第6話 誰かに止められた?

あれは私がまだ学生で

実家にすんでいた頃の話

私の実家は玄関のすぐ外が狭い道路で

歩行者はほぼ近所の人で

車が通ることもめったになかった


その日の私は

何か気分が高揚することがあって

元気にあふれていた

まるで歩いてなんかいられない

といった調子で

玄関を勢いよく開け放ち

そのままの勢いで

外に駈け出そうとした

まさにその瞬間

私の身体はぴたりと止まり

同時にすぐ目の前を小型トラックが

走りぬけていくのを

びっくりして見つめていた


あのまま走り出していたら

確実にトラックにぶつかるか

ひかれるかしていただろう

呆然とした

めったに通らないはずのトラックに

ひかれかけたというショック


そして理由もなく

急に立ち止まったことにより

結果的には助かったという

説明のつかない奇妙な事実


その後しばらくは

なぜ自分が立ちどまったのか

折に触れ考えてはみたが

納得できる答を見つけることは

どうしてもできなかった


でも悪いことじゃないし

きっと誰かが助けてくれたんだ

そう思うことにして

誰にともなく私は感謝をささげて

この件に幕引きをした








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る