転生の山

Katyusha

第1話小田原

「思わぬ収入があったな・・・仕事も一段落したし、酒でも飲むか・・・」

黒い肩衣を着た1人の武士が左手の銭を数えながら小田原の街を歩いていた。この男、島左近衛将監氏宗という。北条陸奥守氏照の馬廻であるが、氏照の特命を受け2年前から小田原に赴任していた。


「亭主!酒と飯をくれ!」

氏宗は行き付けの飯屋に入ると道にはみ出して置かれている椅子に座った。

「これはこれは、将監様、まだ真昼間ですけど、お酒、よろしいんで?」

「ああ、臨時収入があってな、それで酒だ。しかも今日は朝飯を食いそびれた。腹も減っている」

「御武家様の臨時収入って何です?」

「先刻、町衆に因縁を付けていた破落戸を懲らしめたらな、その町衆がいらんと言うのに礼をくれたんだ。それにしても最近、小田原は破落戸が増えている。困ったものだ」

「そうですな・・・確かに破落戸が増えてますな・・・でも、将監様がいれば町衆も安心して商ができます。皆、感謝していますよ」

「俺にとって破落戸退治は暇潰しの様なものだがな。それより腹が減っている。早く酒と飯をくれ」

「へいへい、只今」


天正15(1587)年春、北条氏の城下町小田原は東国随一の都市としてその繁栄を欲しいままにしていた。領内はもとより、遠国からも一旗揚げようと様々な類の人間達が小田原に集まっていたが、当然、その中には品性劣悪な連中もいて、仕事からあぶれたこうした連中は破落戸と化し町衆にたかっていたのである。


