第2話 1週間前

アルバイトの話が出て1週間後、祖父が話をつけたという営業部長さんに会う為、午前中で授業の終わる日を選んで東京の端っこまでやってきた。一応形だけでも面接をしなければいけなかったからだ。

前もって教えられた駅で電車を降り、東京湾を背に10分ほど歩くと目指す建物を見つけた。

『株式会社 匠美鎖(たくみくさり)』


受付カウンターらしきところに人の姿はなく、電話機だけが置かれていて、“御用の方は内線ください”とある。示された手順通りに電話をかけて名前と面接にきた旨を告げると、エレベーターで5階に上がるように指示され、何人も乗れないような小さな箱で上がっていく。

エレベーターホールには、大柄な男の人が待っていた。

この人が営業部長の田辺さんか。

「やあ、よく来たね」

促され、廊下にずらりと並んだ同じような小部屋の1つに入る。扉に下げられた札を『使用中』にひっくり返し、きちんと閉まっている事を確認すると、無理矢理押し込んだようなソファに向かい合った。あまりに狭いのでテーブルに膝が当たる。

「狭くて申し訳ないね」

さて、と接続詞をはさみ、改めて自己紹介をする。

営業部長・田辺 雄基氏はその昔、まだ今ほど大きくなかった『SAIHARA』に勤めていた事があるそうだ。その時祖父には色々世話になったそうで、今回のこんな無理な頼みも断る事ができなかったらしい。


「履歴書は持ってきたかな?……ああ、ちゃんと鉛筆で書いてきてくれたね」

普通このような書面は、ボールペンなど消えない筆記具で書くのが基本だが、不都合な記入がないか一応確認したいというので、田辺部長が目を通してから清書する事になっていた。


「……………大体、問題なさそうだね。1つだけ直そうか」

氏名の上のふりがなを指す。

「名字は“さいはら”ではなく“にしはら”と読む事にしよう。それだけで結構印象が変わるしね。この業界で“さいはら”と聞けば、どうしたって連想してしまうから」

「分かりました」

ペンケースから取り出した黒の万年筆に、田辺部長が目を留めた。

「それは、お祖父さんからプレゼントされたものかな」

「はい、書きやすいので気に入っています」

「書きやすい代わりにインクを詰め変えたり、ペン先の手入れが必要だったり、ちょっと面倒だろう。あの方は職人気質だから、こういう手間がかかっても良いものに心惹かれるんだろうね」

そう言うと、上着の胸ポケットから1本の万年筆を取り出す。

「昔、私も君のお祖父さんにもらったんだよ。それからはいつも持ち歩いている。相棒でお守りという感じかな」


清書をするかたわらで、田辺部長が“裏”注意事項を挙げる。

決して僕の正体がバレないように行動する事。それが最低限の条件だ。

立場は、田辺部長の遠い親戚の、ちょっとジュエリーに興味のある高校生。期間は春休みの2週間。月曜日から金曜日まで、9時から18時の1日8時間フルタイムのアルバイトだ。

それから、『匠美鎖』で知った事は一切口外しない。あらゆる“数字”に関する事は絶対に秘密にする事。

”数字”とは、取引先からの受注数や金額、業績などの会社の内情はもちろん、製作に関わる方法であったり目安の事だ。

それはたとえ相手が祖父であっても、いや、『SAIHARA』現役会長である祖父には特に、だった。

すでに祖父から言われていたから、驚く事もなかった。


“何があっても、田辺部長には迷惑がかからないようにする”

無理を聞いてもらったこちらの気構えとして、この1点だけは細心の注意で守ると祖父と約束していた。


さらに従業員の心得や服装などの細かな説明を受け、初日までに用意する物をメモに取る。

面接という名の口裏合わせが済み、簡単に社内を案内してもらえる事になった。

自社ビルは5階建てで、1~3階がアトリエと呼ばれる工場、4・5階が企画・営業・総務などで使い分けているそうだ。


祖父や父に連れられて『SAIHARA』の工場を見学した事はある。だけど。

良いところしか見せない、計算された応答。緊張した空気。どこか白々しい雰囲気。

普段の雰囲気では決してないだろう。

だから『匠美鎖』の工場見学は、別の意味でかなり新鮮で面白かった。



「お疲れ様です!」

田辺部長は1階のアトリエ入り口に立つと、おもむろに息を吸い、広い作業場全体に響き渡るような大声で挨拶をした。びっくりして思わず1歩後ずさった僕の方に目がけて、部屋のあちこちから怒号と紛う挨拶が返ってくる。

