学校

なんやかんやで電車を乗り継いで学校の最寄り駅に辿り着く。


道中でなんとか目を当てられるくらいには身嗜みを整えておいた。


駅から学校までは歩いて5分程度。

海沿いの駅から少し山あいへ坂を登っていく。


時刻は8時を回った頃。

周りにはちらほらと同じ制服の生徒。


門をくぐって階段をのぼりきると右手に自分のクラス。

中には既に多くの生徒がおり各々席についているようだ。


やはり人が多いとひとりでに体が緊張する。顔を伏せながらそそくさと教室に入る。


廊下側の席なので教室に入ってすぐに自席につけるというのは中々に魅力的である。

あまり教室を歩き回ると勝手に目立ってしまう。


ちらりと隣を見やると私とは対照的に今日もさらさらの真っ直ぐな赤髪を揺らした紅雨さんが座っている。


前では喜雨さんが本を読んでいる。


ここで私はふととある違和感に気づく。


(なんか昨日より教室が静か?)


昨日の活気が嘘のようだ。


なんて思ったと同時に頭の中にすっと疑問が通りすがる。


本当に昨日の教室は賑やかだったか。


冷静になって昨日の教室の様子を思い出してみれば教室のごく数人が話をしていただけに過ぎなかったように思われる。


「これが脳内補正ってやつか?」


対人・会話に恐怖を感じる私には周りの会話が誇張されて聞こえていたのではないか。

そんな考えが頭の中でまとまりつつある。


そうなるともはや一種の病気なのではということさえ疑われる。


紅雨「お、おはよう。霧雨さん」


霧雨「あ。おっ、おはよう」


霧雨(ん?どこかぎこちない....?)


昨日のマシンガントークからは想像できない弱々しい声にちょっと拍子抜けしてしまう。


何かあったのか。と聞く勇気もスキルも私には備わっていなかったのでこの違和感をそっと心の底に押し込める。


紅雨(ど、どうしよう。うまく話しかけられなかった。やっぱり色々考えすぎたらダメなんだ。昨日はどうやって話しかけたんだっけ。)

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