「亭主!この焼き魚、旨いな!小田原の鯵の干物は天下一品だ!」

「ありがとうごぜぇやす。おや?向こうで何やら騒ぎですな・・・日に何回か必ず何処かで諍いがある・・・いい加減にしてもらいたいもので・・・」

「ちょっと様子を見てくる。すぐ戻るからこのままにしておいてくれ・・・あっ、それとな、焼き魚、追加を焼いといてくれ」

「将監様、ちょっと・・・飯の途中だというのに行っちまったよ・・・御忙しい御仁だ」


「亭主!魚は焼けているか?」

「今焼いていますよ。何があったんで?」

「ああ、また破落戸が町衆にたかっていた。いい加減にして欲しいものだ」

「そうですな・・・御奉行は何をされているのやら・・・」

「奉行所も人手が足りないんだよ。拡大する小田原の街についていけなくなっている」

「じゃ、いっそのこと奉行所を増やしたらいかがで?」

「無茶言わないでくれ。建物増やしても人が増えるわけじゃないだろ」

「ははは、そうでしたな」

「将監のおじちゃん!」

店の中から1人の少女が駆けてきて、酒を飲んでいる氏宗の背中に飛び付いた。

「うっぷ!何だ、さきか!さき、何度言えばわかるんだ?俺はまだ21だぞ。おじちゃんはないだろう?」

後ろを振り向いた氏宗は、さきの頭を撫でながら笑顔で語りかけた。

「じゃ、将監の兄様、さきね、御本、3冊目までできるようになったよ!」

「そうか?それでは試してみてよいかな?亭主も加わるか?」

「何を試すんで?」

「簡単な算術だ」

「そうですな、ひとつ試してみましょうか」

「1から20の合計は?」

「えっとね・・・19だから真ん中が10で・・・20足して・・・210!」

「偉いな、正解だ!亭主、どうした?」

「・・・」

亭主は両手の指を駆使して計算しているが、さきに完敗である。

「次は・・・360貫の銭がある。15人で等しく分けたら1人何貫だ?」

「えっと・・・24貫!」

「これも正解だ!亭主?」

「・・・わしも計算が得意な方ですが・・・完敗です。さきは何時からこれ程までに?」

「さきは賢い子だぞ。俺が幼少の頃使っていた教本を短期間で習得している。将来が楽しみだな!」

氏宗はさきを抱き上げる。

「将監殿」

氏宗の後ろから野太い声がする。氏宗が振り向くと、そこには北条氏照の重臣、横地監物吉信が立っていた。

「これは監物殿ではござらんか。何時小田原に?」

「昨日の晩だ。おお、可愛い女子だ」

吉信は笑いながらさきの頭を撫でている。

「ちょうどよい、ちと話があるのだが。よろしいかな?」

「承知した。亭主、すぐ戻るから酒も追加しておいてくれ!さき、また後でな」

氏宗はさきを降ろすと吉信と共に店を出て行った。

「かしこまりました・・・相変わらず御忙しい御仁だ・・・」


「八王子城の普請が完了した。これで八王子城は単なる山城から鉄砲の威力を最大限活かせる城に生まれ変わった。ついては其方が担当している新型鉄砲の開発は如何に?」

「こちらも完成した。早合も改良したので従来の鉄砲と比べ時間当たり9倍以上の弾を放つことができるようになった」

「それは実か?でかした!そうなれば弾薬の消費も増えるな。弾薬の備蓄も急がねばな」

「併せて、鉄砲隊の再編と訓練が必要だ。弾薬の装填に手こずったら元も子もない。早合も弾薬を紙で包み封を切らずに装填するようにした。簡単に着火しすぐ燃え尽きてしまうように硝石を溶かした水に浸した後に乾かした紙を使うのだが、この紙を製作する職人も増やす必要がある」

「陸奥守様は明後日の昼過ぎに小田原に到着される御予定だ。それまでに新型鉄砲を運用する際の留意点をまとめておいてくれ」

「承知した。ところで監物殿、今日の御予定は?」

「小田原の街も久しぶりだ。今日は楽しむ!」

「先程の店に酒の準備をさせている。戻ろう」

「あの店か?単なる飯屋ではないか」

「見てくれで判断なさるな。外見は確かに普通の飯屋だが、料理人の腕がよい。亭主が酒好きでよい酒を揃えている。もちろん芸者はいないが、中途半端な座敷より確実に旨いものを口にできますぞ。御本城様の馬廻衆や小姓達も常連客だし、陸奥守様にも機会があれば是非来ていただきたい程だ」

「そうか?では行ってみるとするかな」

「では参ろう」


「将監殿、昨日の店は堪能できた。今日も昔の友垣と行くつもりだ」

「亭主も喜ぶでしょうな」

「あの店を其方はどの様にして見つけたのだ?」

「朝飯は宿の御婆に作ってもらっているが、夕飯の時間は作業の都合で不規則になる。御婆に迷惑をかけたくないので夕飯が食える店を探していたら鉄砲鍛冶の親方に評判を聞きましてな、早速行ってみたら思いの外旨かった。それ以来行き付けなのですよ」

「八王子にもあの様な店があればよいのにな。八王子には何もない・・・」

「2年前は本当に何もなかったが、まだ・・・」

「町衆が小田原や滝山からぽつりぽつりと移ってきてはいる、とは言っても陸奥守様直々の依頼に付き合っているだけだがな。問題は、肝心の八王子衆が根古屋に入っていないことだ。まだ殆どの八王子衆が滝山にいる・・・陸奥守様は近々居城を八王子城に移される。そうなれば八王子も少しはまともになるだろうが、今のままではな・・・今でも滝山の方が店があるくらいだ・・・」

「八王子と滝山は13里程度の距離。滝山に住んでいても八王子での御役目ができますからな・・・」

氏宗と吉信は雑談しながら鉄砲矢場にある陣所に向かう。しかし、小田原の繁栄を目の当たりにすると雑談も鄙びた八王子に対する愚痴になってしまう。


この日、鉄砲矢場では氏照とその重臣達に氏宗が2年前から開発を手掛けてきた新型鉄砲を披露することが予定されていた。氏宗は改良を重ねてようやく完成した新型鉄砲に自信を持っていた。この新型鉄砲が氏照に評価され、戦場で威力を発揮する日を待ち望んでいたのである。