職場の基本は挨拶だと聞いた事がある。『SAIHARA』でも、もちろん気持ちのよい挨拶を奨励している。

『匠美鎖』ではさらに徹底しているようだ。


ややあっけにとられていた僕に、田辺部長は何事もなかったかのように説明してくれる。

「ここのフロアは第一アトリエ、通称『マシンメイド』。マシンメイドチェーンとそれを使用したネックレスを主に作製している部門だよ」


会社名からも分かるように、『匠美鎖』は鎖(チェーン)を主に扱う会社だ。

今はリングやペンダントトップといった鋳物(キャスト)ものや金具なども取り扱っているが、創業30年来イタリアから輸入した編み機を使用してのマシンメイドチェーンが売りで、長尺だけでなくネックレスへの加工も行っている。


長尺というのはボビンに巻かれた長い状態のチェーンの事で、その長尺チェーンを決められた長さにカットし、エンドパーツをロウ付けして、金具を取り付けたのが基本的なマシンメイドチェーンを使用したネックレスだ。



「分かりやすいように、加工の流れの順を追って説明していこう」

田辺部長が熱気を放つ大型機械の横に立つ。

「この辺りが『溶解』と呼ばれる部門で、この機械で地金を熔かして、色々な割金を混ぜて決められた品位へ落とし込むんだ」

「え?……あ、はい……」

しょっぱなからハテナのついた相槌を打ってしまった僕の後ろから、助け船の声がかかる。

「田辺部長~、その説明じゃ、知らない人が聞いたらちんぷんかんぷんですよ~」

苦笑しながらツッコんでくれた、機械を操作をしていた男の人に、思わず感謝の視線を送る。実のところ、右耳から入ったせっかくの説明は、聞き慣れない専門用語が多くて理解できないまま左耳からするりと抜け出てしまっていた。

”地金”は確か、細工の主体となる金属、宝飾業界では主に金・プラチナなどを指す言葉のはずだが、ワリガネ?ヒンイ?聞いた事があるような気はするけど……。


「そうか?そうだな。うーん、たとえば金を例にすると、金99・99%、つまり24金と呼ばれる純金は、そのままだと柔らかすぎて加工しづらいだけでなく、変形しやすくて傷も入りやすい」

「あ、何か聞いた事があります」

「だから硬度と強度を持たせる為に、銀や銅などを混ぜるんだ。この混ぜる卑金属の事を割金と呼ぶ。そして割金を加えるという事は、イコール金の割合が減るという事だから、24金ではなくなる。18金なら18/24、つまり75%の金が含まれているという事で、あとの25%は割金という訳さ」

「なるほど……!」

今度は分かりやすい。

「品位というのは18金なら75%だったり、10金なら約42%だったりと決められた割合の地金の量の事で、24金に割金を混ぜて18金などにする事を“品位を下げる”というんだよ」


ところで、と田辺部長は右手と左手それぞれに金属片を乗せて見せる。

「これとこれ、どちらが金を多く含むと思う?」

見比べると、一方はいわゆる金色で、もう一方は白っぽい金色。

「金色が濃い方ですか?」

「正解は、“両方とも同じ”。どちらも18金だよ。割金の銀と銅の配合を変える事で、同じ品位でも銅が多ければ赤っぽくなるし、銀が多ければ緑っぽく、と色味を変える事ができるんだ。他にも、基本の銀・銅の他に極微量の他の金属を加えてさらに強度を増したり色味を変えたりもする。何をどのくらい加えるかは、納品する会社の指定によって違うんだよ」

「奥が深いんですね」

「そうやって決められた割合に作られた合金を、いろいろなサイズの板状や線状の材料に加工するところまでが溶解の仕事なんだ」



残念ながら作業は1段落してしまっていて見られなかったが、熔かす前の金塊を持たせてもらえた。

「おおおおおおおぉぉぉ~」

乗せられた瞬間、その重さに思いがけず手が下がる。見た目以上の、ものすごい重量感。映画とかで出てくる本物の金の延べ板だ!テンションが上がる。

田辺部長がにやりと笑う。

「これで今だと大体500万円くらいかな」

思わず取り落としそうになった。僕の手の上に、ごひゃくまんえん!?


「“金という金属である”というだけで、それだけの価値がある。これを加工する事でさらに価値のあるものにしていくのが、俺らの仕事さ」

そう、だから“アクセサリー”と違い、“ジュエリー”は高いのだ。

一連の加工に対する『加工代』に、“金であるという価値”、つまり『地金代』がプラスされるから。



手に残る感触と感激を引きずったまま、やかましい音を発して細かく動く機械の前にきた。ずらりと何十台も並んでいる。この機械は知っている。チェーンを編む機械だ。

編み上がったばかりのツヤのないくすんだ色のチェーンが、少しずつ少しずつ吐き出されてくる。

「今編んでいるのは小豆、ベネチアン、ボールチェーン、喜平というところかな。まだ3月だからそうでもないけど、夏ぐらいから忙しくなり始めてクリスマス前には戦場になる。24時間体制でチェーンを編む事もあるんだ」

