0026から0050

0026


「ませー」

「おでんのたまごをひとつ下さい」

「ご一緒に鍋ごと如何ですかー?」

「要りません」

「今お玉が親を探しに旅立ってしまってお汁が掬えないんですよー」

「スプーンを使ったらどうです?」

「きっと成長して帰るので待って頂けますかー?」

「そうなったら掬えないでしょうが」


0027


「いらっしゃいませー」

「おでんの大根ひとつ下さい」

「サービスであんまんのこしあんを載せてふろふき大根にさせて頂きますねー」

「そんな事されると美味しく頂けなくなるのでやめて下さいね」

「ではたっぷり入れたツユにこしあんを溶いてお汁粉に」

「おでんはおでんで食べさせて」


0028


「いらっしゃいませー」

「このカップの中にアイスが入っているんですか?」

「はい」

「ではこのアイスカフェオレを下さい」

「せっかくですのでコーラを注がせて頂きますねー」

「カフェ要素を消さないで下さい」

「でもコーラフロート風になって美味しいですよーたぶん」

「憶測かーい」


0029


「らっしゃいませー」

「ホットコーヒーひとつ下さい」

「コーヒー豆はブレンドですが宜しいですかー?」

「ええまあ宜しいですよ」

「小豆と混ざってしまったのですが宜しいですかー?」

「うん何があってそうなった?」

「まあ似たような色してますし味も変わりませんよねー」

「無茶な」


0030


「いらっしゃいませー」

「荷物を引き取りにきました」

「はいこちらのおでん全てですねー」

「いやいやどうしてそうなります?」

「だって今、煮物を引き取りにきましたーって」

「荷物です」

「はい煮物ですよねー」

「ニモツを引き取りにきました」

「ニモツニモノデスヨ」

「オデンカヨ」


0031


「いらっしゃいませー」

「このラーメンまんというのをひとつ下さい」

「著作権の都合で一部に黒い線が入りますが宜しいですかー?」

「これ何です?」

「海苔ですー」

「ああ」

「包んでいる皮は米で作られていますー」

「ん?」

「そして中にはチャーシューがひと切れ」

「おにぎりなの?」


0032


「ませー」

「肉まんひとつ下さい」『年齢ノ確認ガ必要ナ商品デス』

「……はい?」

「申し訳ございません。どうやらレジの調子がおかしいようですー」

「そうですよね」

「確かこうすると……どうかなー?」『年収ノ確認ガ必要ナ商品デス』

「はい直りましたー」

「余計壊れてませんか?」


0033


「ませー」

「肉まんひとつ下さい」

「年齢ノ確認ガ必要ナ商品デス」

「……声真似しなくていいですから」

「レジが未対応なものでー」

「確認が必要なんですか?」

「今日からの改正肉まん法により200歳以上の人には肉まんが売れなくなったじゃないですかー」

「そんな歳に見えます?」


0034


「いらはいませー」

「82円の切手を一枚下さい」

「おでこにお貼りすれば宜しいですかー?」

「私は郵便物ではないですよ?」

「おでこに82円切手を貼って変身するヒーローなのではないかとー」

「このコンビニにはそんなお客さんが来るんですか?」

「52円の人なら」

「来るの!?」


0035


「いらっしゃいませー」

「カレーまんひとつ下さい」

「まだ冷たいのですぐに温めますねー」

「えっああはい」

「素早く温める為にパン粉をまぶして油で揚げても宜しいですかー?」

「何ですかそのニセカレーパンは」

「カレーパンまんですー」

「うーん温めるならレンジでいいですよねー」


0036


「ませー」

「おにぎり温めて下さい」

「お時間がかかりますが宜しいですかー?」

「かかります?」

「懐で」

「電子レンジでお願いします」

「それが昨夜コンビニ強盗が来ましてー」

「盗まれたんですか? レンジを?」

「その時にスプレー缶をチンしたら壊れましたー」

「何してるの……」


0037


「いらっしゃいませー」

「おにぎり温めて下さい」

「プリンも温めますかー?」

「何ですかその甘い茶碗蒸しは」

「この容器では温められないので入れ替えますねー」

「そんな手間をかけてまで温めたいですか?」

「おでん汁で味を調えておきますねー」

「汁に漬かったおでんプリンに……」


0038


「ませー」

「この焼きおにぎりひとつ下さい」

「はいー」

「このプラス20円のって何ですか?」

「この焼きおにぎりを器に載せておでんの汁をかけてご提供致しますー」

