第15話「白日」

「おそい!」


 ドン!


 苛立ちにまかせて宗也は机を叩いた。


 二人目が出て行ってからすでに十分ほど経過していた。


「確かにこれは少し遅すぎますね。様子を見に行きましょうか」


「ああ、そうだな」


 2人は椅子から立ち上がると部屋を後にした。


「二階には誰もいませんね」


 SEは困ったなという笑みを浮かべ、


「下に行ってみますか?」


 と半ば誘導するように宗也に問いかけた。

 宗也は頷き、そろって階下へ行くが、そこにも誰もいなかった。


「どういうことだ? これだけ誰もいないなんてありえない!」


 宗也は愕然と立ち尽くしながら大広間を見渡した。


「これは、何かしらの異変が起きていると見て間違いないでしょう」


「あと行けるところは3か所。バラバラに探すか?」


 宗也が異変を別れて探すよう提案するが、SEは笑顔のまま首を横に振った。


「敵がいるかもしれないので別れるのは危険です。効率は悪くなりますがご一緒にいきましょう」


 宗也もその可能性は十分あると思い、一緒に探すという意見に特に逆らうことなく同意した。


「まずは食堂あたりから行ってみますか」


 SEはまるでピクニックに行くかのような笑顔で食堂へと進んで行った。


*


「……特に変わりはないようですね」


 SEは笑顔を崩さず言っていたが、宗也はこのとき、


(SE、焦ってる?)


 と感じていた。


 SEと宗也が再び大広間へと戻ると、


 とぅるるるるるる! とぅるるるるる!


 ある扉の前から電話の音が鳴り響いた。


 2人は視線を交わすと慎重にその扉まで近づいた。


 SEがゆっくりと中を見ると、


「これは?」


 ドーン!


 そこでSEが目にしたものは、倒れている数人の使用人たちであった。


 そして、その近くには一台の携帯電話が無造作に置かれていた。

 SEはその携帯電話を拾い上げると画面を開いた。


「携帯……、アラームがセットされていますね。きっと鳴が自分になにかあったとき居場所がわかるようセットしておいたのでしょう」


 アラームを止めると、表示されたのはホーム画面ではなく、一枚の写真だった。


「これは、この屋敷の部屋、ですかね?」


「この部屋は――」


 SEと宗也は突きあたりが見えないほど続く通路の闇に目を向けた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


「ここにいないってことは鳴はたぶんこの先だよな?」


「えぇ、ですが携帯を取りに戻って来ないところを見ると敵にやられている可能性が高いです」


 SEは悲しい笑顔をしていた。


「SE、俺は――」


「ええ、わかっていますよ。使用人の彼らのことが心配なのですよね。宗也さんはここで介抱していてください。それから、犯人ですが――」


 ばっ!


 宗也はSEの言葉を制し、


「大丈夫だ。覚悟は決まっている。『なんで』とか『どうやって』とかはわからない。そもそも方法なんてエコーズの知識がほとんどない俺にはわかるはずもな

い。でも、でも、犯人はわかった……。誰だろうと今更引く訳には行かないッ!!」


「そう……ですか……。では、決着をつけてきます」


「ありがとうSE。……気を付けてな」


「ええ」


 SEはとびきりの笑顔で答えた。

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