「そうなんですか」

「君は若いからまだ経験ないと思うけど、クリスマスというのは男からは彼女へのプレゼントだったり、女性は自分へのご褒美だったりと、ボーナスが出る時期というのもあってジュエリーが売れる最大のイベントなんだよ。私の担当するお客さんには、クリスマス前の1か月で1年の売上げの1/3の金額が動くというところもあるくらいだ」

「たった1か月で1/3ってすごいですね」

「うちはメーカーだから、店舗に並べる為に先行して10月、11月が繁忙期の山になるんだよ。営業も総務も、手が空いたらみんなアトリエに入って残業さ」

「じゃあクリスマス直前は逆に暇なんですか?」

「いやそれが、売れ行きがいいと追加の注文が入ったりして大体毎年23日ぎりぎりまで忙しいんだ」

「え?23日って祝日じゃあ……」

「休日返上」

そういや父もクリスマス前はイライラピリピリしてるもんな。

クリスマスの売り上げは死活問題。よく覚えておこう。『SAIHARA』だってメーカーだ。時期による繁忙の事情は業界を通じて同じだろう。



その後、編み上がったチェーンにカットを入れる工程や、チェーンを仕上げする工程をさらりと見せてもらい、作業机の並んだ一画に来た。机に向かう職人さんたちは、細く絞った火を出すバーナーを巧みに操っている。

いわゆる“ジュエリーの製作”という写真なんかでよく見られる光景。ロウ付けだ。


「ここが『組み・ロウ付け』で、仕上がったチェーンを作りたいネックレスの仕様に合わせてカットして、丸カンでひろう為のエンドパーツをロウ付けし、金具を組むんだ」

職人さんの手元を見ると、バーナーを持つ反対の手に、長い線状の金属をピンセットと一緒に持っている。

「あれは、なんですか?」

「あれはロウ材。金属と金属を付ける為の、はんだみたいなものだね。たとえば18金の地金だと融点が900度くらいだけど、同じ融点のロウ材だと、ロウ材が溶けるまで火を当てたらチェーンやパーツも熔けてしまうだろ?だから融点が少し低いロウ材を使うんだよ」

「ロウというのは、はんだみたいに全然違う金属なんですか?」

「いや、もちろん金を含んでいるよ。ただちょっと品位は下がってしまうけどね。含有している成分は金・銀・銅の他に微量の金属が入っているらしいんだけど、詳しい成分と配合の割合はロウ材屋さんの企業秘密でね」

耐火台の上に、専用の器具でたくさんチェーンの端っこを並べてどんどんロウ付けしていく。ものすごい早さだ。手際の良さに思わず見とれる。

「あの細い口のバーナーでちょうどいい場所を絶妙な加減で火を当てて、ロウがしっかり熔け、パーツが熔けないところを見極めて1本1本ロウ付けしていくんだ」

「すごいです」


僕も田辺部長もここでは自然と小声だった。壁を隔てた隣では機械が騒音を上げていたから、僕らの会話も声を張り上げないと聞こえないくらいだったけど、『組み・ロウ付け』では繊細な作業が黙々と行われている。心なしか、大柄な田辺部長が小さくなっているように見えた。


そっと部屋を出ると、ホッとして息を吐いてしまう。

「このフロアは以上かな。大体の流れは分かったかい?」

「はい。……なんて言ったら図々しいですよね。このくらいで分かった気になってしまったら」

きょと、とした田辺部長は次の瞬間笑いだした。

「はっはっはっ、君は謙虚だね。その意気だよ。向上する気持ちを忘れない事は職人にとって、いや、人として大切な事だからね」

そういう域に達する前の問題だと思うが……。僕みたいなまだ社会に出た事のない若造が、ちょっと上っ面をさらったくらいの知識で分かった気になるなんてダメだろう。



階段を上がりながら上階の説明をしてくれる。

「2階は第二アトリエ、通称『ハンドメイド』。ハンドメイドチェーンやリングなどのキャストものを主に作製しているフロアだよ」

「ハンドメイドチェーンって、さっきのマシンメイドのロウ付けとかも充分ハンドメイドじゃないんですか?」

「ああ、“チェーン本体の部分が”だよ。機械編みではできない人の手で組まれたチェーンをそう呼んでいるんだ」


部屋の入り口で田辺部長はさっきと同じように気合いの挨拶をし、入っていく。

マシンメイドアトリエはたくさんの機械が並んでいるせいで、それらの発する音と熱が凄くて“工場!”という感じだったけど、ここはわりと静かで部屋の中央に色々な機械も並んではいるが、動いているものは少ない。ぐるりと壁際を作業机が整列していて“アトリエ”という感じがする。

