第32話「一ヶ月(裏)」

―――『隼』の名は知れ渡る―――


裏社会で俺が行うこととは、汚職を行う者に制裁を加える事。

俺が関わっていて、楓がそれを把握している以上、純粋悪となる行為をデッドビートの活動として行う事は出来ない。


俺はザール、ドロース、マックの三人が本当に汚職を働く様な人間かどうかの動向を探る。

その為にまずは、魔法で思念体を飛ばして三人を監視する。

案の定ザール、ドロース、マックの三人は汚職を働いていた。


五つの国の中では黄の国は東の方に存在している。

黄の国の最西端には全ての国の港に通じる海があるのだが、この国と接した隣国である赤の国と緑の国からは他の手段でも黄の国に来る事が出来るり

しかし、青の国と紫の国からは基本的にこの海を通って入国しなければならない。


怪しい人間がこの海を渡って港に来たならば、入国は出来ない。

この港で怪しい者の入国を王に変わり最終的に許可、もしくは拒否するのがドロース。

ドロースを追跡した結果、何者からか大金を受け取り、怪しい者の入国を許可したらしい。


ドロースが入港の管理をしているが、ドロースが大臣の中で一番偉いわけでもなく、ドロースより直接的に偉い大臣がいる。

それがドロースが不法入国を許した港がある西方を任されているザールだ。

その二人で何か怪しい人間を入国させた。


そして、謀反を対策する為のマックが買収され、現在はマックの邸宅に匿われている。

ここまでが思念体を飛ばして判明した事。

この段階までに元の世界での約一ヶ月がたった。


そこからは早かった。

デッドビートの各員をマックの邸宅に向かわせる。そこで財産を奪えるだけ奪って来いと命令した。


デッドビートにとって盗みはたやすい事。

すぐにマックの邸宅に忍び込み、財産を奪えるだけ奪ってアジトに帰ってきた。


次に貧民街の子供に一部を配らせた。

これでデッドビートの狙いが貧民へ金を恵むことになった。


こうして、この作戦を指示した隼の名前は貧民に広がり、貧民を救った英雄としてデッドビートは貧民の支持を得た。

ここで大臣達は皆、デッドビートが以前までのゴロツキではない事を理解した。


大臣達は、貧民が飢えから解放されるのは良いが、自分の損失を避けたがった。

そのため、被害を受けたマックの邸宅にはデッドビートの手口を探るための調査員が、他の大臣の面々より秘密裏に派遣されていた。


その調査員が目にしたのは、マックの邸宅に誰とも知れない人々が出入りしている事であった。

そして、大臣達はその者達の正体をマックに問い詰めた。


ここで彼が怪しい人物を匿っていたことが発覚したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る