第11話 『テレビ、そして異世界を滅ぼした二人の少女についての覚書。』

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 90年代をカルチャーを振り返る作品がじわじわ人気ですね。


 おそらくその次期に思春期青春期を過ごした世代が何となく過去を振り返りたくなる時期に達しているせいだと思われますが、自分もすこしその波にのってみたくなっのが本作に取り掛かった第一の動機です。


 でも私の90年代はオザケンでも奥田民生でも小室哲哉でも渋谷のギャルでもなかった。そういうのも身近にはあったけれど、とにかく今まとめて語りたいのは二丁目劇場で活躍していた吉本の若手芸人たちじゃ。今テレビで中堅芸人として活躍されている方も多い芸人さんの中にはこの当時アイドル並みの人気を保っていた方が多くいたのじゃ……と、若人及び特にお笑いに興味のない関西内外の方に(聞かれもしないのに)語りたくなった次第。


 未だにメガネ部といえば福井県鯖江市が舞台の地域おこしアニメではなく、千原ジュニア・陣内智則・ケンドーコバヤシ(当時はモストデンジャラスコンビだっただろうか)がやっていたユニットコントです。動画があるようなので気になる方はご覧になって下さい。当時は死ぬほど笑いました。


 昔角川が出していた 二丁目芸人のプロフィール本だって持っていたのですよ……。処分できず実家からもってきていたのに、本作の宣伝がてら紹介しようとしたら部屋からなくなっていて困りました。

 

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 また、レギュラー出演されている情報番組での保守的で凡庸なコメントがYahooニュースで取り上げられるたびに憤慨される松っちゃんのへの反応をTwitterで見るたびに「わしはこんなダウンタウン松本を見たくなかった。いつまでもコントやったり体をはったロケをしてるダウンタウンが見たかった……」という気持ちになっていたのが第二の動機です。「ガキ使」があるからいいじゃないかという方もいらっしゃるかもしれませんが、「ごっつ」が好きだったのですよ……。

 ちなみに作中のジウの前世である渡辺翔子は1997年初秋に転生したことになっているので「ごっつ」がどういう風に終わったかを知りません。フジテレビ最高の時代を綺麗に保存している娘です(おそらく長期にわたって番組の枠をのっとるバボちゃんは嫌いだったはずです。野球の中継も)。


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 そのあたりから始まって、「交通事故死して異世界に転生した当時のお笑いファンの記憶を持っている青年が異世界と通じているトラックで実家に年末に帰省し、紅白を楽しむ家族があつまるリビングとは別室で自分の知らない間に生まれていた21世紀生まれの甥っ子と一緒に『笑ってはいけない〇〇』を見ながらお笑いマウンティングをかましてうざがられるホームドラマ」みたいなのを構想していたら、何故かこうなっていました。


 地味に設定を使いまわしていた1999年以降のショッピングモールものとの整合性をつけてみようと欲をかいたことと、日常生活に密着した前作への反動からとんでもないことがバンバン起きるスケールが大きくてアホな話が書きたいという欲求が結びついた結果そうなってしまったと思われます。


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 チタがお気に入り呪文として使いまわしていた歌が山崎まさよしの「One more time, One more chance」というのはお気づきの方も多いことでしょう……そもそもの読者が少ないのはとりあえずおいておくとして。

 ジウがうっかり入力してしまったトンチキな歌は「ああエキセントリック少年ボウイ」です。「ごっつええ感じ」末期のエンディングテーマですね。そんな歌聞いたこともねえよという若人はお手持ちのパソコンおよびスマホで検索ください。


 若い時はただのナンセンスソングかと思っていたものですが、30過ぎて歌うとうっかり胸に迫ってきて身にしみます。そりゃ奥田民生もアコースティックにカバーするわってなもんです。

 同居人がアホほど湯を沸かしたりアホほどティッシュを使うのがめっちゃ腹立つというのも大人になったらよくわかりました。ご実家にお住いの方、パートナーやご家族とご生活の方は是非ご注意を。


(……ところでカクヨムさんでは歌詞の引用を行ってよかったのでしょうか。ルールに違反するようでしたら訂正いたします。)


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 そのような個人的すぎる90年代ノスタルジーから始まった悪ふざけの塊のような物語だったので、ま〜PV数が伸びませんでした! カクヨムでテレビと90年代のお笑いに関することから話も始めても誰もついてきませんわね、そりゃ……。題材選べよ、そういうことは題材選ばなくても物語に読者を引きずりこめる筆力得てからやれよ、と書き終えた後で静かに分析しております。

 

 世界と歴史をいじくり倒すという、明らかに手に余るネタに手を出したことも自分で自分の首を締めることになっちゃいましたね……。


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 途中でにっちもさっちもいかなくなったので決まっていたラストを先に書き、クライマックス部分を一番後に書いて無理やりつじつまを合わせた結果、主人公のチタが異様に可哀想なことになってしまいました。たかだかその辺にごろごろいる普通の女の子にこんな悲惨な運命背負わせたの誰だよ……私だよ! とつまらぬ一人ボケツッコミを頭の中で繰り返す始末。

 ループものではないのでチタの人生をやり直させるわけにもいかず、作者としては手を合わせるしか術がないです。ごめんよ……。

 

 パラレルワールドはあることになっているので、そこの同一存在が幸せに暮らしていることを想像してやるのが精いっぱいです。


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 都合よくほどほどに近代化している異世界のモデルは20世紀初頭のパリです。勿論行ったことはなく、あくまでそれっぽい所というイメージモデルですが。

 書いている時の頭にあったのが新潮社のクレストブックスでよく出ているフランスが舞台のホロコースト小説(『サラの鍵』『ある秘密』等)のイメージだったので作中の異世界があんな感じになってしまったのはモチーフに引っ張られた弊害でしょう。


 そこからさらに引きずられて『アドルフに告ぐ』などを思い出したせいでチタの運命が悲惨なことになったのやもしれません。

 チタとジウの関係を描くにあたって頭にあったのは映画の「永遠に美しく」だったのですが。


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 サブタイトルにあるのは、二人がごちゃごちゃやってる時にこの世界の主なトピックはなんであったか、王子は陰で何をやらかしていたかを示しています。しかしまあ、特に気にしなくても本編を読むには差し障りはないと思われます。王子が陰で色々悪いことをやっていたとだけご理解いただければ十分です。

 下手に歴史に造詣が深い方が読むと「あれがこうなってそうなりなんでこうなる⁉︎」とツッコミ欲が暴走して大変なことになるかもしれませんので、深く考えないでいただけると助かります。


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 第二話でジウがハイヒールの「どうもありがと!」を真似したというのは、友近がずいぶん昔にテレビで披露していた「NSCのオーディションを受けに来た岡山の女子高生」のネタが頭にあったためかと思われます。


 あとスキあらば魔法少女っぽいものを出してしまうのは私の業です。


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 本人は本当にバカ小説として書いていたのでコンテストの笑える話部門に投稿してみたのですが、完全に自分一人だけが楽しいやつだったなあと反省しております……。カテゴリーエラーすみません。



 こんな小説にお付き合いいただいた方に感謝を。ありがとうございます。

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