第7話 グダグダ斜女神 第3階層

おそらく天界にいるであろう女神様が雲から足を滑らして落ちた。

「キャアアア!?」

そして女神は地上まで落ちてしまった。高尚な女神は地上では存在を維持できないので、人間に取り憑くことにした。

「何でもいいや!」

女神は性別を問わず、人間の男に取り憑いた。

「おお!? これが人間か!? 動く!? 動くぞ!?」

女神は下等生物な人間の体が予想よりもハイスペックだったので気に入った。

「な、なんだ!? この壁の萌え萌えポスターは!?」

男の部屋には、アイドルの萌え萌え萌子ちゃんのかわいいポスターが貼ってあった。他にもフィギュアやグッツがたくさんあった。

「まさか!? これが人間界最強の人間!? アニオタという奴か!?」

女神が取り憑いた人間はアニメオタクだった。



この足を滑らした天真爛漫な女神が稚日女尊。女神は機織女神であり、アニオタのコスプレをするための衣装を作るには最適の初期設定である。何を隠そう太陽女神天照大神の尼寺須の妹である。

ラッキーにも稚日女尊に取り憑かれた男の子が、機神碧である。



その頃、天界では・・・。

「稚日女尊がいない!? どこに行ったのかしら!? 妹が見つからなかったら、主人が心配するじゃない!? 天界警察に指名手配してでも探すのよ!!!」

この疾風怒濤のように指示を出しているのが瀬織津姫。天照大神の皇后である。ということは・・・天照大神はボーイズラブでなく、ガールズラブだったのね。やるな! 天照大神!



