第26話「使うべきではない魔法」

 ―――竜胆白は使わない―――


 あの後エミリーは一度顔を洗ってくるから待っていてと述べて、一人でどこかに向かっていった。

 普通と違う者を見れば嫌悪感を抱くのは普通なのだろう。元の世界から俺の方が優れていると感じていたため、俺はそんな感覚は全く無かったのだが。


 エミリーには俺が全ての魔法が使える事を明かすつもりが無かったので、どこかへ行った隙に先程の魔法を使ってみる事にする。


 魔法という物はなんとなくで使え事がわかってきたから、今度も楽に使えるだろう。


 確か気持ちを音楽にする様な魔法。手拍子なんかでも出来るのかその為の楽器が必要なのか、それも確かめてみたい。

 さて、今の気持ちはどのような気持ちか、まぁとりあえず発動さえすれば良い、誰もいないため、誰も聞いていない。どんな気持ちだろうと問題はないだろう。


 そして、俺は想像でブリングの魔法をしようしてみた。そこで出現したのは普通の人間が出すような鳥なんかでもなく、ブリングが出した魔物の様なものでも無かった。

 俺の少し前にぼんやりとだが、禍々しい血色の石塊が出現しただけだった。


「これは、明らかに失敗だ。」

 そうとだけ呟いて、俺はそれ以上魔法を継続する事は無かった。

 すると、すぐに出現した血色の石塊は消えていった。

 仕方ない、このままエミリーを待つことにしよう


 どうやらブリングが使っていた魔法は、召喚魔法の一種らしく、召喚魔法が得意な楓にも使えない事はないらしい。

 そして、魔物の様なものを出現させることもおかしくはなく、血縁なんかに紫の国の人間がいれば彼らにはそういう類のものが関わり深い為、魔物の様なものが出現しても不思議ではない。

 楓も使えばコドラが出現すると言っていた。


 俺が出現させたあの血色の石塊に関しては、楓にも分からないため、一度見てみなければと言う事であったが、俺が出現させたとは話していなかった為、そこで俺が出現させることはなく、あれに関しては謎という事になる。


 魔法には単に作法を守れば使えるものもあれば、他の能力の影響が大きいものもあるらしい。ブリングが使うあの魔法はその後者の方である。


 一応俺は元の世界で様々なものに関わってきて、様々な事が出来るのだが、今の段階では作法を守れば使える魔法を使い、魔法になれるべきだと思った。

 その為他の能力の影響を受ける魔法は暫く使わないことにした。

 特にあの血色の石塊を呼び出すだけとなったあの実用性がない魔法はもはや使う気すら起きないものとなっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る