第2話 たいかい、しゅつじょーします、です。

(あー、今日も疲れたなー。キャラ作りってしんどい。けど、それで騙されてくれるから、ラクでいいな。でも、最近、周りが騙されてばっかりで、面白くないんだよなぁ。何か面白い事ないかなぁー。)


愛梨菜は今日も暇だった。

普通の五歳児は、幼稚園から帰ると寝て食べての繰り返ししかしない。

よって、いつも愛梨菜はお母さんにお昼寝に連れて行かれる。

だがそこで、愛梨菜が寝たフリをすると、お母さんはいつも、寝室から出ていくのだった。

出ていった途端にぱちりと目を開く愛梨菜。

その後、お母さんが起こしに来るまで、暇を持て余しているのだった。


(あれ。なんか、置いてある。)


しかし、今日は様子が違った。

枕に頭を置いたときから気が付いていたのだが、枕がかすかに浮いている感覚がするのだ。

愛梨菜は気になって、枕を持ち上げてみた。


(よいしょっと。枕って意外と大きいし、重いな。…………?)


枕の下にあったのは、小さな小さな袋だった。縦横5cmずつくらいの愛梨菜が手を入れれるくらいの袋。


取り敢えず、愛梨菜は手を入れてみる。

すると、袋から出てきた愛梨菜の手には、小さな説明書が握られていた。


(何かこの袋、面白事の予感がする。)


愛梨菜は早速、説明書を読んでみることにした。


――なんでもBOXの取り扱い説明書――

これは非売品です。大切にしてください。

世界に一つしかない、特別な袋です。


①なんでもBOXとは

 なんでもBOXとは、日本にあるものならどのようなものでも取り出すことのできる袋です。ただし、使用回数の制限は100回です。


②ご使用方法

 必ず身につけてください。

 この袋は、最初にこの説明書を読んだ方の持ち物となります。その方以外の方が身につけてもこの袋は効果を発揮しません。


③持ち主の確認方法

 説明書の最後の所に最初にこの説明書を読んだ方の名前が書かれています。その名前がこの袋の持ち主です。



説明書を読み終わる際に持ち主の名前を確認すると、“桜 愛梨菜”となっていた。


(ってことは、私の為に誰かがこの袋を置いていってくれたんだー。ご苦労様。じゃあ、早速使ってみるか。袋に手を入れてっと。………、あの四角い端末……、スマートフォンを出してみるかー。)


実際に考えながら取り出してみると、袋よりも大きな端末が出てきた。


(この袋、どういう仕組みになってるのかなー?袋から出しきっていない時は、触っている感覚はあるのに、その空間には何も無いし。取り出しきると存在が認識されるようになるのかな?まぁ、出てきたら何でもいいか。)


しかし、ここで問題が生じた。

愛梨菜は親がスマホを使っているのを見たことはあっても、触ったことはないのだ。

よって、電源のつけ方が分からない。


しかし、適当に横にあるボタンを触っていると、画面が点いた。


(よし、点いた。さてと、遊ぼうかな……、…なにこれ?)


愛梨菜が遊ぼうとplayマーケットというアプリを押した。すると、画面が切り替わり、【第一回『カクヨム』最強、決定トーナメント 】という文字が現れた。


(へぇー。面白そうじゃん。参加してみよっかなー。)


興味を持った愛梨菜は、そのページの詳細を読んでいく。


(なになに………。『天下一武道会』や、『最大トーナメント』の様な、勝ち残り式のトーナメント大会を予定しています、だって?『天下一武道会』とか、意味分かんないけど、思った通り面白そうじゃん。参加決定だなー。どうしたら行けるんだろ?………、目を瞑って“トーナメント会場に行きたい”と思ったら次の瞬間には貴方はトーナメント会場にいます、だって?よし、さっそく………っとその前に、この袋を見つける前のもう一人の私を袋から出してっと。)


愛梨菜はお母さんに心配をかけないように、袋の存在を知らない少し前の自分を袋から出した。

そして、同じ時に同じ人がいるのは問題があるので、少し前の自分が愛梨菜の存在に気がつく前に、気絶させる。

気絶させた少し前の自分を布団に寝かせ、愛梨菜自身は目を瞑り、心の中で“トーナメント会場に行きたい”と願ってから目を開けた。





*****



(―――ここが、トーナメント会場か。トーナメントのエントリー受付はどこだろう。)


目を開けると、そこはよく知らない所だった。“トーナメント会場”という幟が立っているので、ここで間違いないだろう。

愛梨菜が興味深く周囲を見ていると、優しそうなお姉さんが声をかけてきた。


「ここはね、トーナメント会場なのだけれど、お姉ちゃんはお母さんと一緒に観に来たのかな?それとも、トーナメントに参加しに来たのかな?」


そう聞かれた愛梨菜はこう答えた。


「あのね、まりなはさんかしゃとして、きたの。」



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