1章「黄色の国の歌姫」

第1話「ここが異世界」

―――泉谷隼人は旅立つ―――


 扉の先はどうやらどこかの街の路地裏みたいだな。

 えぇと、腕などを見るに、本当に俺の身体は別の人間になったようだ。


 まずは振り返り、後ろの扉を開いてみるが、閉じた扉は鍵がかかっていてもう開かない。そして、その鍵穴はおかしな形をしている。この世界の鍵穴の形なのだろう。異世界はよく変わらないな。


 とりあえず俺は適当に歩き出した。そして、歩き出してすぐ、勢いよく走る白い、フード付きのマントの人物とすれ違った。

「あれは、何を急いでいるんだ。」


 歩きながら振り返って向こうへ走り抜けていくその人を眺めていた。眺めていたら、何かにぶつかってしまう。恐らく人だろう。

 ここの人間がどんな言葉を話すか分からなかった。


 大きな男は、薄着をしている為、さっきのフード付きのマントでは無くこちらの男の格好が普通の格好だと察しが着く。

 しかし、とりあえずぶつかったし謝るだけ謝っておく事にするか。

「えぇと、Do you understand?」

 ぶつかった人間は、外国人らしき見た目だった。その為俺は意味がわかりますかと。尋ねてみた。


その返事は直ぐに返ってきた。

「はぁてめぇ何言ってやがるんだ。それより今てめぇ俺にぶつかったよなァ。どうなっても知らねェぞ。」

 俺は今宣戦布告と取っていい発言をされた。


 そして、その直後にその男は、腹を殴り飛ばされて、倒れる。一発で方が着いたし、図体の割に全く反応も良くない。ただの輩だろう、追われていたあの人物は面倒なのに絡まれたものだ。まぁ、俺が助けてやったから感謝するんだな。


 しかし、英語が通じず日本語が通じる事が分かったな。母国語をそのまま使えるのは楽で良い。

「さて、ここに来て問題が発生したな。」

 俺は女神に聞き忘れていた事が多すぎた。まずはさっきの出来事、何語を話せば良いのか。もしこの世界独特の言葉などという物があれば、俺は確実にはじめに不便な目にあっていた。


 そしてもう一つ、死活問題がある。恐らくここまで文明が発達しているという事は、つまり通貨があるという事だろう。

 その通貨を所持していないし、それを稼ぐ方法も知らない。


 金がないということを想像もした事がなかった為だろう、これは実に痛い失態だろう。

「なぁお前、許してやるから金の稼ぎ方を。」

 どうやら失神してしまっているみたいだな。


 さて、これからどうするべきだろうか。

 まずは街を徘徊して、ここがどういう場所か把握するべきだろう。


 とりあえずコイツはここに置いていけば良いか。そのうちに目を覚ますだろう。

 賑やかな声の溢れる街道へと歩き始めた。

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