会所で氏宗と吉信が待っていると重臣達と共に氏照が入ってきた。氏宗は新型鉄砲の概要を氏照に説明した後、運用上の留意点をまとめた書状を氏照に渡した。

「なるほどな・・・承知した。監物、出羽守(近藤出羽守綱秀)、この将監の進言を基にして、まずは八王子衆から鉄砲隊の再編・訓練と職人の確保・育成に努めよ」

「はっ!」

「ところで将監、何故新型鉄砲は三連なのだ?四連、五連にすれば更に時間当たりの射撃数が増える。これとは相反するが、敵兵を倒すには鉄砲玉1発で事足りる。同じ個所に3発も撃ち込むのは鉄砲玉の無駄使いではないのか?」

「仰せ御もっともです。しかし、銃身が増えるとそれだけ銃が重くなり兵の負担になります。撃ち始めは仰せのとおり四連、五連の方が有利ですが、銃身が増えればそれだけ時間の経過と共に兵が疲労し、やがて射撃速度が著しく低下します。故に、兵が従来の鉄砲と同じように長時間連続して射撃するには三連が限界と判断いたしました。また、銃身が多過ぎると弾薬の装填が煩雑になり、これも射撃速度低下の原因になります」

「なるほど」

「更に、この新型鉄砲は50間の距離で横に並んだ敵兵3人を狙撃できるように3本の銃身の内2本を若干左右に傾けています。1人の敵兵に照準を合わせば、その両隣の兵も同時に倒せます」

「なるほどな・・・では、新型鉄砲の威力、見せてみよ」

「はっ!・・・数馬!準備は?」

「何時でも!」

「陸奥守様、鉄砲場へ」

「うむ」


鉄砲場では氏宗配下の者達が試射の準備を整えていた。氏照達が床几に腰掛けると氏宗自ら新型鉄砲を構え的に向かう。射撃間隔を比較するために、従来型の鉄砲と同時に氏宗は射撃を開始した。

「おお!これは!」

従来型の鉄砲に比べ新型鉄砲は時間当たり9倍の弾を撃つことができ、横に並んだ3人に当たる様に3尺から4尺の間隔を開けて的に着弾している。

「各々方、これは口外してはならぬ。もし、口外する者あらば一族皆斬首と心得よ!」

「はっ!」

試射が終わり、的に残る弾痕をつぶさに検分した氏照は重臣達に命じる


「将監、でかした。何か望みはあるか?」

会所に戻った氏照は氏宗に語り掛けた。

「この新型鉄砲、御家中に行き渡らせるには数年かかるでしょう。この鉄砲が十分配備され兵共の訓練が終わるまでは何卒、北条家の命運を左右するような大規模な戦を避けられますよう・・・」

「はははっ!欲のない奴!ではこれを授けよう。例の物を・・・」

氏照は近習に囁くと、近習は脇に置いた包みから木箱を取り出して氏宗の前に置いた。

「これは?」

「開けてみよ」

氏宗が木箱を開けると、レースガラスの小皿が5枚入っている。

「これは・・・いただいてよろしいのでしょうか?」

「これはれえすがらすといってな、べねちあとかいうえうろぱの都で作られた器だ。其方のことだ、何もいらんと言うに決まっておると考えてな。とっておけ」

「有難き幸せ!」

「ところで将監殿、例の物は?」

「何かな?監物」

「実は、将監殿は鉄砲の他にも新たな武器を作っております。ただし、これは陸奥守様の御許しを得ないまま作った物ですので・・・」

「何をもったいぶっておる。早く見せよ」

「これです」

氏宗は傍らに置いた包みから金属製の玉を出した。玉は直径5寸程度で縦横に溝が彫られており、頂部に3分程の穴が開いている。

「これは焙烙玉を改良したものです。焙烙玉は陶器の中に火薬を詰めたものですが、これは溝を彫った鉛球の中に火薬を詰めています。爆発する際には溝に沿って鉛球が割けますので、鉛片が周囲に飛散し20間以内の敵兵を殺傷します」

