「みんなの性格がつかめないんです」


結局車内を流れる長い時間を持て余してそう聞いた


橘「性格、ですか」


霧雨「掴みどころが無いというより、ぶれぶれ、っていうか。こんな感じだったけ、みたいな感じで。」


橘「あぁ、キャラがつかめないってことですか。」


そう言って軽く笑って続ける


橘「入学してすぐなんて、みんなそういうものでしょう。新しい環境に身を置かれればみんな自分の居場所、立ち位置っていうものを探るでしょう。」


霧雨「そういうものなんですか」


わかったようなわからないような相槌をする


橘「性癖みたいなものは一生変わらないものでしょうけど、誰かと触れ合う外の膜なんて大抵、人と時によって変わるような不安定なものですよ。」


「その膜の内側に入り込んでその人に触れられたら、きっとそれが朋友みたいなものになるんじゃないですか」





「あっ、私、ここで」


二人がそう声を揃えたのはそれから数分後の出来事だった。


結局最後の乗り換えまで一緒で、果ての降りる駅はというと





桐谷「おや、お姫さんがお二人ご帰還ですか。ふたりとも知り合いだったならおっちゃんにも言っといてくれよなぁ。いやぁココらへんも若いお嬢ちゃんが減ったもんで二人が来るのが楽しみでなぁ」


駅前駐輪場の桐谷さんに絶賛絡まれ中である。


適当に相槌を打ちながら自転車を拾って橘さん、改めて先生とはそこで別れた。




膜の内側に入る、入れば仲良し、か

今の私は


ちょうどチェックインが始まる時間な気がしたので裏口からこそりと入ってそのまま洗い物を始める。


ばあ「あら、帰ってはったんか」


霧雨「うんー。今日も別にお弁当要らんかったわ。」


ばあ「朝あんなに慌てとったのに災難やな。」


霧雨「まぁ、そうでもないかな」


うん。そうでもない。

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