ありふれた田舎の一軒家には・・・

@suika0407

第1話 引越し

10年ほど前の9月の終わり、まだ二十歳そこそこの年齢だった私はとある自動車販売店に就職する事になった。


実家からでは通えない距離の店舗に配属になり、しぶしぶながらも2時間程度離れた田舎に引越す事に。

その時に付き合いのあった友人が実家を追い出されたのを機に家賃を折半して一緒に住む事となったので一軒家を借りた。

事前に不動産屋とは契約を済ませて、当日は電気も水もガスも通った家に荷物を運び入れるだけ。

トラックを玄関の前につけ友人と共に荷物を運び入れていると近所の人とすれ違う。

頭を下げ挨拶するも何処か余所余所しく逃げられてしまった。


この契約した家は立地が悪く、主要施設から10分程離れた辺鄙な場所にあった。

人通りの少ない幅ばかりが広い道路から、田んぼと田んぼの間の細い路地を入り、舗装されたのも何年前か分からない波立ったアスファルトを少し進んだ所に何件かの似たような作りの家のひとつとして建っていた。

北側には小学校、南側には人のあまり来ない小さな観光名所、そして「我関せず」を徹底する近所の人達。

失礼な話しだが、こんな場所に住んでるんだから陰気な人達なんだろうとその時は思っていた。


家の中は特に変わったところも無いようなごく普通のボロ家。

一階は北側が路地に面し、南側は隣の家と面する。

南の部屋は緑色のカーペットの様なものが敷かれておりいかにも「田舎の家」といった印象。

風呂は東の端、トイレは玄関を入ってすぐなので西の端か。


玄関のすぐ左手に二階への階段がある。

L字に曲がった階段を上がった真正面にドア、右側に襖。

しかしどちらに入ってもひとつの部屋という何ともいえない作り。

日当たりは悪くないが洗濯機はベランダに置かなければいけなかった。


話し合いの結果、一階に友人、二階に私と言う振り分けになった。


荷物を階段から運び上げ、全てが終わる頃には薄暗くなり始めていたのを覚えている。

車を出しその日は外食をして、夜中は友人と今後のことを話し合ってから眠りについた。



これから起こることを考えるとこの家に引っ越したのは間違いだったのではないかと、今では強く思う。

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