「と言うことは、20間以上先に投げないと御味方が被害を受けるということか?」

綱秀が氏宗を質す。

「如何にも。これを素手で20間投げることはできませんが、縄を付けて5回程振り回してから放てば熟練の者なら40間以上飛ばすことができます。敵が竹束で鉄砲玉を防いでも、頭上からこの鉛球が落ちてくればひとたまりもないでしょう」

「恐ろしい武器を作りおって・・・監物、この鉛球を量産し、八王子衆から然るべき者を選び投擲する兵を育成しろ。各々方、この鉛球も口外するでないぞ!」

「はっ!」


「将監、ちと話がある。そこに座れ。他の者は下がってよい」

新型鉄砲の披露が無事に終わり、氏宗が立ち上がり会所を出ようとすると氏照が声を掛けた。重臣達が会所を出て行くと氏照は氏宗に語り掛ける。

「八王子城の普請は終わった。これからは城下の整備に本腰を入れる。八王子を小田原に並ぶ、武州随一の街にしたいのだ。そのためには実力ある町衆を小田原から八王子に移さねばならん。先月、御本城様を説得してある町衆を引き抜くことができた。この者の警護をしてくれ」

「町衆の警護、ですか?」

「この町衆、古は常陸国筑波郡で養蚕と機織を生業とし、坂東で最上級の絹織物を作ると評判だったらしい。亡き父上は産業育成にも御熱心でな、その評判を聞き及び小田原の街を整備する際に無理を言って連れてこられたのだ。今では東国、いや、日の本で最上級の絹織物を作ると評判の豊浦家、その主人の警護だ」

「・・・」

「不満そうだな・・・主人と約束してしまったのだよ。八王子に移る条件として、武術に優れた馬廻を警護に付けるとな。御本城様からも父上が小田原に連れてこられた御仁の御孫にもしものことがないようにと念を押されている。しかもこの主人、比佐と懇意でな。比佐からも間違いが無いようにと強く言われている・・・其方は武術に秀でるだけでなく深慮遠謀だ。小田原着任以後、常日頃から町衆と交わり町衆に信頼されているそうではないか。其方以外に適任者はいない。引き受けてくれるな?」

「・・・御台様からも、ですか?」

「そうだ」

「しかし、御台様は常日頃から滝山におられるのでは?にも関わらず御懇意とは・・・」

「・・・わしが小田原に来る時は比佐も一緒だ。今回もな」

「失礼しました・・・この件、承知・・・しました・・・」

「そうか、よくぞ申した。この書状を持ち、明日にでも豊浦家に出向いてくれ。其方の小田原での役目は終わった。新型鉄砲と鉛球の件は監物と出羽守に引継ぎ、豊浦家の準備が整い次第八王子に帰還せよ!」

「・・・は・・・」


「御帰りなさいませ」

その日の夕刻、鉄砲矢場を後にして小田原城下の屋敷に入った氏照が居間で寛いでいると妻の比佐が入ってきた。

「おう、どうだった?小田原の街は」

「前回来た時よりお店が増えている様ですね。活気に満ちていました」

「小田原は今以上に大きくなるだろう。ただし、領内の西に偏った場所に位置するのが弱点でもあるのだがな」

「ところで、例の件、首尾は如何でした?」

「ああ、渋々納得した。明日、書状を持参して豊浦家に出向くだろう」

「上手くいくとよいのですが・・・それにしても、何故このような回りくどいことを?」

「2月程前に監物にそれとなく探らせたらな、将監の奴、今は嫁を娶る気など毛頭無いと言い放ったそうだ」

「ほほほ、監物殿もとんだ御役目を」

「将監は無理強いすると臍を曲げ意固地になる。それに・・・」

「・・・そうですね・・・」


「亭主・・・酒をくれ・・・」

店に入るなり氏宗は椅子に座るとだらしなく壁に寄り掛かる。

「どうしたんで?いつもの覇気がありませんが?」

「・・・帰還命令が出た・・・八王子に帰ることになる・・・」

「何ですって!じゃ、破落戸退治はどうなるんで?」

「・・・俺は破落戸退治の桃太郎にすぎんのか?」

「いえ、そういうわけでは・・・」

「はぁ・・・八王子って何にもないんだよな・・・旨い酒も飯も、もう口にすることができないのか・・・そうだ、小田原から八王子に移転する町衆に対して、向こう3年間棟別銭を免除すると陸奥守様が御触を出されるそうだ。亭主もさきを連れて八王子に来ないか?」

