第22話 正義は誰の手に


「まったく、お前は甘い」

 寝ずの番をしながら、稔憲は隆文に毒づく。

「俺はお前にしてもらったことを、他の子にしているだけ。あいつらの言動をおかしいと思えるようになったら、傀儡の術から逃れやすくなるわけだし」

「どうだろうな。私に『何故魔法を教えてくれない』と聞いてくるところからして、お頭が軽いのかと思っているが」

「……フツーは魔法にあこがれるもんなんです。俺が異常なの」

 隆文の言葉に、思わず驚いてしまった稔憲である。

「そう、なのか?」

「ラノベあるあるって言ったらいいのかな。魔法無双とかもあるし。それがもたらす副次的なものは、気づかない」

「ふむ。読んだことが無いから分からんが。今度貸してくれ」

「なぜにそうなった」

 ぺしん、と隆文が稔憲の頭を叩いた。

「もしかすると、新しい魔法構築が出来るかもしれん」

「……そーゆーやつだよね、お前って」


 そんな話をしながら、夜は更けていく……はずだった。


「どういうことですか!?」

 一人が必死に抑えようとしていたが、もう一人が食らいついてきたのだ。


 ……聞かれているとは思っていたが、ここまで簡単に乗ってくれるとは思いもしなかった。

「『ラノベ』とか……やっぱりあの人たちが言ったように、魔王の手先なんですね!?」

「ちょっ……絵里奈、落ち着こうよ」

「あたしは落ち着いてる!」

 どこが、と稔憲は思ったが口に出すことはなく。

「逆に聞くが、その言葉はどこから?」

「宰相様たちからよ!」

 本当にこいつら大学生か? と疑いたくなってしまった稔憲である。

「……監視されてみられているとは思ったが、まさか女性を憑代よりしろに使うほど、落ちぶれているとは考えもしなかった」


 ぐいっと、絵里奈と呼ばれた女性の頭を抑えた。

「これで満足か?」

 冷たく、稔憲は言い放った。

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