――ああ、そうか。

マシンは“男の作業場”というか職人のほとんどが男性だったけど、こちらはぱっと見ても女性が多い。


「この辺りが『鋳造』。鋳物(キャスト)と呼ばれる方法でリングやペンダントトップを作製している。簡単に言えば、熔かした地金を型に流し込んで1度にたくさん同じ形のものを作るところだよ。1つの原型をゴムで型を取り、そのゴム型にワックスを流して同じ形のワックスをたくさん作る。それを1本の棒にくっつけていって地金を流し、1つの原型から1度にたくさんのキャストを取る」

机の上の機械に向かう職人さんは、ゴム型を次々と機械にセットしては、開いて中のワックスを取り出す。

「あの機械はインジェクター。あれでワックスをゴム型に流すんだ。“インジェクション”が注射とか注入の意味だから分かりやすいだろう」


ピンクや緑や青など様々な色で型を取られたワックスは、リングやパーツの形をしている。それを15㎝くらいのワックスの棒にびっしりとくっつけていく。まるで――

「“ツリー立て”と呼ばれる工程だよ」

そう、“樹”みたいだ。

「色が違うのは種類が混ざらないようにする為ですか?」

「というより、ワックスの固さの問題だね。ワックスにも個性があって、同じ型でも流れづらかったり流れやすかったりするから使い分けているんだ。これを見てごらん」

ひょい、と“クズ入れ”と書いてある箱からワックスのリングを取り出し、ちょっと確認してから渡される。

石が色々と留まるタイプのリングみたいだ。

「石を留める為の爪が立っているだろ?」

よく見ると1㎜にも満たない細さの小さな棒が何本も立っている。

「でもここ。爪の先が欠けてしまっているのが分かるかな?」

最初は全く分からなかった。ぱっと見、欠けているところなんて無いように見える。

だけど目を凝らしてよーくよーく見ていると、ふと突然ピントが合った。

「あ」

……本当だ。他の棒に比べて短いのや先細っているところがある。

「地金で鋳造するとワックスで取った形をそのまま反映するから、ワックスの状態で完璧でないといけないんだよ。こういう細かい先までワックスが入っていないのは、ワックスの固さとゴム型の相性が悪いとか、機械がよく温まっていないとか、注入する圧力が弱いとか色々な原因が考えられて、違う型を取る度に微妙に調整するんだ」

「はああああ、すごいですね」

感心の溜め息しか出てこない。さっきから“すごい”としか言ってない気がする。

そんなに繊細で微妙なものなのかぁ。


「で、このワックスのツリーを石膏で固めて型を取り、その中にドロドロに熔かした地金を流すんだ。この一連の作業を“キャストを吹く”と呼ぶ。残念ながら地金を流す作業は、後の工程もあるから午前中に終わらせるのが普通でね」

つまりこの時間帯は見られないらしい。残念だけど、バイトの2週間の間に見られるチャンスがあるかもしれない。それに期待しよう。



そのまま隣の部屋に移動すると、そこは1階のマシンメイドアトリエに負けない騒音だった。3人ほどくるくるとせわしなく立ち働いている。

「ここが『仕上げ』で、さっきのキャストが吹き上がったら――」

言いかけた時、『田辺部長、12番まで内線してください』と館内放送がかかった。


ちょっとごめん、と断って手近な電話の受話器を取り上げる。

話が終わるのを待ちながら部屋を見回すと、奥の方は窓付きの壁で仕切られていて、壁の向こうで作業している人はみんなマスクをして機械に向かっている。

金属をぴかぴかに磨く作業、“バフ”だ。


バフ粉と呼ばれる研磨剤を高速回転する円盤状の布の切り口につけて使用するので、どうしても粉が舞う。職人さんの手や腕、作業着は真っ黒だし、窓も粉がうっすらついて少し曇っていた。これは危険な作業で、回転する布は1分間に400回転していて、巻き込まれれば最悪、指がなくなる事もある。


電話を終えた田辺部長が、慌てた様子で声をかけてきた。

「浩之君、すまないがこれからすぐにお客さんの所にクレーム品を引き取りに行かないといけなくなってしまったんだ。近くだから1時間かからずに帰ってこられるとは思うんだが。面接は終わったからいいとして、案内は……あ、国立君、ちょうどいいところに」

通りかかった女性が振り返る。

思わず目をみはった。すごい美人だ。

整った眉目に滑らかな肌、後ろに1つに束ねられた髪は無造作なのになんだかカッコいい。神様が全く手抜きせずに肉付けしたらこうなるんだろうか。着ているのが作業服なのがもったいないくらいだ。

「はい?」

「今日、検品はそんなに忙しくないよね?彼は今度アルバイトに来てくれる西原君。今、アトリエ内を案内中だったんだけど、急にお客さんのところに出かけないといけなくなってしまったんだ。申し訳ないんだが私が戻ってくるまで、40分くらい彼に中を案内してあげてくれないかな」

美女は涼しい目で僕を見る。

「……私、歳下に興味は無」

「お願いしますね」

最後まで言わせずにあたふたと階段に向かう。その背中に、美女は呪いの言葉を吐いた。

「ちっ。高くつくから憶えていやがれ」

「は?」

し、舌打ち!?