巧くんの家。

「おええええ!?」

巧は吐血していた。

「大丈夫!? 巧くん!? ゴホゴホ!?」

望も咳をしていた。

「気持ち悪い・・・!?」

巧と望は体調を崩していた。

「大丈夫? 巧?」

「望くんも今日は学校を休みなさい。」

久々の登場の巧の父母。

「これは一体どういうことだ!?」

「分からないよ!? でも私たちの知らないところで、グダグダしていない展開が行われているのかもしれない・・・。」

そう、巧と望はグダグダしていない展開には大ダメージを受けるのだった。



その頃、渋谷塚高校の職員室。

「め、め、メイクが!?」

愛美露出手の厚塗りの顔面メイクにヒビが入り割れる。職員室の女神たちも吐血に鼻血、嘔吐にフラフラと体調を崩して、グダグダ学校閉鎖寸前だった。

「ギャア!? 塗りたての学校の外壁に亀裂が!?」

宛名は外壁工事が終わり、足場を解体したばかりだった。

「この愚民どもめ! 私は一握りの天才なのだぞ!」

九兵衛は愛ある人間から自己中心的な性格に変わった。

「ぽ、ぽ、ポイズン・チョコレートはいかがですか?」

手矢的は強靭な精神力で独自路線を貫いた。

「まさか!? このグダグダした世界でグダグダしてない出来事が起こったのでは!?」

外野はグダグダしていない世界の異変に気づいた。

「そんなことがある訳ないじゃないですか? この物語はグダグダすることに決めたんですから。」

背霊寝もグダグダを推奨していた。

「背霊寝、あなたはグダグダでなく、ダラダラしているだけです。」

値盤は片膝を着いていても生真面目だった。

「どうしたの? みんな?」

なぜか尼寺須だけは何ともなかった。

「まさか!? 犯人は、おまえか!?」

女神たちは、この状況でも平然としている尼寺須を疑った。

「え、ええ!?」

尼寺須には何が何だか分からない。

「ギャア!?」

その時、愛美露出手の厚塗りファンデーションが粉々に砕けようとした。

「愛美露出手お姉さま!?」

女神たちは愛美露出手を心配する。

「ジャジャジャジャーン! 私を誰だと思っているの?」

愛美露出手は厚塗りの下にも下地のメイクを施していたので、シミ・シワ・ソバカス塗れの素顔が公開されることはなかった。

「ナイス! 愛美露出手お姉さま!」

女神たちは愛美露出手を絶賛した。

「美しくない者には死あるのみ! 私が美しくなくてどうするのよ?」

愛美露出手は勝ち誇ったかのように自分の美しい美貌に酔いしれる。

「状況を説明してもらおうか、宛名。」

「外壁にヒビが!?」

「汚らしい! ひっこめ!」

いつもの司会進行役の宛名が取り乱しているので、キックして画面から消し飛ばした。

「尼寺須、おまえが代わりに説明しろ。」

「はい、愛美露出手お姉さま。どこかで誰かがグダグダ至上主義に反旗を翻したもようです。」

尼寺須は司会進行役に出世した。

「なに!? 民主主義、資本主義、社会主義の次にやって来た、グダグダ至上主義に抵抗するだと!? いったいどこのどいつだ!? 見つけたら、ゲジゲジ眉毛にカットしてくれるわ!」

愛美露出手の怒りは最高潮だった。

「各自、ダラダラしていない者を見つけ次第、簀巻きにして学校の屋上に吊るしてやれ! もし体調が悪い時は、地上界での女神に戻ることも許可する。」

世界のグダグダ至上主義を守るためにスクランブル体制である。

「はは! 愛美露出手お姉さま! 愛する美しき世界のために!」

女神たちは世界平和のために、日夜、グダグダを破壊する者と戦うのだった。



魔界の邪悪なるある方の城。

「クシュン。」

「大丈夫ですか? 邪悪なるある方様。」

「誰かが俺の噂をしているな。モテる適役は仕方がないな。フッ。」

邪悪なるある方は噂話をされてくしゃみをしていた。

「それにしても、そろそろ邪悪なるある方という呼ばれ方では、くしゃみ一つでも支障をきたしてきたな。さっさと名前を決めなければ。」

「ベルデモー〇とかどうですか?」

「バカ者! それでは魔法少年物語と同じになってしまうではないか!?」

「はは、申し訳ございません。」

「クシュン。」

そう、さすがにグダグダ斜女神であっても、リスペクトという名のパクリはしてはいけないのだ。

「クシュン。」

「大丈夫ですか? クシュン様。」

「誰がクシュンだ!? ・・・いや、待てよ。俺の名前はクシュンにしよう。いい響きだ。」

「ええー!?」

こうして邪悪なるある方の名前はクシュンに決まった。肩書は後で考えよう。現在、クシュンの能力は邪念にモンスターを合成することぐらいである。何個もくっ付けていれば、そのうち最強の邪念ができるだろう。相手が女神でなく、人間の勇者とかならナイトメアとケロベロスの合成だけでも、かなり強いと思うのだが・・・。

