絶対的なリアリティが生む恐怖

皆さんに先に言っておきます。
この作者さん、本物です。
怖いもの苦手な人、絶対に『夜』に読まないで。


怖い話を誰かに語るとき、みんな「ちょっと」盛るんですよ。
ちょっと大袈裟に書いたり、その時の気持ちを演出したり、漫画なら周りを暗くしたり顔に縦筋入れたり冷や汗入れたり。
言葉で語る人もね、俯き加減でね、おどろおどろしく喋ったりね、山場で大きな声出したりね。


本物を何度も見てる人は盛りません。
盛る必要が無いんですよ、そのままで怖いから。
本人、一番怖い思いしてるんで、思い出すのも恐怖なんです。
盛る余裕がないってヤツです。
本物は淡々と語ります。
できればあれは幻覚だったことにしよう、精神の異常だったことにしよう、そういう意識が働きます。無かったことにしたいのです。

この作者さんの「怖い話」はどれを読んでも「ああ、この人本物だ」って思わせる怖さがある。
書いてる内容はめちゃくちゃで、普通に考えたら「そんなのありえないから」ってヤツなのに、凄まじいリアリティがある。

もう、怖くて座布団座れないじゃん。どうしてくれる。

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