なんでこう、いつも私は

なんでこう、いつも私は


西日が車窓から差し込んで眩しい。かたんことんと規則的な電車の揺れに合わせて首が揺れる。ほんのりと温かい空気は私から意識を奪って行く。



蘭「なさけない......」


つまりは自己紹介を次に控えた私が緊張で泡を吹いて体育館で倒れたのをこの先生に介抱してもらった、と。


一通り状況を説明されてようやく記憶が蘇る。

だからこの人に見覚えがあったのか。


蘭「私の後、まだ人残ってましたよね。司会、大丈夫なんですか?」


橘「近くにいた先生に無理やりマイク渡してきちゃいまして。きっとその人が、あ、えっと今日この学校に来たばかりで先生の名前も学校のことも何も分からなくて。その、その」


そう話す先生の目尻に露。


私が声を出そうとするのを遮るように震えた声で言う


橘「養護の先生と担任の先生には私から話しておくから、今日は早く帰って休んだほうが」


失礼します


喜雨「霧雨さん。大丈夫?」


橘「あ、あの先生...」


波谷「養護の波谷(ハダニ)です。もう帰りのHRも終わったのでカバンを持ってきてもらいました。駅まで一緒に帰ってくれるそうなのでもう歩けるのならばあなたは速やかに下校してください。そこの新人の先生は職員室で校長先生が呼んでいるので早く向かってください。」


蘭・橘「は、はい」


養護の先生だという波谷とやらはやけに高圧的な態度でそう行ってどこかへ去っていった。


喜雨「あんなに冷たくしなくても。えっと、先生も大丈夫ですか?というか、そのーどういう状況なんですかね。邪魔、しちゃいましたかね」


あぁ。私は天を仰ぐ。


先生がベッドに乗り上げ生徒に覆いかぶさり半泣きで震えているのだからこれを見て何も感じない人間のほうがどうかしているだろう。


死の淵(?)を体験した私はさっきから口調も思考も嫌に冷静で


蘭「だ、大丈夫。心配してくれてありがとう。」


喜雨「霧雨さん、もう歩ける?カバンは私持つから。」


蘭「ううん、全然。カバンも持てるから。えっと先生、」


いつまでその格好なんですか


橘「あ、わわっ、す、すいません。」


蘭「えっと、ほんとにありがとうございました。迷惑かけちゃって。」


橘「いや、全然大丈夫です。はい。えっと、気をつけて帰ってください」


結局カバンは駅まで喜雨さんに持ってもらった。

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