「久しぶりの出番だ。邪念よ。おまえにドラゴンも合成してやる。いでよ、ドラゴン! キメラ・カスタマイズ!」

「ギャア!?」

邪念にドラゴンも合成した。これにより顔は4つになり、4連続攻撃と眠り攻撃をする邪念キメラが誕生した。

「さあ! 地上に行って、女神たちを倒してくるのだ!」

「はは、クシュン様。かしこまりました。」

こうして邪念は人間界を目指したのだった。



「困ったな。天界に帰れない・・・。そうだ、下界にいるお姉ちゃんに助けてもらおう!」

機織女神の稚日女尊は取り憑いた高校生の機神碧の体を借りて、人間界にいる姉の太陽女神天照大神を探していた。

「碧くん。」

そこに巧と望がやって来た。最初と違い展開がグダグダしているので、特にダメージを受けることはなかった。

「一緒に学校に行こう。」

「うん。」

こうして巧と望は碧と一緒に学校に行くことになった。

「どう? 巧と望はグダグダしてる?」

「グダグダしてるよ。」

「グダグダしてないと吐血しちゃうからね。」

「そうなんだ。すごい。」

グダグダ斜めに転がるのが巧と望のプライドである。

「碧くんは、趣味のコスプレ衣装の制作は進んでいるの?」

「え? ああ~コスプレね。グダグダしてたら進んでないね。」

「グダグダって、いいよね。」

「そうだね。グダグダ最高!」

「ワッハッハー!」

巧と望と碧は笑いながら学校に登校して行く。



「おはよう! 生徒の諸君!」

「おはようございます。背霊寝先生。」

その時、校門の前で背霊寝先生に声をかけられた。

「どうしたんですか? 先生が校門の前に立つなんて珍しいですね。」

「実は最近グダグダしていないキャラクターがいて、みんなの体調が崩れているんだ。まったく困った話だよ。真面目な奴は、いったいどこのどいつだ!?」

背霊寝はグダグダしていない稚日女尊に迷惑していたが、目の前の生徒の機神碧の中に稚日女尊がいることには気づかなかった。

「あはは・・・それでは教室に行きますね。」

「待ってよ! 巧くん!」

「置いてかないで!?」

巧と望と碧は教室に向かった。



その頃、職員室。

「もうすぐハロウィンね。グダグダ仮想大賞とかするのかしら?」

宛名は秋シリーズのイベント、ハロウィンを話題にしていた。

「大丈夫よ。愛美露出手お姉さまなら、ゾンビの特殊メイクも完璧よ。」

九兵衛もハロウィンの話に乗っかる。

「ポイズン・プリン・ハロウィンバージョンとか作ろうか!?」

手矢的はハロウィンも、あくまでも独自路線である。

「それにしても背霊寝がいないと職員室が平和でいいね。」

外野は世界の平和を願う良い女神教師である。

「ハロウィンのコスプレは、やっぱり女神衣装でいいんじゃない?」

値盤はイベントごとも生真面目に考える。

「なんだ!? このプレッシャーは!? 邪神か!? それとも悪魔か!?」

尼寺須だけは、ハロウィン話で盛り上がる職員室で異様な雰囲気を感じていた。

「みなさん! 注目!」

愛美露出手が号令をかける。

「今年のハロウィンの我が校のテーマは・・・男子は燕尾服! 女子はバニーガール! 教師はカボチャ・ダルマの衣装に決定しました!」

「ええ!?」

いきなりのハロウィンの決定事項に女神教師たちは戸惑いを隠せない。

「愛美露出手お姉さま!? 男子生徒は、まだ3人しかいませんよ!?」

「それがなにか?」

「女生徒はゼロですよ!? ゼロ!?」

「18禁にならなくていいじゃない。」

「どうして私たちがカボチャ・ダルマの着ぐるみ姿にならないといけないんですか!?」

「松茸の着ぐるみパジャマでもいいのか?」

「それは、嫌!」

愛美露出手の提案に女神教師たちは従うしかなかったのだった。

「ところで不審者の割り出しは出来たのか?」

「そ、それがまだ見つかっていません。」

ダラダラしていない者は不審者扱いされる。

「愛美露出手お姉さま、実は学校の中に違和感を感じるのですが?」

「さすが尼寺須。私も感じたわ。」

「お褒め頂き光栄です。」

