誇り

それから約1ケ月はユキと2人で外食したり何か作ったりして過ごしていた。


きっかけは何もなかったけど、何となくまた母やおっちゃんとも普通に話をしたりするようになった。


後になってだいたい男性がどういう生き物か分かると、アカの他人の年頃の女の子と一緒に生活するオッサンに「変な気を起こすな」というのに無理があったのかもしれない。


実際、親友と呼べる子にそういう話をすると「私の友達にもそういう子がおったわ・・・」という話は聞いた。

「でも、ミキちゃんはまだいいよ。やられてへんやろ?私の友達はな、やられてん」と言う子もいたし「お母さんにバレちゃって、おじさんが出て行ったからお母さんが酒ばっかり飲んで、八つ当たりするようになって、よくお母さんに殴られたりしていた」と言う子もいた。


そういう経験をしている子もいるのだと思うと私はラッキーな方だったかもしれない。


私は大学進学はしなかった。

就職活動も特にせず、ファーストフード店でそのまま高校卒業後もバイトしていた。

店長から社員になったら?という勧めもあったが、断って1年位はバイトしていた。

それからは自分で正社員で働ける事務の仕事を見つけ、一人暮らしを始めた。


その後は生活、お金のために結局水商売、夜の仕事をするようになった。


男と寝ることについてはあまり抵抗はなかった。

誰でも誘われたらついて行って、その中から「いいな」と思う人を選んで付き合っていた。


ユキともだんだん疎遠になっていたが、ユキは高校卒業後、専門学校に入りそれからは立派な会社で働いていたので安心していた。


私自身は自分が汚れているというか、男によって汚されている気がしてもう既に汚れなのだから、という自暴自棄な感じはあったように思う。


それでも好きだと思える人に出会えて、自分の事は全て話して「ミキは何も悪くないよ。まぁ運悪く交通事故に遭ったようなもんやな」と言ってくれたので気は楽になった。


たまに夢でうなされる事はあったようだが、本当は大学進学したかったけど、あんなオッサンの言いなりにはならなかった、という事は私の誇りでもあった。


いつの間にか、そういう過去があり今の私がいる。

それが私なんだと誇りを持って、何故か自信のようなものがあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る