「勇者の今期年棒は10%減の9万Gです!」

ハイロック

1回表「勇者だって稼ぎたい。」

「とにかく、納得はできませんとりあえず今回は保留にさせて下さい。」


一回目に提示された年棒はさすがに低すぎた。まさか10%ダウンとは…。


 俺はバリントン、アサマ連邦という国で勇者をやっている25歳だ。

勇者といってもそんな選ばれたものとかではなく、

いわゆる職業勇者ってやつだ。


 アサマ連邦っていう国は、4つの州で構成されている。

 北州のポサーロ、

 東州のバラーキと、ギチット、

 西州のトーベ、ビッグバン、

 それから南州のハピオカ

 それらが大きな都市。


 その中のバラーキにあるゴールデンコンドルスという救団で、俺は助っ人外国人として勇者をやってるのだ。


 と説明したところで、助っ人とか救団とか何の話だって思うに違いない。


 アサマ連邦では、あまりにも多く野生のモンスターとか魔族が多く出るので、とても従来の軍隊だけで対処しきれなくなった。

 

 そんなわけで、30年前に、各都市は魔物討伐のためのチームを民間で作ることになった。

 これが、市民を救うための市民の団であり、略して救団キュウダンと呼ばれている。

 

 せっかくなら各都市でモンスター討伐数を稼いで競い合った方が、面白いんじゃないかということで、救団同士でチーム対抗戦ペナントリーグが毎年行われるようになった。


 おれのホームのバラーキスポーツ新聞、通称バラスポの一面は大体、ペナントリーグ情報が載っている。そのくらい、今や国民的娯楽となったんだ。


 俺は、コントロールがよく、スピードのある炎の魔法を使えることを買われてスカウトされてきて、契約金10万G+出来高払いで契約した。


※1Gはおよそ日本円で100円位。アサマの大卒の平均初任給が3000Gである。


 そして俺は、先ほどの救団職員との会話を思い出す。


「今年はわがチームの順位は5位だからね。まぁ、少し厳しめになるよ。」


「ですが、私のチームはしっかり50WPウィンポイント手にしていますし、個人としても20セーブをあげております。去年よりはるかに成績はいいじゃないですか。」


「それでも、救団に貢献できたかというとね…。バリントン君のチームには微妙なんだよねぇ。」

 寄せ集めのチームなんだから仕方ないだろ…。と心の底から思ったが、そこは大人の姿勢を示した。

 

 ここで少し補足すると救団は1チーム5人で構成され、各救団は6チームまで持つことができる。その6チームが倒したモンスターの合計数で優勝を争う。

 

 各モンスターにはWPウィンポイントが定められていて、例えばオークなら1WP.ゴブリン2WP、ゴールデンバットって飛んでる系の敵は5WP、スーパーモモンガってやつは10Pもらえる。ドラゴンに至っては1000Pもらえるので、もしドラゴンを倒せば一発で優勝が決まる。

 

 SPセーブポイントとどめを刺した勇者にもらえるポイントで、どんな相手でも一匹1Pもらえる、俺は先シーズン、20匹にとどめを刺したのだ。

 

「君のチームはね、あと人気がないんだよね。オークばっかりを狙ってるだろう?}


「えぇ、まぁ最近の主流の戦術ですし…。」


「地味なんだよねぇ…。あと最近、オークを狩るなっていう意見多くてね。もしかすると来年はオークは0WPになるかもしれんのだよ。」


「そしたら君のチームの来年の活躍は厳しいんじゃないのかね。そういうことだから、君の年棒は10パーセント減の9万Gが妥当だと救団として判断したよ。」


「…と、とにかく納得はできません。今回は保留にさせてください。」



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