「他のみんなは?」

「グダグダ~。」

愛美露出手と尼寺須は稚日女尊の気配を感じ取ったが、他の女神たちは感じていないので、そこら辺でナマケモノのようにグダグダして、その場を凌ぐしかなかった。

「まったく可愛い奴らだ。この件は尼寺須に任せよう。見つけ次第、ハロウィンのカボチャ・ダルマの衣装を8着と男子生徒用の燕尾服を3着作るように命令してくれ。」

「は、はい。かしこまりました。愛美露出手お姉さま。」

こうして不審者探しは尼寺須が担当することになった。



その頃、校門。

「そこ! スカート短すぎ! こっちに来い! まったく最近の女子高生は露出狂ばっかりなんだから。」

背霊寝は校門で風紀を守っていた。

「はあ・・・生徒の風紀チェックをするために女神に生まれたんじゃないのにな。」

背霊寝は自分だけ秋風が吹く少し寒い校門にいることが悲しかった。

「このままでは真冬になったら私一人、雪が降り積もり凍える寒さの中で風紀チェックをする羽目になるじゃないか!? あああ!? 嫌だ!? 死にたくない!?」

校門の風紀チェックは背霊寝の心を切り刻み自暴自棄に追い込んだ。

「おはようございます。」

その時、校門に邪念タイプ3が現れ、何事もなかったかのように校門を通過して笑顔で学校に入ろうとした。

「待て!」

「ギク!? なにか?」

「その頭が4つもある着にくそうな着ぐるみパジャマは脱いでもらおうか?」

「こ、これは着ぐるみパジャマじゃないんですが?」

「おまえ・・・邪念だな。」

さすがのおっちょこちょいの背霊寝も相手が邪念だと気がついた。

「ワッハッハー! 正体がバレてしまっては仕方がない。俺は邪念だ! ただし今までの俺とは違うぞ! 邪悪なるある方であるクシュン様に、ナイトメアとケロベロス、それにドラゴンも合成してもらったのだ! 簡単に勝てると思うなよ!」

「邪悪なるある方の名前が決まったんだ。おめでとう。」

「ありがとう。これで呼び方に困らなくていいね。」

「本当にそうだね。邪悪なるある方って、言いにくかったよね?」

「そうそう。いつも国語の文体的に抵抗があったんだ。」

なぜか背霊寝と邪念は同じような苦労をしてきたので、お互いの気持ちが通じ合った。

「はあ!? いけない!? 私としたことが邪念なんかと仲良くするなんて!?」

「はあ!? しまった!? 俺としたことが女神なんかとフレンドリーに楽しく会話するなんて!?」

女神と邪念の心が苦労し合っている者同士で通じ合っても、お互いの立場が違いすぎるのであった。

「くらえ! ムーン・ライト・ビーム!」

「4ヘッド・ボコボコ・アタック!」

「いでよ! 月のウサギさん!」

「1ヘッド・ドラゴン・ファイアー!」

背霊寝と邪念は照れ隠しのように互いに必殺技を出し合った。

「あいつらは何をじゃれあっているんだ?」

「さあ?」

愛美露出手と女神たちは背霊寝を迎えに校門が見える所にやって来ていた。

「良い子は安らかに眠れ! ナイトメア・スリープ!」

「zzz。」

背霊寝は良い子なので眠りに着いてしまった。邪念なりの背霊寝を傷つけない手段であったが、攻撃系の必殺技よりも特殊系の必殺技が勝つことの方が多い。

「ああ~!? 背霊寝の奴、校門で眠っちゃった・・・。」

「背霊寝じゃしょうがないわね。」

女神たちは背霊寝に困り果てて呆れた。

「おまえたちは!? 女神共!?」

邪念は女神たちに気づいた。

「おまえには、12月のクリスマスイベントのトナカイの着ぐるみパジャマを着せる時まで用はない。帰ってもらおうか? それともシンデレラのように、カボチャの馬車にでもしてあげようか?」

愛美露出手は背霊寝とは180度、邪念に対する態度は違うのだった。

「それもいいかも。クシュン様の相手も疲れたし、高校の番犬でもやってた方が出番も増えるし。」

「こいつもグダグダだな。いいだろう。背霊寝では校門の風紀チェックもろくにできないし、そうだな。おまえの名前はグダグダ・・・やっぱりナナメにしよう。まあ、どちらでもタイトルに貢献できるから、いいか。」

