第3章 物語を書き始める(4)

共通して言えるのは、小説の賞に応募して受賞するのが早道だといったことだった。しかしこれは今の牧には全く必要のない情報で、実際必要なのは小説の書き方についてであるが、あまり書かれていない。中には小説の文章の良い例、悪い例の例文が載っている本もあったが、ここの言葉と次の言葉をつなげた方がスムーズだと言うような、細かい部分を述べているものであって、これから書こうとしている牧が知りたいと思うこととは違っていた。


せいぜい関係のありそうなことと言えば、小説には起承転結が必ずあるということ。これがなければ小説は完成しないと書いてあったことだ。牧は紙から顔をあげると、ふと遠い目で空を見つめた。


「起承転結でいうと、王女が閉じ込められたっていうのは、きっと承の部分なんだろうなあ。なんで王女は閉じ込められてしまったんだろう」


牧はひとり呟きながら、思考をめぐらした。そうだ。起がないから、私は王女を救う方法を思いつかないんだ。牧はとたんに気がついた。そっかあ。起があれば、なんとかなるかもしれない。牧はようやく答えらしい答えにたどり着いた。けれどもよくよく考えてみると自分は書く前に王女がなぜ捕らわれてしまったのか、考えなければならないと最初思っていたことを思い出した。


解決策は実はもう自分の中にあるのではないかと牧はふと思った。物語には全て順序と理由があるのだ。それをきっちり考えれば、結末にたどり着くことができるはずだ。牧は物語が書けるような気がしてきた。そしてもう一度まとめた紙に顔を向けた。最後の箇条書きの文は、

・本をたくさん読むこと

となっていた。牧はこれだと思った。今の私にあるのはこれだけだ。でもきっとこれが私が物語を書く上での、一つの自信になるに違いない。

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