第36話「動き出した黒」

―――竜胆白は引き返す―――


城の門の外から何かを叫びながら憲兵が走ってくる。

「大変です。街の中央で黒の勢力を名乗る者達が暴れ回っています」

黒の勢力は遂に行動に出たのか。


とりあえずまずは姫の部屋に戻る事にしよう。

完全に離れる前でよかった。でなければ戻るのが面倒なところだった。


「失礼しますアリア姫」

ノックをしてアリア姫の部屋に入る。

就寝したはずのアリア姫はすでに起きており、部屋の南の大窓の近くに立っていた。


「用はあれの事ですよね」

外を眺めながら、アリア姫はそう呟いた。


アリア姫の部屋の大窓は眺めが良い、街中が一望できたあの時計台よりも高い位置にある上にもっと楽に街を見渡せる。


「初めからここで街を眺めればよかったのかもしれない」

そんなことを呟きながら、アリア姫の眺める大窓へと歩いて行く。


「私にも何かできることがあれば良いのに…どうせ私は歴史の象徴…ただそれだけなのです」

そんな事を言っていたのだが、俺はしっかりとアリア姫に可能性を見出していた。

簡単な話、アリア姫の魔法を使えば奴らを停止させられるかもしれない。


「アリア姫の魔法なら暴れている奴らを止める事ができると思うけど」

危険な提案だ。何故そのような事を口走ったのだろう。この竜胆白に慣れれば慣れる程に思考までもが変わってきてしまいそうだ。

やはり体が変われば脳のスペックも変わってしまうのかも知れない。

これ以上泉谷隼人から何が失われるかは不安だ。

女神との取引で、俺の要求に不足が多くあった事は明確だろう。


「私を街の中央まで連れて行ってください」

アリア姫は決意に満ちた様子だった。

そんな様子のアリア姫を放置する事は面倒くさいごとにつながるだろう。


「わかったよ。でも、もしもの時はすぐにここに戻ってくるから」

そして、思念体を飛ばす。取得する情報は多ければ多いほど飛ばす速度や継続時間に制限がかかる事は何度も使用していてわかった。


時計台の下で黒の勢力の人間が何かを叫んでいる。

転移魔法のゲートを開く前に何を言っているか聞いておいた方が良さそうだろう。


視覚情報以外に聴覚情報を取得する。


ゴーンゴーンと、時計台の鐘から零時を告げる音がなる。

寝静まった人々も起き出して、時計台の周りに集まっていた。


鐘の音が鳴り終わったのを合図にか、黒の勢力の一人が叫び出した

「我々はこの国をいただく!さぁ刮目せよ!」

そう言ってそいつは空を指差す。

指差したのは空ではなく時計台だった。


そして、その時計台には男が立っていた。


※以下あとがき


次回のお話ですが

本気で書こうと思います!

いつもより長くなると思います!

一月一日になったら公開します!

よろしくです!

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