第四章 スタンダード

笑顔と、静けさ

 四天王は倒した。

 そのあと、敵は現れない。

 操縦そうじゅうの練習と勉強。あとは遊びを頑張るライゾウ。

 同級生たちと時間を過ごした。

 トミイチと遊べたのは、一週間に1度か2度。

 できることが増えていくダブルエスの話はせず、純粋に遊んだ。

 睦月学園むつきがくえん。五月半ばからの中間テスト。

 やはりトミイチがトップ。

 声をかけられ、長めの髪の少年は表情をゆるめた。


 五月後半の研修けんしゅう

 1日目は山へ向かった。先生も同行している。

「海じゃないだけマシと思うか」

「そういうこと」

 ジャージ姿のライゾウとキヨカズは、料理をしていた。

 見るからに慣れていない手つき。

「代わりましょう。お米を頼みます」

 手際よく、材料を切りそろえていくトミイチ。

 同じ班の人たちに話しかけられ、笑顔を見せている。

 短めの髪の少年と普通の髪の少年も、楽しそうに笑った。


 夜が訪れ、班ごとに別の部屋へ泊まる。

 みんな寝間着姿ねまきすがた

「気になる男子は?」

「別に」

「研究のほうが気になる」

 外ハネヘアの少女と銀髪の少女は、すぐ眠りについた。


 2日目は職業訓練。

 ライゾウは、頭を悩ませていた。

「そう悩むことはありませんよ」

「なんでだ?」

「未来には、無限の可能性があるのですから」


 翌日。休むことなく、普通に授業がおこなわれた。

 その放課後。

 久しぶりに敵が現れる。

「油断してたわ」

「敵の作戦じゃな」

 制服姿のスミコとネネが、スカートを揺らす。島へ急いだ。

 スラブ専用の地下への入り口に、同級生の五人も続く。

 エレベーターを降りて、列車に乗り込む。

 本部へと続く通路で、ミドリとアオが合流した。

 指令室しれいしつに映される映像。

 たくさんの空飛ぶ箱と、動物の意匠が入った四角いメカ。

 人型のロボットはいない。


「なんで、いないの?」

「応答なしじゃ」

「グレータンデム改、ブルータンデム、発進!」

 スミコが命令した。

「りょうかい」

「いきましょう」

「はい」

「よろしく」

 ミドリとアオ、タカシとミツルが返事をした。

「どこで、遊んでるのよ」

 いっぽうそのころ。

 ライゾウとキヨカズは、トミイチと遊んでいた。


 グレータンデム改の銃撃が、敵のメカをとらえる。

 空中で派手に爆発した。

 続いて、左手の光るけんが、地上のメカを貫く。

 またしても起こる爆発。

 華麗かれに舞う、シャープな機体。

 コックピットに座っているのは、十代半ばの少女。横向きの操縦桿そうじゅうかんをにぎる。

「らくしょう」

「あら。楽しすぎちゃったかしら」

 横から見ると斜め上の位置に、もうひとつコックピットがある。

 十代後半の女性も、余裕の表情だった。


 ブルータンデムの銃撃は、わずかにれた。

 左腕のシーイーシールドでたまを防ぐ。

 洗練せんれんされた見た目とは裏腹に、戦いかたはぎこちない。

「落ち着けば、やれる」

「無理そうなら、オレが撃つぜ」

 ミツルの言葉に答えず、もう一度狙いを定めるタカシ。

 光のたまが敵に吸い込まれ、爆発が起こる。

 タカシにはゆっくりと見えた。

「ボクに任せて」

 空中の爆発に照らされるコックピット。

 少年たちは、次の敵に向かった。


「悪い。気付かなかったんだ」

「ごめんなさい」

 ライゾウとキヨカズが島に着くと、すでに戦いは終わっていた。

「お仕置きするから。きなさい」

「じゃあ、わしも」

 二人の少女は、二人の少年をどこかに連れていく。

 畳の上で、お仕置きはおこなわれなかった。

 四人はしぶいお茶を飲んだ。


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