「・・・」

「真に受けるな、冗談だ」

「面白そうですな」

「何?」

「何もないってことは、店もないってことでしょ?それなら、商売、独占できるということじゃないですか?小田原の町衆とは今までのお付き合いがありますから、鮮魚は無理にしても様々な物産を小田原で仕入れて八王子で売り捌くことができますな。こりゃ儲けられますなぁ」

「・・・」

「その御触は何時出されるんで?棟別銭免除の詳しい内容は御存知で?他にも優遇措置はあるんですかい?」

「知らん!近々としか聞いとらん!儲け話する暇があったら酒持ってこい!」

「へいへい!魚は干物なら何とかなるし・・・」

「・・・」


翌日、氏宗は氏照の書状を持ち豊浦家に出向いた。

「御免!某、北条家家臣、島左近衛将監氏宗と申す!御主人はおられるか!」

「いらっしゃいませ、どうぞお上がり下さい。只今主人を呼んでまいりますので、暫しお待ちください」

「では、失礼!」


「私がこの店の主人、春蘭と申します。どのような御用件でしょうか?」

(中年男じゃないのか!・・・それにしても若い・・・美しい・・・何だ、この暖かい雰囲気は・・・まるで旧知の様な・・・)

「どうかなされましたか?もし」

「・・・いっ、いえ・・・まずはこれを」

氏宗は氏照の書状を春蘭に渡した。

「陸奥守様と御台様が御薦めされていた御馬廻衆は貴方様でしたか。よろしくお願します」

(ん・・・何か話が微妙に違うぞ・・・まぁ、いいか・・・)

「・・・こちらこそ・・・早速ですが、八王子への移転は何時頃になりますでしょうか?」

「そうですね・・・今から準備を始めて1月後でしょうか」

「八王子でのお住まいや店舗が1月でできるとは思いませぬが・・・」

「陸奥守様は既に多くの町家を建てられています。私共はその内の1棟に入るだけです」

「なるほど・・・」

「御存知なかったのですか?」

「某、陸奥守様の命で2年前から当地で作業をしております。この間、八王子に戻ることがなかったものですので不案内になっています」

「八王子を第二の小田原とするために街の普請が進んでいる様です。2年前とは街の様子が異なっているかもしれませんね」

「して、某、どの様な警護をすればよろしいのですか?」

「昼夜問わずお店に常駐していただきます。私が外出する際は御一緒して下さい」

(まるで住み込みの用心棒じゃないか・・・)

「・・・承知いたした」

「それと、警護に支障が出ることは止めていただきます。例えば、お酒とか・・・」

(何だと!俺の楽しみを奪う気か!)

「・・・しかし、そこまで・・・」

「陸奥守様の書状には、家人の如く使役しても構わない、と書かれていますけど。御覧になりますか?」

春蘭は氏照の書状を氏宗の眼前に広げた。その書状には確かに[家人の如く使役しても構わない]とある。

(何と高飛車な!・・・さては陸奥守様、小田原から八王子に移すために、この女子が示す条件をまる飲みなされたな・・・年甲斐もなく女子の色香に惑わされたのか!)

「よろしいですね?」

「・・・承知、いたした・・・」

「よかった。では、移転の期日が決まり次第、御連絡差し上げます」

「・・・お待ちしております」

(こんな高飛車な女子の警護だと!冗談じゃない!陸奥守様ぁ、恨みますぞ!)

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