第15話「悪の頂点」

 ―――デッドビート二代目リーダー竜胆白―――


「おい、リーダーがやられちまったぞ。」

 唖然した様子で、奴らはこちらを見ている。

 リーダーのブートンは完全に意識を失った様子で、身体は膨らむより早く縮んでいっている。


「脳に衝撃がいって、ただ意識を失っただけだ。だから、このブートンとか言うやつは置いておいて、君達に二択を用意する。一つ目はここで全員戦って負けたヤツを全員城の檻に放り込む。二つ目は、リーダーを一人残して解散した事にして新しくこの組織をやり直す。王国関係者の俺は姫を誘拐するなどというしょうもない事は思いつかない。力もある俺は裏世界の支配をしてやろうと思っているんだ。」


 これが俺の本当の目的。裏の世界の事情を知る事は重要だ。裏世界の人間は使える情報を持っていることが多い。そこの支配者になれば、表の世界を支配するのにも役立つ訳だ。


「本当に言ってるのかガキ。お前が正気なら、俺達は乗ってやってもいいぜ。俺は金が手に入れば何でも良い訳だし。」

 いつか俺が倒して、俺に復讐しに来た男。こいつは金を原動力にする強欲な人間だろうし、こういう奴は利用しやすい。


「話に乗るならお前は真っ先に富を手に入れられるだろう。その選択が正解だからな。とりあえずこの男を連行してまた来る。その時に関わりたくないやつはここから去れ。」

 リーダーを倒された残りの残党は挑む勇気すらなかった。


 ここで挑んでくる覚悟位ある者がいても良かったが、これはこれで流れが速やかに進む。


 ブートン諸共王城の近くへと転移する。

 そして、ブートンを王城まで連行し、衛兵に「この男が姫を誘拐しようとした犯人で、この男の組織の他の人間はこの男を見捨てて逃げていった」と、そう経緯を説明した。

 中に通されて、しばらくしてから楓を通して、怪しいものではないことを証明してもらった。しかし、一つ忘れていた事があったのだった。姫の手錠の鍵を持ってくるのを忘れてしまった。


 元々出来たらと言っていたものだし関係ない事だと割り切る。


 ブートンの身を引き渡した俺はその後、あのアジトに残っていた人間と組織を再結成する。一応頭の悪いゴミ共ではあるが、人間ではあるので、好感度を得るために新しい組織をではなく元あったデッドビートの二代目のリーダーになる事にした。


 ここまですべて上手くいっていると思っていたが、俺は翌日その見落としに気付くのだった。

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