重要になってくる)。

 この辺も書けるなら書きたかったのですが、私の腕では無理ですので匂わす程度で処理しています。



◆カテドラルについて◆

 世界を守るために魔法少女を含む異世界からの侵略者を狩りまくるという厨二感溢れる黒服集団カテドラル……。

 魔法少女に対するメンインブラックといいますか、ウィッチハンター的なものがいる世界ですよと明示するために用意した組織ですが、書きすすめるうちにヤクザとズブズブの警察みたいなことになっておりました。元のイメージはハピネスチャージプリキュアにでてきたプリキュアハンターだったような。


 組織やそこに所属する人員の設定を用意していては尺がいくらあっても足りないし、私が一番書きたいのは女子二人の物語だということで黒服のモブ達として一括処理しました。

 なのであんまり大したことのなさげな組織になっちゃいましたね……。


 狩られる魔法少女と狩られない魔法少女がいるのは、組織内で独自の判断基準があるためです。それが外部からは分かり辛いところから批判をあびがちでその辺から悪い妖精業界から嫌われています。

 

 誰よりも素行が悪い魔法少女のアサクラサクラがのうのうと活動を続けているのは、R-18専門の魔法少女を抱えた芸能事務所として表の世界で確固たる地位を築いているハニードリームの看板女優であるために下手に攻撃しづらい……という事情があったりするためです。ただしそれはハニードリームの縄張りである極東方面に限った話で、その外である本作舞台の周辺ではその限りではありません。

 

 ……この辺は作品内で説明できなかったのでここでフォローさせていただきました。



◆キャラクターについて◆

 簡単に補足など


・マルガリタ・アメジスト

 本作主人公です。インスパイアもとのキャラクターを自分なりに移植してみた結果、かようなクレイジーサイコなんとかな女の子になっていました。

 本作が私の書いたものにしては珍しくいっちゃらいっちゃらちゅっちゅくちゅっちゅくに振り切った内容になったのは、コイツを欲望に正直なスケベ娘という設定にしたせいです。なんかもうすみません。

 オープンに助平だわ倫理観が所々おかしいわ、理屈っぽいかと思えば感情的だわテンションが一定してないわで「こんなやつ受け入れてくれる人はいらっしゃるんだろうか?」と終始不安になっていたキャラクターでもあります。引かれてないといいんですが……。


 今時フィクションですら見かけないような過剰な女性言葉でしゃべっているのは、自作でやたらガラッパチな口調で喋る女の子の話が続いていた反動です。

 なお、昔読んだ本で「昔、山の手のお嬢様は『~です』を使わなかった。『~です』を使えば女中じゃあるまいしと叱られた」などと書かれていたことが頭にあったために、極力「~です」を使わないという謎チャレンジに挑戦しておりました。徹底できていませんが。


 どうやらこの子にはヒロイン以外のキャラクターの外見をあんまり描写しない癖があるようですが、自分と似たタイプの外見に興味がない・区別がつかない・男性の外見の美醜は解るようだけど美しかろうが醜かろうが鑑賞し愛でることにあまり関心がない・基本的にヒロイン以外はどうでもいい……という性質によるバイアスがかかった視線が語りに反映されているだけでございます。

 即座にイラストに起こせるレベルでキャラクターの容姿をくどくどしつこく説明されているのが私自身あんまり好きじゃないからそうなってるとかいうわけでは無いのですよ……決して(でもそういう語り手の認知の歪みを利用できるのが一人称小説の良いところですな)。


 それなりに賢くこずるくしたたかに立ち回って生きている女の子というキャラクターだったので、創作界隈でよく囁かれる「作者より頭のいいキャラクターは生み出せない」の呪いに苦しめられたキャラクターでもありました。とはいえやっぱりこういう変な子を書くのは楽しいのですが。



・マリア・ガーネット

 本作ヒロインです。人智を越えた厨二な右手持ち、可哀想な過去、実はお姫様……と、気が付けば設定がモリモリなキャラクターになっていました。当初そこまでするつもりは無かったのですが……。

