喉仏

祖母が亡くなって、叔父が尋ねてくるときだけ、仏間を開けた。

誰もやはり手を合わせない。

伯父の位牌はなく、今は祖父と祖母の位牌だけだ。

窓も仏壇も締め切って、昼もなお暗い部屋はみっしりと重い空気に満ちている。

窓を開けて光を入れても空気の重量感は変わらない。


祖母が亡くなって十年経ったが、仏壇にはまだ祖母の喉仏がある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る