「ああ、安心しなさい。君じゃないから」

「はあ……」

この人はもしかして……。

「しょーがない。ちょっと待ってて」

バフの部屋に入っていき、手にしていたトレイを職人さんに渡して言葉を交わす。職人さんが渋い顔をして頷くのを確認すると、部屋から出てきた。

「さて、君は田辺部長の親戚のバイトくん?」

「あ、はい」

「聞いてるよ。一応貴金属を扱っている会社だから、悪い人がうろうろしてたらすぐに分かるように、来社予定の情報は朝の朝礼で連絡されるんだよね。私は国立。所属は検品。この上の階だよ。とりあえずここから説明すればいいのかな?」

「さい…西原(にしはら)です。よろしくお願いします」

「よっしゃ」

突き出した親指で自分を指す。

「黙って俺について来い!!」

残念……。この人、残念な美人だ……。



「この部屋は『仕上げ』という部署で、『研磨』『洗浄』『バレル』『電解』『メッキ』の仕上げ工程をひとくくりにまとめた部署だよ。まず『研磨』から見ていこっか」

部屋に入ると、機械音に耳が麻痺する。国立さんが声を上げた。

「再びっお疲れ様です!社内案内入ります!」

田辺部長に匹敵する挨拶だ。


「キャストを磨いてトュルントュルンにするのがこの機械。バフレースっていう、布を何枚も重ねて縫い合わされたものに、研磨剤をつけて磨くの。布の種類や重ねた枚数、縫い合わせる目の粗さなんかで用途によって使い分けるんだよ。硬く縫い合わされているものは荒れている地をしっかり磨き落としたい時とか、柔らかい布製は最後の仕上げで、こびり付いた研磨剤を飛ばして照りを出したい時に使うとかね。あ、“照り”っていうのはツヤの事ね」

「研磨剤にも色々あって、荒いものから細かいもの、金用やプラチナ用、シルバー用とか材質によっても使い分けるんだよ」

国立さんは残念な人だけど、意外にも説明は丁寧だった。


ほら、と指した職人さんの手元を見ると、高速で回転する布にさっさっさっと小さなキャストを当てている。磨くというとなんとなく1箇所を集中する感じがするけれど、そうではなく、絶えず手首を返していろいろな面にいろいろな方向から当てる感じだ。

「“ス”って分かる?茶碗蒸しとかプリンとかを蒸した時、下手だと穴がぷつぷつ入っちゃう、アレ。金属も一緒で、鋳造する条件によって多かれ少なかれ、スが入っちゃうんだよ。地球上に空気があるかぎり仕方がない事らしいんだけど、スアナの部分が表面に出ちゃった場合、細かいスがたくさん出ると曇って見えるし、大きなスだとポチっと穴が空いちゃうし、とにかく悩みの種なの」

「で、スアナを消す技術と工夫はいろいろあるんだけど、ゴマス、あ、細かいスがいっぱい出る事ね、ゴマスを消したい時に、磨きを入れる方向によって目立たなくできるやり方があるんだよ。なんでかって言うと、たとえば棒を斜めに切ると切り口の面積は大きくなるけど、水平に切った時は切り口は小さいでしょ?だから長く引っ張った空洞のスの時は磨き方だけで目立たなくできるってわけ」

「なるほど~」

「バフの技術はたっくさんあるから、こんな案内くらいじゃ説明し尽くせないんだよね」


しかしこんな風に自分の部署でもない技術に関して、細かく説明できるものなのかな?

心の内を見透かしたように国立さんは笑いながら言った。

「私、前はバフにいたんだよ。その前はバレル」

どうりで。

田辺部長が“ちょうどいいところに”と言ったのは、そういう意味でもあったのか。


「あの、手に取って見てもいいですか?」

「高井良さん、磨き立てほやほやをこの子に渡してあげてもらえます?」

「おう………ほれ」

受け取った磨いたばかりのリングはぴっかぴかで――

「わっうわっ…あっつっ!…わっ」

わたわたと両手で持て余す。ものすごい、熱かった。

「熱いだろ~。これやってると、マジで指先の皮、厚くなるよ。高速で回転しているところに何度も擦りつけるんだから、当然熱くらい持つさ」

「……………」

渡す前に言ってほしい。

ただ、こんな熱いものを職人さんは素手で磨いている。なんかもう、それだけでカッコイイ。そして磨く前と磨かれたリングを見比べて、その表面の光沢にわくわくする。ところどころに黒い研磨剤がこびり付いているが、艶の出たそれは店頭に並んでいるくらいのもの。ただ1つの工程でこんなにも綺麗になるのがまるで魔法のようで、心が躍ってしまった。


