終わった。


が、まだ誰も先生に提出して帰った人はいない。うーむ、一番最初に一人で出しに行くというのは人柱的というかなんだか緊張するというものだ。まだ始まって1時間と少し。3時間という制限時間から鑑みれば早いのかもしれないがこの問題ならそろそろ他にも終わる人が...


いた。すかさず立ち上がり教卓に向かって歩く。一緒に前へ来たのは、日向さん、だったか。人の名前を覚えるのは苦手だが初日の印象が強くて覚えていた。


そそくさと自席に戻り鞄に筆記用具を詰める。鞄の中の弁当が目に入る。なんだ、今日はお弁当必要なかったのか。昨日も朝あんなに慌てて用意したのに結局家でお弁当を食べた。なんともあほらしい話である。入学式の日に日程表を配られているのだからしっかり確認をしない自分が悪い。そういうところだぞまったく。自分で自分に呆れる。


一足先に踏み入った階段で後ろから声をかけられる。


日向「昨日倒れた霧雨さんだっけ。早いね、終わるの」


、、とんだ有名人になっているようだ。


霧雨「そ、そうかな。結構やさしい問題だったし」


日向「えーそう?意外と骨あったと思うけどなー」


そういう君だって私と同じ時間で終わっているじゃない。と言いたいところだったが私の会話スキルでは唱えることはできなかった。


ので話は途切れるかと思ったがそうでもなかった。


日向「私、間違えてお弁当持ってきちゃったんだよねー」


霧雨「あ、私も」


奇遇だ。日向さんはしっかりしていそうなのに。


日向「ほんとに?じゃあさ、一緒に食べない?家に帰ってたべるのもなんだか馬鹿みたいだし。」


うっ。思いがけないところで胸を刺された。


霧雨「わ、わかった。いいよ」


正直継続ダメージで体力が持つかわからないがここで断るのは薄情だ。というか断ったら私は必然的に日向さんの言った馬鹿みたいな人になるのだ。そこまで計算済みとすると中々の策士だ。


日向「学校の横の公園があるじゃない、そこのベンチで食べよ」

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