プロローグ(下)

「えっ・・・・・・チョっ・・・・・・」


 ホームに残った被害者の友人と見られる女性が戸惑いながら叫ぶ。


「い、伊藤!? ど、どうし・・・・・・誰か助けて下さい! お願いします!! 友達が線路に!!! 電車が!!!! 助けてください!!!!!」


 アナウンスが鳴ってもうすぐ電車が入ってくる様子である。その車体の姿までも目視できる。

 しかし、その光景を見た時には勝手に体が動いていたであろう、どこぞのハンターの電光石火なみ速さで走りだした絶世の美女。


「お、おい。待てって馬鹿! 落ち着け、なんでもかんでもみんな踊ってるだけじゃってか、突っ込んだらダメなんだって!」


 そんな正義感抜群の彼女の腕を咄嗟に掴んだ青年。彼もまた予測していたのか、どこぞのハンターの疾風迅雷なみの速さで静止をかけた。


「何止めてんのよ! 状況見ればわかっしょや、馬鹿タレが」


 青年の掴んだ手を振り切って走り駆け寄る勇猛果敢な彼女。

その場に着くや否や、落ちた女の子に手を差し伸べる。


「ほら、早く掴まって! 今すぐに引き上げっから!!」


「は、はい。・・・・・・っ!?」


 落ちた女の子が立ち上がろうとするもどうやら、落ちた拍子に足を挫いて力が入らない様子である。

 立つのがやっとで、地面を蹴れなく引き上げるのは難しい。


「ったく・・・・・・考えもなしに」


 そう一人呟くと青年は、同じように駆け出して


「とりあえず、引き上げるの無理! 手を貸すから、ホームの下に潜る事はできるだろ、中に入いるぞ! アヤメ! お前は退いて、駅員さんを呼んできてくれ。お友達さんは、非常ベルを鳴らして、すぐ後ろの柱についてるから」


 声を張り走りながら指示を出して、近くまで行けば躊躇無く線路に飛び降りた。

線路へ転落した女の子の肩を抱き押す様にして歩く。眼前には刻一刻と車体の大きさを変えて近づく電車。

警報が構内にジリジリ響き渡り、電車が危険を回避するように警笛を鳴らす。


 誰もが、目を奪われた一瞬の出来事であった。

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