第4章 王女の物語(6)
ロープの先の方は部屋のドアの向こう側へと消えているのが分かった。その時、エルダが引っ張っているのか、ロープが急にぴんと伸びて、王女はぐいぐいとドアの方へと引き寄せられた。王女は確信を得ると、すぐさまそのドアを開け放った。
王女は転がるように鏡の中から飛び出してくると、身体をしたたか床に打ちつけてしまった。それと同時に手に抱えていた黒猫を思わず放してしまった。
「ドサッ」
突如、大きな物音が辺りに響いたかと思えば、手を放したはずの黒猫は見る間に王の姿へと変わっていた。
「ああ、王よ。よかった。そのまま黒猫のままだったら、どうしようかと思ってたんです」
王女は自分の身体をさすりながらも、安堵した表情を浮かべた。
「王様、姫様。ご無事で何よりです」
またエルダは涙ぐみながら、二人の帰還を喜んだ。
「いったいこれはどういうことだ」
王は自分の身の上にいったい何が起きていたのか、全く知らないようだったので、王女は事の仔細を話した。すると王は大いに怒り、魔法使いを即刻捕らえると、国外へと追放してしまった。
またエルダは王女の活躍ぶりを、王に嬉々と語ってきかせた。それを聞いた王はやれやれと言った様子で王女に声をかけた。
「どうやら今回は、おまえの魔法使いのまねごとが功を奏したようだな。これは頭ごなしに否定するわけにはいかぬな」
「そう言って頂けますと、助かります。私は王に認めてもらおうとは思いませんが、どんな本も読む自由を私にお与えください」
「読む自由とな。分かった。そなたの好きにするがよい」
「王よ。ありがとうございます」
こうして王女は、心おきなく本が読める権利を獲得した。これにより王女は以前にもまして読書に励むようになった。めでたし、めでたし』
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