第4話 『魔法少女サマーキャンプ』

「行け!稲中卓球部」というギャグ漫画があります。


 その終盤エピソードに、実質主役である少年・前野が過去の自分が未来の自分にあてて書いた手紙を読むというエピソードが出てきます。

 中学生の自分はモテモテの美少年になっている筈……という、学内でも名をはせるほどのバカで奇行の目立つ中学二年生になっている現実とのギャップからか、前野少年は小学生時代の自分の幻影をみます。

 こんなところで何をやっているのか、どうして美男子グループじゃなくみっともない友達とつるんでいるのか……と小学生の自分の幻にせめたてられるのです。


 

 本作を書いてみようと思い立つまでに頭の片隅にあったのがこのエピソードでした。

 昔から魔法を使う女の子のアニメが好きだったので「大きくなったらそういうお話を作りたい!」と漠然と夢に見ておりましたが、そういう夢はいかにも子供っぽすぎて公言するのもはばかられたのと、小説や漫画などの創作物に触れるにつれて「どうやらお話を作るのはそんなに簡単ではないぞ」とビビッてしまいそんなことを一度も考えたこともないようなふりをする大人になりました。


 大体私ごときが考えつくような話は、私よりもっとうまい人がとっくに作って世に送り出している……。

 そんな風にして毎日をすごているうちに、殺しきれなかった子供の自分が「こんなところで何をやっているのか」と責め立てるようになりました。魔法を使う女の子が出てくるお話を作るのではなかったのかと。


 そういう子供の自分の声が無視しきれなくなったので、思い切って書いてみたのが本作です。


 書き始めた結果、子供のころからつもりにつもった執念と妄念が噴き出してしまい、異様に文字数の多いものが出来上がってしまいました。

 魔法を使う女の子の他にも、女の子の二人組だとか寮生活だとか、好きなものを遠慮なくぶちこんでゆく形式で進めたので、書いている最中は苦しいけれどおおむね楽しいものでした。子供の自分も満足してくれたかと思います。




 というわけで、最終話がまだ公開されていませんが、六月後半から思い立って書きつづけていた『魔法少女サマーキャンプ』をなんとか完結させることができました。


 今まで趣味で小説を書いてみたり考えたりしてみたことはあったけれども大体途中で放り投げては完結させることができなかったので、出来はどうあれ「やりきった」という達成感はあります。



 以下は補足と反省点など……


 ・まったくキャンプ風景が無いのに「サマーキャンプ」というタイトルになったのは、書き始める前にやろうとしていたことがアメリカ産YA小説にでてくる女子のサマーキャンプ(アメリカ各地からやってきた女の子がキャンプ地のバンガローで過ごしたりするアレ)だったためです……。

 これはサマーキャンプではないのでは?と後から気づいたものの、どうにもこのタイトルが捨てがたく無理やり決行しました。


 ・「魔法を使う女の子」といえど、アニメ界隈と児童文学界隈ではその姿形やルールが大いに異なることが以前から気になっており、どうせならその両者を同じ舞台で活躍させることができないか。なんならいろんなタイプの「魔法を使う女の子」も登場させられないか……と考えたのが書き始めたきっかけの一つになります。

 できる限りのキャラクターを出せましたが、自分の勉強不足もあって魔砲バトルに特化していたりパンツじゃないから恥ずかしくなかったり主に深夜に活躍するタイプの魔法少女を出せなかったのが心残りです。アラビアンなタイプも出したかったですね……。


 ・キャラクターが多すぎたせいで、各々が連れていたマスコットを活躍させられなかったことに悔いが残ります。アミというキャラクターが連れていたペットのトイプードルがどうなったのか、書いてる自分も気がかりでした(おそらく話の外できちんと世話されていたものと思います)。


 ・書き始めたきっかけをもう一つ。伊藤ヒロさんの『魔法少女禁止法』という作品に影響を受けています。魔法少女アニメの解釈が見事で、特に80~90年代魔法少女アニメ好きには嬉しくて「こういうのもありなのか!」と目からウロコな小説でした。ただ、登場人物の多くが悲惨な運命をたどっているのがどうにも忍びなく、こういった趣向でとにかくみんな仲良しでハッピーエンドのものもあってほしい……という思いから書き始めた面もあります。

 『魔法少女禁止法』三巻の刊行を待っていますが、いつになるのでしょうね……。


 ・書いていて楽しかったのは、リーリンとイヅミ、ユメノとヒメカです。ちょっとした意地悪役のつもりで出したユメノとヒメカは予想外に活躍してしまいました。


 ・「魔法少女」の名称の方がメジャーですのでそれを採用しましたが、どちらかというと「魔女っ子」呼びの方が好きです。




 書いてる本人は思いっきりバットを振ったものの見事に空ぶってしまった結果がPV数に現れていますが、「振った!」という達成感を得られたことは自分にとっては大きいように思います。


 思い入れの丈がこの近況にも出てしまい、ちょっと恥ずかしくなってきたのでこの辺で切り上げようと思います。


 お付き合いありがとうございました。



 2017.8.25

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