「ワンワン、愛美露出手様。」

「お、かわいい奴め。よしよし。」

「ワン~。」

愛美露出手は愛犬ナナメの頭を優しく撫でる。愛犬のナナメも満更でもなく、ドラゴンとケロベロスとナイトメアの尻尾を振って喜んでいる。

「かわいい!」

ナナメは女神たちに愛された。

「ナナメ、お手。」

「ワン。」

「ナナメ、お座り。」

「ワン。」

「ナナメ、火を吐け。」

「ワン。」

「ナナメ、あっち向いてホイ。」

「ワン。」

「ナナメ、背霊寝を起こしてきて。」

「ワン。」

これでも邪念から高校のキメラ番犬になったナナメは幸せだった。

「zzz。」

ナナメは気持ち良さそうに眠っている背霊寝の元にやって来た。

「zzz。」

そして背霊寝を温めるようにナナメも一緒に校門で寝始めた。ナナメは邪念を辞めて、自分を理解してくれる背霊寝の側で眠れるのが幸せだった。

「ナナメもグダグダだな。」

女神たちには背霊寝と変わらないナナメに呆れる。

「愛がある光景は美しいな。」

愛美露出手だけは背霊寝とナナメが寄り添って寝ている姿を見て微笑んでいた。



屋上で科学エネルギーの授業が始まった。

「それでは太陽光発電を利用した太陽レーザー砲の実験を行います。」

「はい。」

太陽女神天照大神の尼寺須が担当である。

(なんだ!? プレッシャーを感じるだと!? 私にプレッシャーを与える者が、この生徒の中にいるというのか!? いったい!?)

尼寺須は生徒たちを見渡したが、プレッシャーを与える相手が誰なのか分からなかった。

「巧くん、私たち主役なのに出番が少ないよね。」

「グダグダだから仕方がないんじゃない?」

巧と望は自分たちの立場を理解して、グダグダ授業を受けていた。

「碧くんは何をしているの?」

「来週の同人誌即売会で売るボーイズラブ作品の衣装を織っているんだ。」

「さすが名字が機神っていうだけあって、すごい裁縫が上手だね。」

「エヘヘ。それほどでも。」

碧は裁縫などの家庭科の科目は、得意中の得意だった。

(あ、あの裁縫の仕方は!? ま、まさか!? 稚日女尊か!?)

太陽レーザー砲のスイッチを押そうとしていた尼寺須は、裁縫を見て碧が、妹の稚日女尊だと気づいた。

「あ。」

妹を見つけたはずみで、太陽レーザー砲の発射ボタンを押してしまった。

「ズドーン!!!」

高校の屋上の太陽光発電のパネルが光り輝き、太陽レーザー砲が上空に大々的に放出され、宇宙の惑星に命中し星を粉々にした。

「ギョ!?」

尼寺須も生徒たちも、いきなり太陽レーザー砲の発射に目をギョっとさせて驚いた。

(稚日女尊!)

尼寺須は妹に呼びかける。

(こ、この声は、お姉ちゃん!?)

稚日女尊は姉の声に気づいた。

(稚日女尊、どうして人間界にいるんだ?)

(実は・・・足を雲から滑らしちゃって、天界に戻れなくなったんです。困っていたので人間界でロングバケーションしているお姉ちゃんを探していました。会えてよかったです。)

姉妹の感動の再会である。

(私はアプロディーテー様の護衛という極秘任務を遂行中なので、おまえを展開に送ってやることはできないぞ。)

(ご、極秘任務!? 流石、お姉ちゃん!)

いつの間にか尼寺須たち女神は地上を平和に導こうとしている愛と美の女神アプロディーテーの護衛という極秘任務になっていた。

(おまえも少しの間、人間界に留まり人間という、おもしろい生き物を研究するといい。)

(はい、お姉ちゃん。)

こうして、尼寺須の妹の稚日女尊も人間界に留まることになった。

(どうする? おまえも女神教師、若芽昼寝になって家庭科の教師でもやるか?)

(若芽昼寝!? ダサい・・・。機神碧くんの方が響きがいいので、男子生徒役を続けます。)

稚日女尊は碧として生きていくことを選択した。

(あ!? そうだ、忘れる所だった。)

(なんですか?)

(アプロディーテー様が、不審者を見つけたら、ハロウィン・イベント用のカボチャ・ダルマの着ぐるみパジャマを作るように不審者に命じろと指示されていた。はあ!? ということはアプロディーテー様は不審者の正体が稚日女尊と知っていたのか!?)

