レポート2-2

僕が再び防護服を着終ったころ、ルインに部屋の外から呼ばれた。食事の準備ができたらしい。

僕が部屋から出ると彼女は驚いたようで、ビクッと震え、小さく叫んだ。

「ひゃあ! ビックリした! あなた、またそれ着たの?」

「あー、その、なんだか落ち着かなくて」

「……そうなの? まあ、暑くないなら私は良いけど……」

「大丈夫なのでお気になさらず」

頭部のカバーは外しているので食事はできる。快適ではないが仕方がない。

この防護服にはあらゆる危険物に反応するセンサーが搭載されている。何かあってもこれさえ着ていれば安心というわけだ。

「さあ、座って。昨日の残り物とか、有り合わせのものばかりだけど」

案内された席につくと、ルインが奥から料理を運んできた。

ごろごろとした色鮮やかな野菜が沈んだ澄んだ金色のスープ。

青々とした新鮮な野菜の盛られた小皿。

明らかに合成肉とは違う本物の肉の薄切りとキノコの香ばしいソテー。

つかめば指が沈みこみそうな甘い香りのする真っ白なパン。

「どうぞー」

ルインがにっこり微笑んだ。


「ううわわああああああああ!!!」


僕は椅子から転げ落ちた。

「ひやぁ! なに、なに!?」

ルインが慌てて駆け寄ってくる。

「あ、いや、すまない。こんな食事は初めてで……」

旧世代の資料でこのような料理の画像やイラストを見たことはあったが、汚染が進んだ僕の時代では再現することは不可能だ。

いつか味わってみたいとは思っていたが、まさか本当に食べることができるとは……

僕は今とても感動していた。

「えぇ……そんなに?」

ルインが隣で少し引いている気がしたが、気にせず僕は椅子に座り直し、パンを手に取った。

……柔らかい。手でちぎって口にふくむ。ほんのり甘く咀嚼すると溶けるように消えてしまう。旨い。

スープをスプーンですくって口に運ぶ。野菜と肉の甘みや風味が口一杯に広がり鼻から抜けていく。

次は生野菜だ。噛み締めるたび、シャキシャキと鳴る。旨い。

そして肉だ。僕の時代では生産数が非常に少なく、食糧というよりは高級嗜好品という扱いだった。この薄切りの数切れですら僕の月給の半分は持っていかれる。本当に食べても良いのだろうか?

しかし、そう考えながらも、僕は肉にフォークを伸ばしていた。

まだ熱々のそれを口にふくむ。じゅわっと肉汁が溢れるのを感じ、僕は思わず笑った。

美味しい。確かに簡単な料理だ。だが、これまで食べた全ての料理より美味しかった。

僕はこれらの料理を無心で、しかし、ゆっくり味わって完食した。

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