脳内映写機が軽やかに回りだす

この感動はなんだろうと読後に問い、答えはすぐに見つかった。
一篇の映画を見終わった感覚そのものだ。スクリーンを食い入るように見つめ、周囲が明るくなって名残惜しさを抱えて立ち上がる、あの感慨だ。
全ての場面が映像として頭の中にはっきりと浮かぶ。特に終盤は少女と彼、それぞれのカット割があまりに鮮明に思い描ける。空の闘いの無音と少女の奏でる旋律まで耳に聴こえてくるようだ。
心象の描写も素晴らしく、指や手足の動きに顕著だ。ラストの指先から推し量れることは少なくない。
まだ語りたいが、あいにく余白がない。ただ、今作を読んで貴方の頭の中の映写機を回してくれと願うばかりだ。

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