「熱い作業はこれだけじゃないぞ。リューターでミニバフ当てる時とか、レーザーでがつがつスアナ埋めたりがんがん地金盛る時とか。汚れるし危険な作業もあるしね。もし、ジュエリー製作がお綺麗な仕事だと思ってるんなら、大間違い、だぞ」

「あ、はい。むしろそういうのが知りたいです」

「よっしゃっ、黙って俺に」

「それはもういいです」

「むう~」

ちょっと唇をとがらせて頬をふくらませる様子に、思わず見惚れる。

もしかしたら僕は、世界一可愛いふくれっつらを見てしまったのかもしれない。



バフの部屋を出て、さっきいた部屋に戻る。

「んで、この『洗浄』で、バフで磨かれたものにこびり付いたバフ粉、あ、研磨剤の事ね、バフ粉を洗い落とすの。超音波洗浄機とかスチーム洗浄機とか、秘密兵器がいっぱいだぞ。それでも落ちなきゃ、ぐつぐつ煮込む」

「はあ……」

この人の説明、くだけ過ぎてて本当なのか冗談なのかイマイチ判断できない。

「あ、なんかその返事、分かってないな?」

むう、と唸ると、説明を続ける。

「たとえばさ、石が留まっている根元とか、刻印のとことか、形的にどうしてもバフ粉が詰まる場所があるんだよ。そういうとこには、これ!」

指差した箱型の機械は、中に真っ黒い水が溜められている。

「超音波洗浄機くん。スイッチを入れると~」

キイィィィイイイイィィイイイィン

耳が痛くなる高音を発して水面に波紋がおきる。

「この槽の中には、酸性のバフ粉が落ちやすいようにアルカリ性の洗浄液が入ってて、超音波の振動でバフ粉を落とすの。これでダメなら~」

そばに置かれた、ノズルの付いた箱型の機械を指す。

「スチーム洗浄機さん。このフットペダルを踏むと~」

ジュシュウウウウウウウゥゥゥゥゥ

勢いよく水が吹きつけられ、もうもうと水蒸気が上がる。

「このノズルから高温のスチームが出て、ピンポイントでバフ粉を吹き飛ばす。ほら通販で、コンロの汚れがみるみる落ちる!ってスチーム洗浄機が流行ったじゃん。要はアレよ」

「ああ!なるほど」

「それでもダメなら~、煮込むっ」

ガスコンロの上に金属製の槽が置かれ、やはり真っ黒な水が張られている。

「この水もアルカリ洗浄液で、ぐつぐつ煮込んでバフ粉を浮かせるんだよ。あーあ、ちゃんと説明しちゃって、秘密兵器が秘密じゃなくなっちゃった」

本気で残念そうに言わないでほしい。

「よし、田辺部長が戻るまで、後は駆け足でいくぞ!」

こういうノリの家族がいるので、それに逆らってはいけない事を僕はよく知っている。黙ってついていこう……。


「この辺の機械が『バレル』。この“メディア”と呼ばれる小さいプラスティックや鉄の玉と一緒にチェーンなんかを入れて振動させて照りを出す。メディアにも色々あって用途やかけたいモノによって使い分けるし、バレル機にかける時間によって照りを出したり、逆に艶を消したりもできるし、バリを取る事もできる」


「ここが『電解』と『メッキ』。電解はね、シアン系化合物、まぁ有名な名前でいうと青酸カリというヤバい液に電気を通して、変色した金の色を戻したりするの。金ってさ、火を当てると変色しちゃうんだよ。だからロウ付けとかで部分的に変色したのを元の色になるように電解するのさ」


「『メッキ』はその名の通りメッキをかける。”プレート”とも呼ばれるけど、メッキって“鍍金”って書いて立派な日本語なんだよ。なぜかカタカナで表記される事が多いんだけど、 “日本語だからひらがなで表記するべきだ”って言う人もいるらしいね。

で、中学生くらいの時に習ったと思うけど、電気を通して液の中の金属イオンを表面に定着させて薄い金属被膜で覆うんだよ。この会社では主にロジウムメッキ、ピンクゴールドメッキ、イエローゴールドメッキの3種類がかけられる」


「ホワイトゴールドは、メッキのかかっていない地金の色はシャンパンゴールドって感じの色味なんだけど、ロジウムメッキをかける事でお店に並んでいるような銀色になるんだよ。

海外製品なんかだと、ロジウムじゃなくてニッケルメッキをかけるとこもあるらしいんだけど、ニッケルは金属アレルギーを起こしやすいから、匠美鎖では使ってない。っていうかアクセサリーはともかく、日本のジュエリーメーカーで使っているところなんてないんじゃないかな。なんでニッケルを使う会社があるかっていうと、安いし、厚くかぶせて下地のスアナをなかった事にできるから、研磨する手間を省けるらしいの。まぁ分かりやすく言うと、厚化粧でお肌の粗を隠す、みたいな感じ?」