(誰が不審者ですか!?)

愛と美の女神アプロディーテーの愛美露出手は尼寺須の姉妹の感動の再会を演出したのだった。

「これで太陽レーザー砲の実験は終える。これより教室に戻って、みんなでハロウィン・イベント用のカボチャ・ダルマの着ぐるみパジャマを作成する。教室に戻れ。」

「はい。」

生徒たちは屋上から去って行く。

「巧くん、この中抜けで私たちが出てこない展開って、どうなんでしょう?」

「衣装作りは裁縫のできない僕たちには自習と同じだから、グダグダできていいんじゃない。」

「そっか、これで巧くんとグダグダできるね。」

巧と望は授業がサボれるので喜んだ。

「二人の分もやっておくから、安心してグダグダ授業していていいよ。」

「碧くんはコスプレ衣装を制作するのはクラスで1番だもんね。」

「授業中に裁縫していいっていう尼寺須先生は優しいな。」

「本当に優しくて良いお姉ちゃんです。」

だって尼寺須は碧のお姉ちゃんだもの。

「お、お姉ちゃん!?」

「あ!? しまった!?」

碧は口を滑らしてしまった。

「実は私は太陽女神天照大神の妹の機織女神稚日女尊です。分け合って、機神碧くんの体に取り憑いています。」

「そうだったんですか。私も愛と美の女神アプロディーテー様の化身、ヴィーナスだったんですが、アプロディーテー様の遊びで男の子の姿から戻れなくなってしまって、この姿です。」

「お互い似た様なものですね。ワッハッハー!」

「ワッハッハー!」

共感しあった望と碧は笑いあう。

「なんのこっちゃいな。」

純粋な人間の巧には、まったく理解できない会話だった。しかし、もうネタはバレているが巧には時の神が取り憑いている。



その頃、魔界。

「遅いな。邪念が帰ってこない・・・。」

邪念は愛と美の女神アプロディーテーの救済を受けて、高校の番犬ナナメとして、人間界で生きていくことを選んで、幸せに背霊寝を乗せて遊んでいる。

「・・・寂しいよ。」

邪悪なるある方は名前はクシュンに決まったが、邪念も去ってしまうと側近が誰も居ないダラダラ垂れ流し状態でもあった。

「今後のことはどうしよう。私がクシュンなので、ゴホゴホやゲリを生み出して側近にするか? それとも七つの大罪の悪魔を7匹召喚するか、悪の主役の座を奪われそうで嫌だが堕天使ルシファーを登場させるか。ああ・・・やってられない。ストレスだ!? ダラダラしたい!」

クシュンは困り果てて、脱力してダラダラすることにした。



放課後の校門。

「うらら! うらうらら!」

背霊寝が高校の番犬のナナメの背中に乗って、雄たけびをあげながら楽しそうに話しまくっている。

「あの、すいません。」

そこに可愛らしい女性が訪ねてきた。

「なんでしょうか? 私は、こう見えても高校の教師です!」

「ワン!」

背霊寝とナナメは女性の存在に気づいた。

「私は治水女神の瀬織津姫と申します。こちらに主人の太陽女神天照大神と、その妹の機織女神稚日女尊がお邪魔していると思うのですがご存知でしょうか?」

瀬織津姫は天界から行方不明になった主人の妹の稚日女尊こと、碧を探しにやって来たのだった。

「ああ~、尼寺須の奥様ですか、いつもお世話になってます。妹さんは知りませんが、たぶん尼寺須なら屋上で太陽光発電システムのパネルの調整をしていると思いますよ。呼んで来ましょうか?」

