第2話 穴があったら…入りたい?

 ダンボールに私物をまとめた。

 次々と運ばれていく資料と機材。

 去り際に、軽く舌打ちして出ていく食品メーカー社員達。

 昨日まで仲間だったのに…一方的な仲間意識だったのかもしれない。

 33歳…独身、身長高め胸薄め。

 人望も薄かった。

 アタシはダンボールを両手で抱えて、大学を後にした。

 自宅への道のりは長かった。

 今までなら、通訳兼ドライバーがいたから気にしなかったけど、歩くと遠い。

 ヒールを投げ捨てたくなる。

 昼過ぎに出たのにアパートに戻る頃には薄暗くなっていた。

 部屋に入ると玄関に座り込んだ。

 ベッドまで這うように進む。

 目の前が真っ暗だ…。

「どの面下げて帰国したらいいのやら…」

 目の前に広がる黒い穴…黒い…穴…。

 目を擦ってキッチンを見る、使わないのでキレイなキッチンだ。

 目をベッドの下に向ける…黒い穴…1mほどの穴。

(なんだコレ?)

 なんだろう、空間に穴が空いているように見える。

(心の病かしら?)

 黒い穴にダンボールの中から取り出したボールペンを放り込んでみる。

 スッと消えるように吸い込まれる。

「怖っ!!」

 思わず後ずさった。

 アタシの部屋(借りてもらった)に、こんなものがあったとは…。

 確かにベッドの下なぞ、いつも暗いし、這わない限り見ることも無かったわけだが…世にも奇妙なナニカがベッドの真下にあったとは…。

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