声 その2

私が実家にいたのは二十六歳までだ。

それまで、私はいつも声を聞いていた。

ざわざわと頭のなかで、いや、周囲で、男女問わず声が話をしている。

誰かの噂話をしている。

でもはっきりと聞こえない。


みんなもこういうことがあると思っていた。


けれど実家から逃げるように家を出た途端、声はぱったりと聞こえなくなった。

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