第19話 異空間

どの程度時間が経ったのだろうか。時間がゆっくりと流れていくような気がした。

拓也の前には、同じように横になってテレビを見ている遥がいた。おバカキャラのコメントに二人で声を出して笑う時もあったが、そのシーンが終わると、再び拓也を不思議な感覚が襲った。

久しぶりに誰かとこうしてテレビを見るからだろうか。それとも、遥とこうしてテレビを見るからだろうか。

よく分からないが、一人暮らしを始めて以来、こんな異質な空気を感じたことはなかった。

「ねぇ。なんか飲み物ある?」

遥の声で意識が戻る。拓也は少しため息を吐きながら冷蔵庫から夕方開けたサイダーを持ってきた。

「サンキュー」

遥はペットボトルを受け取ると、一度胡座の状態になってからキャップを開けた。

拓也がまた横になると、遥が拓也の方に振り返る。

「そろそろ服買いたいんだけど。明日連れてって」

「んー。別にいいんだけど、金がなぁ」

拓也が眉間に皺を寄せると、急に遥が立ち上がった。遥はと一緒に持ってきた段ボールの中から小さなアタッシュケースを持ってきた。

遥が拓也の前でアタッシュケースを開ける。

「おま…何これ」

そこにはビッシリと札束が詰められていた。映画や漫画に出てくるようなものだった。

「いくらあるのかは分からないけど、これでどうにかなる。どこ行くー」

堕天使に札束。諺にはなり得ないだろう。

「女子の服ってどこに買いに行くんだ」

「さぁ?」

拓也がとりあえず携帯で調べる。色々なまとめサイトを見て、行く先を決める。

「渋谷…か」

「どう行くの」


そこから二人の「買い物」の計画が立てられ始められた。

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