 その上倫理観が微妙に狂ってるキャラクターと作中世界の中に置いて、一番「普通」に近い倫理観をもっている「タバコの箱」的な役割も担っているキャラクターでもあります。色々乗っけすぎた。


 過去についてはジャンプ系少年漫画を参考に「登場人物の過酷な生い立ちに『可哀想だから』『こんなのあり得ないから』という理由で手加減をしては中途半端になってよくないな。荒唐無稽でも振り切るのが正解だな」と腹をくくった結果、あんな感じになりました。ちょっとやりすぎた気がしないでもないです。


 この子を作るにあたり、信仰心が篤い子を書きたいという願望がありました。

 普段はちゃらんぽらんな現代日本の宗教観の恩恵を存分に被ってい生きており、そしてそれで特に構わないと思いながら暮らしているわけですが、それでも心が神様とともにある方の文章を読んでは「ああ信じるという行為はなんと貴いのか。そしてその心はなんて強いのか」と心打たれることがよくあります……。


 この子にとっての神様とは何で、神様を信じるということがどういうことであるかが、本作を通して描きたかったことの一つでもありました。手に余るテーマですのでまたいつか挑戦してみたくはあります。


 馬鹿ではない子、主人公とは違う分野で頭を使っている子、という設定だったので、やっぱり例の呪いには苦しめられました。

 また、女の子っぽくはないけれど元々の育ちがいいので下品ではない口調であることを心がけてしゃべらせていました。


 ソフトモヒカンという個性の強いヘアスタイルにしたのは、私の趣味です。かなり髪を短くしている欧米人女性ってかっこよくて好きなのです。ベリーショートにするか悩みましたが既に別作品の別キャラクターに採用していることとと、綺麗でかっこ良いソフトモヒカン女性の画像を見て決断しました。


・ホームの少女たち

 主役とヒロイン含めて12人いるという設定なのに、名前のある子は5人だけでしたね……。あんまり活躍しないキャラクターの名前をつけても煩雑になるだけなので敢えてそうしたわけですが、ガヤ感を出す為に名前ぐらいはつけてもよかったなとちょっと後悔しています。


 重宝したのがジャンヌ・トパーズ、思いの外活躍したのがテレジア・オパールでした。

 ただの女王様キャラとして登場させただけなのに後半で大化けしやがったテレジア・オパールには驚かされました。マルガリタ・アメジストが変身する回が河川敷で殴り合う昭和の不良漫画風味になったのはこいつのせいです。なんであんなことになったのか……。主人公の変身シーンはイメージ上ではもっとリリカルだったのに。

 ともかくあんたたちのおかげで日常パートを書くのが楽しかったよ。


 カタリナ・ターコイズとの雑談シーンも結構気に入っています。


・マルガリタ・アメジストのお客様

 インモラルな雰囲気を出したかったのと世界観説明のために用意したキャラクターです。出てただろうかインモラル感……。

 作中では名無しですが、なんとなくドイツ系・イディッシュ系の名前を持っていそうなイメージはあります。

 

 峰不二子とネズミ男を足して2で割ったキャラクターというイメージで動かしていました(こういう集団に属さない単独行動をするキャラクターが好きなので)。


 わりと気に入っている人です。なおこの人が十代の女の子が嫌いなのは特に理由がなく、生理的に無理程度のことだと思います。


・ミスター

 物語を解くためのヒントを振りまく老人枠のキャラクターです。

 戦争体験者ということでWW2に従軍経験のある人……とイメージしていたのですが作中の年代が近未来であることを考慮した結果、ベトナム帰還兵であることに自分の中で修正したりしていました。物語には関係ないので単なる裏設定です。


 外見は映画などでよく見かけるアメリカの退役軍人なおじいちゃんをイメージしていましたが(描写忘れてるけど)、キャラクターのイメージ元は「じゃりン子チエ」のお好み焼き屋のオッチャンこと百合根光三氏でした。


