簒奪の歴史

簒奪の歴史


 耐えることは、楽だった

 そこにあって少しも動かぬ

 どっしりとした川底の石のように

 または、大地を掴む木の根のように


 謀略の道具になるために産み落とされ

 隣国の衣装を身にまとい

 風化しきった石碑のように玉座に座る


 その矛盾と理不尽の中から

 逃げ出すことは許されず

 やがて、そんな考えすら消されていった


 それが

 まわりをどれだけ苦しめたことか


 全てを奪われたその日

 耐えることしか知らなかった川底の石は

 大きな嵐に

 その濁流にひっくり返され

 流れの緩い下流に静かに落ち着いて


 また新たな小石が

 その後を埋めた

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