「なるほど。ではそれで」

「ありがとうございましたー」

「あの……箸は?」

「おにぎりですのでー」

「手掴み!?」


0039


「いらっしゃいませー」

「ピザまんひとつ下さい」

「どのピッツァまんに致しますかー」

「どのってこの……」

「具材とチーズで皮を包んだぼたもち風のピッツァまんで宜しいですかー?」

「何でピザまんをそうしたの? あんまんがあるよね」

「あんこは熱いですからー」

「余計熱くね?」


0040


「いらっしゃいませー」

「餃子まんひとつ下さい」

「皮を皮で包んでいますが宜しいですかー?」

「ええまあはい」

「ではまず肉まん用の袋に入れて更に紙袋に入れてレジ袋に入れてー」

「何の為に?」

「過剰包装がお好みかとー」

「すぐに胃袋に入れるから袋は」

「……」

「呆れられた!」


0041


「ませー」

「このピロシキまんって……ピロシキが入っているんですか?」

「はいー」

「カレーパンを皮で包んでカレーパンまんみたいな事になってませんか?」

「餃子を皮で包んで餃子まんみたいな事になってますー」

「このピロシキの中身は?」

「こしあんですー」

「あんパンまん!?」


0042


「いらっしゃいませー」

「ブレンドコーヒーひとつ下さい」

「オレンジジュースとのブレンドで宜しいですかー?」

「わーふたつの酸味が素敵なハーモニーを奏でそうにはないですねー」

「ではコーラとのブレンドで宜しいですかー?」

「黒と黒の夢のコラボレートですねー。夢で終われー」


0043


「ませー」

「肉まんひとつ下さい」

「こちらの肉まんで宜しいですかー?」

「はい」

「もう3日間売れずにここにありますが宜しいですかー?」

「それを聞いたら宜しくなくなりましたー」

「それではこちらの熟成された肉まんで宜しいですねー」

「言い方変えてもその肉まんはもう嫌です」


0044


「ませー」

「この牛丼まんというのをひとつ下さい」

「すき家まんと吉野家まんと松屋まんがございますがどれに致しますかー?」

「え……それじゃ今回は吉野家まんで」

「残念ですが吉野家まんを扱っているのは別のコンビ二ですねー。こちらはすき家まんですー」

「なら何故訊いたのよ」


0045


「いらっしゃいませー」

「この豆腐まんって……豆腐が入っているんですか?」

「豆腐に入っていますー」

「えっああこの皮が豆腐なんですね」

「木綿ごしの豆腐ですー」

「となるとこれ中身は何が入っているんですか?」

「絹ごしの豆腐ですー」

「でしょうね。そんな気はしていましたよ」


0046


「ませー」

「この皮のみまんって何ですか?」

「肉まんの中身がなくて皮だけのものですー」

「何の為に?」

「食パンや白米みたいなものですー」

「具を自分で用意するものですか」

「そのまま食べても美味しいですよーきっと」

「それを寒い夜の帰り道にひとりもそもそ食べるのは嫌です」


0047


「ませー」

「カレーまんひとつ下さい」

「チャレンジャーですねー」

「えっ?」

「挑戦しちゃいますかー」

「挑戦なんですか?」

「はい」

「辛いんですか?」

「カレーですので辛いと言えば辛いのではないでしょうかー」

「何で挑戦なんですか?」

「ルゥが塊で入ってますー」

「食えるか!」


0048


「いらっしゃいませー」

「このドーナツひとつ下さい」

「ただ今あんドーナツ強化月間ですのでこのドーナツの空いている穴にこしあんを詰めさせていただきますねー」

「あんドーナツについてなんだか大きな誤解がありませんか?」

「……ではつぶあんを」

「そういう意味ではないですね」


0049


「いらっしゃいませー」

「あの」

「こちらがお冷やでございますー」

「えっああどうも」

「こちらがメニューでございますー」

「はぁ」

「お決まりになりましたらこちらの呼び鈴を押して下さいませー」

「いや……」

「ではごゆっくりどうぞー」

「公共料金の支払いとついでに肉まんを……」


0050


「ませー」

「アイスコーヒーひとつ下さい」

「今ストローが切れておりまして代わりはおでんのちくわで宜しいですかー?」

「宜しくないです」

「ではちくわぶ」

「いやいや」

「ではごぼう巻きのごぼうを抜いて」

「ごぼうはどうするんです?」

「これはマドラーの代わりに」

「無駄がない」

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