悪役令嬢は婚約破棄を望んでいた


 婚約破棄を言い渡された私は窮地に立っていた。ーーーと思われていた。

 しかし、現実は違う。

 

 「エルン・ニロンイ。貴様の数々の不敬をここで償ってもらう!」

 「あら、ありがとうございます。貴方のことタイプではなかったんです。えぇ、正直言うと性格がちょっと………、こうして婚約破棄を貴方の方からしてくれて心の底から嬉しく思います。えぇ、ありがとうございました」

 「ーーーは?」

 

 あらあら、私の予想外の言葉に放心してらっしゃる。口をあんぐりと開けるなんてはしたない。やはり、彼は性格が残念だわ。元より王族との結婚なんて面倒だったわ………。

 兎も角、晴れて私は本当に愛おしい人と婚約することが出来るわ! ええ、王子。最後のプレゼントありがとうございました。

 

 「では、これにて失礼致します」

 

 さぁ、顔も性格も私好みな人をお迎え致しますわっ! とびっきり綺麗なドレスであのお方に褒めてもらうのですわ。これからが本番ですわ。気を引き締めないと!

 

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