第4話 広がる世界と松茸2

 東門を抜けた後はしばらく草原を歩く事になる。

 草原には冒険者たちがスライムと死闘を繰り広げているのが見えた。


 森に行くまでの草原に出てくるモンスターはスライムやウルフばかりで、俺とつばさの敵にはならないだろう。そもそも他の冒険者たちが戦っているので俺たちの方までモンスターが来ることはなさそうだ。


 「みんな頑張ってるなぁ」

 「外にいるスライムを100匹倒すとスキルポイントが貰えるらしいですからね」


 何でもギルドから害虫駆除としてクエストが出てるんだとか。

 1回しか受けられないクエストみたいだが、スライムを倒すだけでポイントを貰えるならとみんな頑張っているらしい。


 「東西南北で駆除モンスターが違うから全部やれば4p貰えるみたいですよ」


 モンスターが湧くスピードが間に合わないのか冒険者たちの間でモンスターの取り合いが起きている。ちょっとした地獄絵図だ。


 「俺は落ち着いてからゆっくりやろうかな」

 「私もそうしようと思ってます」


 酷いところだとモンスターより先に冒険者を殴ってるやつもいる。

 ゲームじゃないんだからマナーはしっかりしようよ。


 「そういえば、つばさは何のスキルを取ったんだ?」

 「私ですか? 私のは剛力ってスキルです」


 つばさが取得した剛力は使うと1分間だけ筋力を2倍にする事ができるスキルらしい。制限時間が過ぎると逆に3分間筋力が半分になってしまうみたいだが、それでも強力なスキルだと言っていいだろう。


 「このスキルで貰った5pは全部使っちゃったんですよね」


 そのスキル良いなぁ。常時発動型じゃないってのがポイント高いよね。

 俺なんか眼帯してないと今でも10分くらいで血涙が出ちゃうんだぞ。もしかしてこれから先ずっと眼帯のお世話にならないといけないの? やだなぁ。


「俺はスキルのせいで血涙を流したりしてるのにお前ときたら……」

「私のスキルも制限時間過ぎると立つのも難しくなるし、大変なんですよ?」


 どうやら強力なスキルにはデメリットも多いようだ。

 5pのスキルは取るもんじゃないな。勉強になったわ。


 「ガランさんとマーシーさんは生産スキルを取得してから毎日が楽しいって笑ってましたよ」

 「俺も眼帯を買いに行ったときに聞いた。あれはムカついたなぁ」


 そうは言っても自分で選んだスキルだし、いつかは完全に使いこなしてみたいものだ。


・・・


 しばらく歩いていくと目的の森が見えてきた。

 奥の方には山も見えるから、森を抜ければ山にも登れるのかもしれないな。


 「この森はどんなモンスターが出るんだ?」

 「えっと、森にはゴブリンとイノシシ、ウルフが出ますね」


 つばさも奥の方には行ってないから詳しい事は分からないみたいだが、そんなに苦戦する事はないらしい。


 「あと気になる事があって、ゴブリンがダンジョンと違って襲ってこないんですよ。何ででしょう?」


 ダンジョンのゴブリンは俺たちを見れば飛びかかってくる程に好戦的だ。

 もしかしてダンジョンと外では何かが違うのかもしれない。


 「まぁ、楽になるんならそれに越したことは無いだろう」

 「そうなんですけどね」


 今回の目的は松茸だ。モンスターの生態調査じゃない。

 取り合えず今日は軽く探索するだけして、明日から本格的に松茸を探すことになった。


 この森は大森林と違って木が細いから登って辺りを見回すという事が出来そうにない。奥の方になら太い木もあるかもしれないが、入り口付近は細くて登ったら折れそうな木ばかりだった。


 実際に森を歩いてみて分かったんだが、確かにゴブリンは俺たちを見張るような感じで隠れていることが多かった。他のモンスターはダンジョンと同じように好戦的なのに、何が違うんだろう?


 少しの違和感を覚えながら森を進んでいくと、森が開けて大きな湖を見つけることが出来た。

 とりあえずここをキャンプ地にしよう。今回は大森林みたいに木の上で眠る事は出来そうもないので交代で眠る事になるが、それなら全方向見通せる開けた場所の方が良い。そう考えるとこの湖は打ってつけだ。


 まだ明るいが探索は明日に行う事にして、早めの夕食に入る。

 ゴブリンが出るから火は使えないが、大森林と違ってこの森には果物が多いし食べ物には困らなそうだ。

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