細密画(ミニチュアール)の如き正統派ハイファンタジー冒険絵巻!

■物語創作におけるオリジナリティとは何だろう?
 この問いかけにわかりやすくシンプルに答えられる人間はそうそういないだろ。
■少なくとも〝誰とも似ていない〟とか〝類似しているものがない〟という意味ではないのは確かだ。
■ならば何をもってして〝オリジナリティ〟と呼べば良いのだろうか?

■それに対する明確な答えを持っているのがこの作品である。

■例えばである。古典的な芸術の一つであるクラシックバレエ、その演技方法、表現方法、足の運びから練習方法に至るまで、その中身は事細かに規定され演者の個人的な意図を差し挟む余地は全くないかのように見える。
■事実、経験の浅い初心者のそれは〝マニュアル通り〟と呼ぶにふさわしい代物でありオリジナリティがあるとは決して言えない。
■しかし、これがメインステージの主役を張れるほどのプリマドンナとなれば話は変わってくる。
■その身のこなし、演技、テクニック--、あらゆるものがクラシックバレエの基本的技法に成り立っているにもかかわらず、その舞台との演技を総合的に見た時に明らかにバレリーナ本人の『確かな個性』が存在しているのである。

■これは何もクラシックバレエに限ったことではない。ロックバンドだってそうだろう。使用する楽器、演奏方法、表現スタイル、歌唱法--あらゆるものが共通化されてるのには関わらず、バンドそのものを全体的に見た時にやはりそこには明確な個性とオリジナリティが存在しているのである。

■そうだ、それこそが創作におけるオリジナリティなのである。

■本作品はハイファンタジー作品としてはある種オーソドキシーすぎるほどに基本に忠実な作品である。しかしだからといって何かに似ているのか古典の模倣であるということは決してない。

■一つの王国の中で明確な社会と生活のコミュニティがあり、そこに生きる一人一人に〝命の息遣い〟が存在しているのである。そして、物語の大きなうねりとしてそのスタート地点に存在している人物こそが主役の〝ユーリー少年〟である。

■彼の生活と志と冒険とその旅立ちを見守ってほしい。そこに素晴らしきドラマが見つかるはずである。

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