「じゃりン子」というのは、その雰囲気から単なる下町人情漫画かと思われがちですが、実は人間世界のドタバタと同時にアウトロー猫業界の荒んだイザコザが挟まれるという単なる「人情漫画」の枠ではおさまらない魅力をもつ漫画であったりもします。

 この漫画では通常人間世界と猫世界は関わりをもたないのですが(人間より賢い猫が人間世界サイドの問題の解決に介入したりするものの人間世界側は猫世界のことは基本的に感知しない)、過去に様々なことがあってややクレイジーな域に達するレベルで愛猫を溺愛している百合根氏だけはわが子のように愛する猫への思いからアウトロー猫界のイザコザへ介入する等ミラクルな活躍を見せる時があります。なんというか、人間社会と猫社会の仲介するというマジックリアリズムを発揮するキャラクターであったりもするんですよね……。酷い酒乱であることもシャーマンっぽいし(すんません、じゃりン子好きなので隙あればめっちゃ語りたいウーマンなんですよ)。

 単なる人間でありながら変な世界で魔法を使う住人の町に普通に馴染んで生活することで二つの世界の仲立ちをしているキャラクターとしてどこか頭にあったのでした。女子供に親切であるのも百合根氏からのイメージです。


 高齢男性の口調が書いてみると案外難しく、安易な「~のじゃ」調になった点には悔いがのこります。


・神父様(ピーチバレーパラダイスボス)

 テンプレクズな人です。それ以外の何者でもないです。

 主人公とは直接絡まないので影が薄めですが、もうちょっとクズクズしい所を書いてみたかった……。


・シスター・ラファエル

 私の書くものによく出てくる、裏で糸を引くババア枠のキャラクターです(好きなんですよ、陰謀をめぐらせるババア……)。

 マルガリタ・アメジストはあまり外見を描写していませんが、30~40代のアマゾネス系美女であるとイメージしていました。まだ若いので見通しが若干あまく、親友の野望を果たしたすという願望に取り憑かれてやや視野狭窄になっているということになっています。


・マイク

 キーパーソンに相当する人です。が、ラスボスとの兼ね合いなど諸事情あって影が薄くなってしまったような。

 家族を襲った悲劇から薬物に頼らないと正気が保てなくなってしまった兄とか、優等生だったのに悪堕ちした兄とか、直前まで病んでる中ボスにする予定でしたがどうにも気が乗らず、結局裏表のない爽やかイケメンに落ち着きました。

 ああいう状況でさわやかイケメンでい続けるのも並大抵のことではなさそうですが、多分ブラッディ家の人々は皆メンタルが頑強なんだと思われます。


 喋り方や動作はアメリカ産ティーン向け青春映画やシットコム、YA小説に出て来るイケメンキャラを意識しておりました。

 書きながらイケメンの難しさ動かしにくさを痛感しておりました。


・シスター・ガブリエル(イブリス・ルキファ)

 本作のラスボスです。

 ラスボスはこの人にしようと早い段階で決めてはいたものの、どういった動機で主人公に立ちはだかるのか、どういったキャラクターなのか……というところがなかなか詰められず、本性を表す回の直前でようやく決まるという慌ただしさでした。

 故にシェルター時代の呼び名「ルーシー」が突然しれっと出てくるという不細工なことになりました。


 過酷な犯罪の現場や強制収容所などで、自分も被害者であるのに進んで犯人や収容する側に協力して助かろうとする人の話もよく聞きますよね。

 こういう生き延び方を選択した人は物事が解決するとひどく批判され断罪されますが、もし自分が同じ立場だったらこの人たちのようにならなかったと断言できるだろうか? 本人たちの中に罪悪感があればどれほどまでに苦しいか……と常々気になっていたことなんかがこの人のベースになっています。

 その他、自分がいかに可哀想であるかをアピールして徐々に他人を支配して共依存関係に落としてゆくある種の人のことも頭にありました。


 ラスボスであるが故に頑張って主人公たちの前に立ちはだからせようとした結果、ねちっこい意地悪を描くことにこっちがノリノリになってしまい「本当はとてもいい子だったのに可哀想な事情があって悪堕ちした」という点が上手く書けなかったことに悔いが残ります。



