第3話 異世界のリアル

 その日、世界的に有名な動画投稿サイト"Raum(ラオム)"にあげられた一本の動画が話題となった。

 その動画を観た者は驚いてSNSで拡散し、数日後には世界中で知られるようになる。


 その動画のタイトルは「異世界のリアル」というもの。


 地球に存在しないクリーチャー同士が、平原で争い、傷つけ、殺し、そして喰らっている様子が映されていた。クリーチャー達の種類は様々で、外見はハリウッドの特殊メークを施された異形の生き物のようにも見え、またCGによって生まれた創造物のようにも見えた。


 既存の映像・画像作品では見たこともないクリーチャーの自然な動きや想像を超えた速さと力強さ、そして声と反応のリアルさが生む迫力に、その動画への評価は日増しに高まり、チャンネル登録者が百万人を超えるのに三日もかからなかった。


 「新しい映画のPV(プロモーションビデオ)だろう? 」

 「少なくとも個人で、こんな金のかかりそうな動画は作れない。作ったのはどこの会社だ? 」

 「でも凄いな。動きや音も自然だし、ほんとレベルたけぇよ」


 その動画の出来映えの良さに、観た者の最初の反応はこんな感じである。

 とにかく、特撮かCGか、どちらで作られたのかは判らないまま、どこかの大手が制作した作品としか思われていない。常識的に考えると、個人や小さな会社で制作可能な動画であるはずがなく、当然の反応である。


 しかし、名乗りを上げる制作会社はいつまでもどこからも出てこなかった。

 また特撮やCGで作られた動画ではないという識者からの意見もあちこちで出て、「異世界のリアル」は何なのか? と世界中のネットやTVで毎日話題となっていた。


 そして同時に投稿者「HIBIKI」の名も世界中で知られるようになっていた。


 「HIBIKIとは誰だ? 」


 この話題に関心もつ者が増えていた。

 カフェで、学校で、職場で、そして家庭で……どこかで誰かが必ず話題にあげるほど高い関心持たれていた。


 巷で関心を集めていたそんなある金曜の深夜枠、「異世界のリアル」の特集が民放のキー局の一つ”新時代TV”で流された。流された映像は動画サイトで既に流れているものと同じであった。だが、その番組冒頭で「異世界のリアル」は、複数の人間が実際に異世界に行って撮影してきたノンフィクションであると番組司会者から報告された。そして新時代TVは週に一度、「異世界のリアル」の続編を流す予定であることも。


 この話題はSNSを通じて一気に広まり、視聴率は30%を超え、深夜枠の番組としては驚くべき数字をあげる。


 番組には「異世界に行ったなんて眉唾だろ? 」「異世界に行って撮影しているのは誰なのか? 」と問い合わせが世界中から殺到した。新時代TV側は公式に「異世界のリアルを撮影したのは「HIBIKI」というグループによるもので、それ以上は答えられない」と返答した。


 そして次週の「異世界のリアル」を世界中が待つこととなった。

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