なぜかドヤ顔の国立さんに、曖昧に笑ってみせる。

「さあ次へゆくぞ!」

「は、はい」

と、入り口で急に立ち止まった国立さんに、あやうくぶつかりそうになる。

「どうしたんですか?」

「……次って、どこ?」

「え?えっと……」

「仕上げの前はどこの説明してもらった?『ハンドメイド』は見た?」

「あ、まだだと思います」

「じゃ行くけど、この会社で1番の手練たちの集う部署だからね。失礼のないように」

厳重警告を受けて、出発する。



さぞかしこまった挨拶が繰り出されるのかと思いきや――

「おっ疲れ様でっす、姉さん方」

大きな作業机に6人ほどの女性が向かい合って、ヤットコを両手に和気あいあいと作業している。

『ハンドメイド』だ。

作業机にはクリーム色の柔らかい布が敷かれ、真ん中に紙とすでに出来上がったものが並べられていて、それぞれの前には作製するパーツが置かれている。

「お疲れー、英国ちゃん」

「そっちの男の子は?」

「なになに?彼氏?」

そんなわけあるかい。

「田辺部長の親戚のバイトくんで、西原くんです。部長が急用で出かける事になって、中の案内を頼まれちゃいました」

「春休みの2週間だけですが、よろしくお願いします」

口々に、よろしくーと返すその手元は、話しながらでも全く止まらない。

国立さんが、ひょいと紙を取り上げ見せてくれる。

「これは規格指定書。設計図みたいなものだね。完成の写真と使用するパーツの種類や数、作業手順や作製にあたっての注意点なんかが、この1枚にぎゅぎゅっと凝縮!」

「おお~」


何種類もあるパーツから選び取っては、どんどん組んでいく。ある程度組んでから見直し、サンプルと見比べ、規格指定書を確認する。出来上がったネックレスを見せてもらうとパーツが複雑に組まれていて、何がどうなっているか、規格指定書の図入りの工程と見比べても理解するのに一苦労という感じだ。

なんか、『ハンドメイド』の意味が分かった気がする。

これは機械では作れない。人の手でないと作れない。

でもその分、なんていうか、特別感みたいなものがある。デザインもそうだけど、1つ1つ手づくりであるという、大量生産品にはない“雰囲気”というか。


「これが組み上がったら、組んだ切り口をロウ付けで口閉じして、仕上げをして完成」

ネックレスのところどころには、石の表面みたいにボコボコしたパーツが使われている。

「このパーツのボコボコした表面はどうやって出すんですか?」

「1階で『プレス』って見たと思うんだけど」

「いや?見てないです」

「あ――、じゃあたぶん作業してなくて飛ばしたんだね。1階に“プレス機”って機械があって、圧力と重りの力で金属の板にこんなテクスチャーをつけたり、板から抜き出したりできるんだよ。たとえば両手で粘土をはさんでギュ~って押さえると、表と裏に右手の指紋と左手の指紋が付くでしょ?あらかじめ付けたいテクスチャーの型を作っておいて、その間に板材を入れてギュ~ってすると、こんな風になるのデス……はっ」