◆その他◆

 上で散々語っていますが、きっかけも含めこの物語は私が今まで見てきたもの読んできたもののサンプリングでできています。その解説やその他小ネタや補足など。


・舞台

 明言はしていませんがアメリカのアリゾナ砂漠っぽいところをイメージしていました。

 本歌取りした小説のタイトル『ローン・レンジャーとトント、天国で殴りあう。』の作者であるシャーマン・アレクシーの『インディアンキラー』『リザベーションブルース』の影響だと思われます。この二作を読んだのはずいぶん昔であるにもかかわらず、なんともいえないブルージーな気持ちになったことがまだ体にしみついているものです。が、タイトルの元になった方の小説はまだ読んでない……。ごめん。


 で、シャーマン・アレクシーの小説を読むきっかけになったのが、フランチェスカ・リア・ブロックの『ウィーツィーバット』シリーズです(このシリーズの巻末にシャーマン・アレクシーの本の宣伝があったから)。

 この二方から海外の小説を読むようになり、特にアメリカの西の方や南の方が舞台であんまり人命が尊くなくて全体的に負けが込んでいる社会の下の方で「それでもこっちは生きてんだからなバーカ!」みたいなイムズが燦然と輝くマジックリアリズム要素が強い小説が異様に好きになりました。

 

 そういうのを自分なりにやってみたかったんだと思われます。


・地下室

 アメリカっぽいところを舞台にした特殊な環境下での女子のお話にしたい……ということから発展して『隣の家の少女』を読んだ時の衝動というか感動というものを核の一つにとりいれたくなりました。その辺の事情は近況ノートに書いてあります。


 https://kakuyomu.jp/users/amenotou/news/1177354054885039875


 感想文が苦手であるためにこの小説のどこに心を震わされたのかは非常に言語化しづらいのですが、過酷すぎる状況にあっても自分自身の尊厳を手放さなかった少女の強さに打たれたのではないかと思うのです。


 それが先に述べた、好きで読んでいた小説のラインと合流し、本作の核になりました。


・敗北動画

 アサクラサクラが活動しているトンチキなアダルトコンテンツですが、一応元ネタがあります。pixivなどでみられる、オリジナル魔法少女がエロ酷い目に遭ってるイラスト群などがそれです……(何を見てるんだよと呆れる方もいらっしゃるかもしれませんが、魔法少女に関する表現には関心があるものでつい……)。


 触手やら機械やら異世界の魔獣やらに敗北するのがメインの正義のオリジナル魔法少女のイラストに、能力の質や敵組織についてなどイラストの性質上そこまでやる必要がなさそうに思える非常に詳細な設定を添えられている作者の方が多くいらっしゃいます。

 それらを見ているうちに「ここまで細かな設定があるのに結局エロ酷い目に遭ってる姿を強調するスパイスとしてしか機能していないとは……なんか勿体無い」という気持ちになり、そのモヤモヤと折り合いをつけるために「この子たちは正義の魔法少女であると同時にアクトレスであり、わざと負けていらっしゃるのである。本当は強いのである」という結論を捻くり出したのが土台になってます。

 

 こういう解釈はイラストの作者さん方やイラストを愛好している方々にしてみれば単なる無粋であり、あまり愉快ではないかもしれませんが許していただければと思います。


・ウィッチガール

 魔法少女とほぼ同義の言葉ですが、「この世界にとってはまだ解明できていない不思議なテクノロジーを駆使して変身し戦う女の子」をザックリ指す言葉として使用されているという設定です。魔法少女と変身少女の区別をつけずに大雑把に同一ジャンルとみなしたものがウィッチガールだと捉えてくだされば。