「いいえ、大丈夫です。自分で呼べますから。」

そう言うと瀬織津姫は手を天に掲げる。

「空よ曇れ! そして雨を降らせたまえ! 大雨警報!」

黒い雨雲が発生して、青空を一瞬で隠していく。そして、ザーっと視界すら見えない豪雨が屋上だけに降り出すのだった

「スゴイ! パチパチパチ!」

「ワン! パチパチパチ!」

背霊寝とナナメは瀬織津姫の水芸に感心して拍手喝采だった。

「誰だ!? 私の太陽光発電パネルに雨を降らせたのは!?」

屋上から尼寺須が校門前に降ってくる。

「あなた!」

「お、おまえは瀬織津姫!?」

感動の夫婦の再会である。しかし緊張感のある空気が流れていた。

「あなた! いつまでも人間界で遊んでないで天界に戻ってきてください!」

「い、嫌だ! 私は愛美露出手様と一緒に人間界で遊ぶんだ!」

「誰よ!? その新しい女は!? また浮気したのね!? 殺してやる! 今度こそ殺してやる!」

「や、やめろ!? 私は無実だ!?」

瀬織津姫は嫉妬焼きであった。そのため尼寺須は自宅に寄り付かなくなっていた。

「何事ですか? 美しくない行動はやめなさい。」

その時、愛美露出手と他の女神教師たちが現れた。

「愛美露出手お姉さま!?」

「こ、この美しい人が愛美露出手様。」

美しい愛美露出手を見た瀬織津姫の目はハートになっていた。

「これは尼寺須の奥様、いつも御主人には私の地球を愛ある美しい青い惑星を保つエコロジーな活動の太陽光エネルギー部門で協力してもらっています。」

これは愛美露出手のグダグダ的な後付けの適当な設定である。

「そ、そうだったんですか。」

「ご主人をお家に帰すことが出来なくて申し訳ありません。」

「いいえ、構いません。主人を死ぬまでこき使ってください。」

「いいんですか?」

「はい、喜んで協力いたします。主人のことを煮るなり焼くなり好きにして下さい。」

こうして瀬織津姫の嫉妬は愛と美の女神アプロディーテーの愛美露出手の愛ある美しさの前に解決した。

「尼寺須を吊るせ。」

「え?」

「かしこまりました! 愛美露出手お姉さま!」

「ええ!? やめろ!? お許しください! 愛美露出手お姉さま!?」

女神たちは尼寺須を十字架で屋上に吊るした。尼寺須に太陽女神天照大神として自家発電してもらおうというものだった。

「これで電力不足は問題なし。」

「ナイスアイデアです! 愛美露出手お姉さま!」

「今月のエコ目標も達成だな。」

「さすがです! 愛美露出手お姉さま!」

愛と美の女神は地球にも優しいのだった。

「水と緑に溢れた、この美しい地球を、次の世代に引き継ぐのも大変だな。」

愛美露出手は爽やかに額の汗を拭う。

「あ、瀬織津姫。」

「あ、愛美露出手様。」

「あ、先生方だ。」

そこに自宅に帰ろうと巧と望と碧が現れた。碧は姉の瀬織津姫に、望は主の

愛美露出手を見つけた。

「まさか!? 私のことを天界に連れ戻しに来たんですね!? 私は絶対に帰りませよ! 姉と一緒に、もう少し人間界で遊びたいんです!」

碧は人間界でのアニオタ文化に毒され、また巧や望と出会って、友達ができたのも嬉しかった。

「違うわよ! 私も天界に帰らず、みなさんのお世話をすることにしました!」

「わ~い! みんな、一緒だ!」

瀬織津姫も人間界で暮らすことにした。

「何か忘れているような・・・。まあ、いいっか。」

碧の忘れ者・・・。



夜の学校。

「誰か! 助けてくれ!」

太陽女神天照大神は屋上で十字架に吊るされたままだった。

「いけ! ナナメ!」

「ワンワン!」

学校には尼寺須の悲痛な叫びと、夜行性の月の女神セレーネーの背霊寝と高校の番犬のナナメは高校のグラウンドを駆けまわって楽しそうに遊んでいた。

「今日は月が出ているな! 満月だ!」

「ワン!」

のんきにダラダラ平和って、いいな。


つづく。

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