「え?」

「あと5分くらいしかないっ。よし、3階へゴー!」



「あ」

階段の手すりに手をかけたところで、国立さんは思いついたように聞いてきた。

「なにか質問ある?」

「……さっき『ハンドメイド』で呼ばれてた、“英国ちゃん”ってなんですか?」

ああ、と作業服の左胸につけられた名札を指す。

「私、下の名前が英妃なんだよ。国立の国と英妃の英の字をとって“英国”って私のあだ名なの、――って質問がそれかい」

なるほど、字面からして漠然と英国の女王陛下を思い起こさせる。


「3階には、『検品』、『在庫管理室』と保管倉庫があるんだ」

「国立さんは『検品』なんですよね」

「そ。嫌われ者の『検品』」

「え!?そうなんですか?」

嫌われ者って。

「そら、そうさぁ。みんなが一生懸命作って上がってきたモノを重箱の隅をつつくように見て、手も汚してない人間が“ダメじゃん!”って突っ返したりするんだから」

「で、でもそういう仕事なんですよね……?」

「それが仕事と分かってても、やっぱムカつくものなんだよね~」

なんか他人事みたいだ。

「まあいいさ。私B型だから、嫌われるの慣れてるんだ~」

「ああ!B型って変わった人多いですよね。うちの母親もB型なんですが、やっぱりちょっと変わってます」

「へ~。ちなみに君は?」

「僕はO型です」

話は激しくズレてきているが、この会社での『検品』の位置づけに関してのちょっと重い話を続けるよりも、このまま話を変えてしまった方がよさそうだった。



3階は、1階とも2階とも印象が全く違っていた。

仕切る壁のないスコーンと抜けた空間で、下のような機械音はまったくしない。

左手側のスペースは積まれた荷物や機械が寄せられ雑然としていて、片付けている途中という感じだ。視線に気付いて国立さんが教えてくれる。

「そこにはこれから新しい課ができる予定なんだよ」


右手側に目を転じると、手前には大きな作業机に顕微鏡が並び、白い手袋をはめた6人ほどの人がリングやペンダントトップを覗いたり、定規で長さを測ったりしている。

「んで、ここが『検品』」

そう言うと国立さんは検品の作業机に向けて声をかけた。

「戻りました~。あと、社内案内仰せつかっちゃいました~」

一斉に顕微鏡から顔を上げて、視線が集中する。

「ど、どうも……」

「こうして顕微鏡を使って、スアナや傷、磨き残しがないか、石がちゃんと留まっているか、バフ粉が残ってないかとかを隅々までチェックして、あと肉眼で照りがちゃんとあるかとか、長さとかサイズは指定の通りかとか、いろ――んなチェック項目をクリアしてはじめて納品となるのデス。これがチェックリスト」

渡された紙にみっしりとリストアップされたチェック項目は、ざっと30はある。

「こんなに細かくチェックされているんですか!」

「ん?これくらい普通だよ。クオリティーにうるさい会社だと100項目以上あるトコもあるし」

そうなのか、やっぱり厳しいものなんだな……。



そして、『検品』の奥。

初めの印象は“牢屋!?”だ。

隔てるのは普通の石膏ボードの壁ではなく、格子状に金属の棒が組まれた採光式シャッターのような隔壁で、奥の壁を背に三方を囲まれている。その空間内にはスチールの棚が並び、黒いトレイが整然と積まれていて、その檻のような空間への入口近くには机が並び、みんなパソコンに向かっていた。


『在庫管理室』は保管倉庫の入口にあった。

国立さんが“こっそり”という感じで教えてくれる。

「ぶっちゃけ、この倉庫は匠美鎖の金庫なの。終業時間を過ぎると外側にシャッターが下りるし、入り口には防犯カメラ付いてるし。厳重だよ~。もちろん各階に作業中の材料をしまう金庫はあるけど、入りきらない時とかはこの中に置かせてもらうんだ。君が田辺部長の親戚って素性が明らかだから教えちゃうけど、絶対外で、誰かに話したりしちゃダメだぞ」

「……………はい」

少し痛んだ胸に、“悪い事をしようとしている訳じゃないから”と言い聞かせた時、館内放送がかかった。

『国立さん、内線60番までお電話ください』


「60番って受付だっけ?あ、田辺部長かな?……もしもし国立ですが。…あ、やっぱり」

田辺部長だったらしい。

「はい。今3階の説明終わったところです。……分かりました」

受話器を置くと、

「アトリエを案内したら今日はもうおしまいだって。田辺部長が受付のところで待ってるから、行こっか」

従業員用の階段とは離れたところにある小さいエレベーターまで連れてきてもらって、改めてお礼を言う。

「今日はありがとうございました。国立さんの説明、分かりやすかったです」

「どういたしまして。春休みになったら、ガンガン働いてもらうからね!」

「はいっ!よろしくお願いします」



エレベーターの扉が閉まると、ほっと息をつく。

具体的な説明がいろいろ聞けて、本当に面白かった。たぶんすごく内容の濃い案内をしてもらえたと思う。

1度にたくさんの説明を受けたせいか、自分が興奮しているのが分かった。SAIHARAの工場を見学した事があるはずなのに、何故だかいちいち全てが新鮮だったのが自分でもおかしい。

それにしても、国立さんはやたらテンション高い人だったな。40分ちょっとの間だけど圧倒されっぱなしで、でも一緒にいるとなんか“やるぞ!”みたいな気にさせてくれる人だ。



受付に立っていた田辺部長に合流し、「途中で交代して、すまなかったね。案内はどうだった?」と聞かれて、感じた事を素直に話す。

「なんかジュエリーって結構化学なんですね。金とか銀とか、メッキとか融点とか、酸性とかアルカリ性とか。家に帰ったら、もう1度元素周期表を見直したいです」

「そうだね、そういう風に考えると勉強の方も楽しくなるかもしれないね。ともかく今日はもう暗くなってきているから、気をつけて帰るように」

「はい、今日はありがとうございました」

「声が小さい!!」

まだまだ田辺部長や国立さん、他の職人さん達に比べたら声は出ていないけど、それでも肺いっぱいに息を吸い込み、精一杯の感謝を表した。

「ありがとうございましたっ!」



―――“遠い親戚のバイト君”を見送った田辺部長は自分の席に戻ると息を吐いて、机上に積まれた書類の1番上に置かれた“履歴書在中”の封筒に目を留める。

中から履歴書を抜き出し、しばらく黙って眺めていたが、ふと思いついたように胸ポケットから万年筆を取り出すと、キャップを抜いた。

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