 なので厳密には魔法ではない不思議な力を駆使する女の子も含まれています。

 マルガリタ・アメジストの魔法は厳密に言うと高度に発展して魔法と区別がつかなくなった科学っぽい何かの所産でないかと思われます。


・書ききれなかったこと

 ホームの女の子たちはもともと人質というか、元の家族や妖精の国に対して身代金を要求するというビジネスのために保護の名目で囲われていたのだけれど、このビジネスは効率が悪すぎたので自然に娼館がメインになった……という設定がありました。


 様々な事情でホームを出て行く子もいれば新しく入ってくる子もいるというわりと流動性のある組織だったのですが、この辺のことは物語に組み込む余裕がなかったので残念です。

 

・そのほかイメージ元

 自己申告いたしますと、上記作品のほか宮木あや子『雨の塔』、村田喜代子『ゆうじょこう』、アニメの「少女革命ウテナ」などの影響はかなり濃いかと思われます。

 昔読んだパトリシア・ギアリー『ストレンジトイズ』という小説のイメージも濃いような。

 連載中に読んでいたエマ・クライン『ザ・ガールズ』にも影響されたようなところがあります。


・BGM

 執筆中にあまり音楽を聴かない方ですが、本作に限ってはさまざまな曲の助けを借りました。


 きっかけは、チャットモンチー「世界が終わる夜に」をたまたま久しぶりに聴いた時に、今書いてる小説にぴったりすぎると衝撃を受けた為です……。中学生か。


 他、「うしおととら」の前期OPだった「混ぜるな危険」、「ウテナ」OPの「輪舞-revolution」をよく聴いておりました。女子と女子のお話は潔くカッコよくありたいものだという思いは常にどこかにありますね……自分が書いているものがそうなっているかどうかは分からないものの。


 ホームの少女たちとの脱出するくだりはモー娘。の懐かしい「ザ☆ピース」「恋愛レボリューション21」を繰り返し聴いていました。





 ……当初は悪夢めいた町に閉じ込められている女の子二人がそこから逃走する、リリカルでマジカルでセクシャルでインモラルな現代ファンタジーというかマジックリアリズムっぽい話にしようという所から始まっていたのに、後半あたりからみんな拳でドカドカ殴り合って語らうようなカロリーの高い物語になってしまいました。

 まるで安さと揚げ物メニューに定評のある学生街の名物食堂のごとし。ハイライトかよ……私が目指していたのは喫茶ソワレのゼリーが似合うような小説だったのになんでチーズチキンカツが出て来そうな風味の小説になってるんだか……と、京都市内で学生生活を過ごした人でないと伝わりづらい呟きを漏らしたくなることも度々ありました。


 それでもやっぱり自分のやりたいことをやり抜いた充足感はあるので、上手に書けなかったな、あの時本当はあんな風に書きたかったな、あのストーリー展開はなんとかしたかったな……という技術上の不満以外の悔いはあんまりありません。

 やりたいことをやるという方針を貫いた為、とっくに死んだとばかり思っていた心の中学生がまだ生きていたことにも驚かされました。まさしく「生きとったんかワレ」でした。


 勢いとテンションのみで続けた連載な上に、私の中の眠れる中学生が大暴れした小説なので冷静になって読み返すと恥ずかしい所だらけでございます。

 誤字脱字、タイピングミス、文章のおかしなところ、章を跨ぐとつじつまの合わなくなる箇所……その他お見苦しい所はあるかと存じますが、お許しいただけますと幸いです。見つけ次第修正してゆきます。



 本当に何から何まで趣味の一色で出来た頭の悪い小説ですので、引かれやしないかとか呆れられやしないかと更新する時は結構ビクビクしておりました。


 それでも開き直って完結まで漕ぎ着けることができたのは毎回応援をくださったご三名のおかげです。何よりの励みになりました。感謝の言葉がいくらあっても足りないくらいです。そればかりになりますが、本当にありがとうございました。


 

 ……さて、本編の続編を書かなければという宿題ができたわけですが、それはいつ取り掛かれることになるかは未定です……。


 その際にはまたお付き合いねがえればと思います。

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