Transmagic in 21st.

桐生龍次

1st_Curiosity killed the cat. 01

 【好奇心は猫を殺す。】


『都市の最も中心にある建物に入るとバケモノになってしまう』

 まことしやかに囁かれる噂。

 本当か嘘かは入った人のみぞ知る。


「…っつー噂があるわけよ」

「…で、何をさせたいのさ?」

「コウタ、行ってみよーぜ!」

「やだよ。遠いし」

 『計画都市』と名付けられた、壁に囲まれた都市。

 ここは、その中でも中心部から一番遠い高校、緑淵高校。

 …そもそも、この計画都市は、色で区が分けられていて、ここは東側に位置する「緑区」の「淵部えんぶ」、外側に位置するのだ。


央部おうぶとかならともかく、ここは環部かんぶよりも遠い淵部じゃん、6区画の中心がある研究所って言えば有名だけどさ、ここから一時間はかかるよ」

「だから良いんだろー? いいじゃん、行こーぜ」

「嫌だって…」

 面倒な友人だとつくづく思う。


 僕は清水しみず 宏太こうた。緑淵高の2年だ。部活動は剣道部をやっている。

 僕と一緒にいるのは火伏ひぶせ 平二へいじ、同じクラスの親友だ。部活は陸上部。

「なあ、オトハとティナも来るかー?」

「え、なになに、面白そう!」

「オトハ、ヘイジのことだからどうせつまんないって…」

 話をややこしい方向に持ってったなヘイジ。


 島風しまかぜ 音羽おとは土屋つちや ティナ。二人ともクラスメートで、音羽は弓道部、ティナは天文部。もともとは四人ともこの計画都市に住む前から知り合いだったし、高校に入ってここに来てからも仲良くしている。


「やめとこうよ、オトハ…」

「ティナの言うとおりだ、そんなことに体力使いたくないし」

「コウタ、たまには運動しなよ! 明日は休みだし、今日はどうせ部活ないんだし!」

「それ、来週がテストだから…」

「そうだぞー、危険な剣ばっか振ってないで体動かそうぜ」

「あれは竹刀、そこまで危険ではないから」


 意見が二人と二人で食い違ってる。

 テスト前なのに暢気な二人と、テストを危惧する一人、そして動くのが面倒臭い僕。


「こうなったら、四人でじゃんけんな! 俺かオトハが勝ったら四人で行こーぜ」

「はぁ? なんで…」

「いっくよー! じゃーんけーん…」


 負けた。オトハが一発で一人勝ちしたせいで、往復二時間の道を自転車で走る。


 …まあ、一応噂には興味が無いわけではない。でも、わざわざ学校のあった直後に行かなくても…

「はぁ、はぁ… 疲れた…」

「ティナ、こんなんでヘタってないで、早く行こーぜ!」

「陸上部だから平気なんでしょ、ヘイジは」

「もう、無理…」

「ティナ、まだ環状線すら抜けてないから、頑張ろう」


 ティナのペースに合わせつつ、央部に到着する。

「流石に、疲れるな…」

「む、無理だって……」

「ほらほら、ティナはともかく、コウタもへばってどうするのよ」

「研究所まであとちょっとだ、頑張ろうぜ!」

「うー……」

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