第13話 ★そしてエールを探しに行く

★この話は『とある作者の執筆日記』第2話『★実際に飲んでみよう』から続く話です。

★この話の後は『とある作者の執筆日記』第3話『別のエールを飲んでみよう』に続きます。




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 翌日、またエールを買いに行く事にしたわけですよ。


 今日は昨日行ったコンビニとは別の、二番目に近いコンビニへと行く事にする。

 今日は最初から寝間着に黒のロングコートで出発した。

 同じ失敗は二度と繰り返さない。それが出来る男だ。


 玄関を出て大通りを歩く。

 何か面白い事でも起こらないかなぁ~、あれば何か書くネタになるのに――

 ――とか考えながら進む。

 当然ながら、そんな時こそ何も起こらない。それが人生というモノだ。


 予定通りコンビニに到着した。

 入り口を入って最初に買い物カゴを引っ掴む。

 今日もコンビニにあるエールを全制覇するのが目的だ。

 何故そんな事をするのかって?

 それはまた別のお話ですよ。


 コンビニに奥、酒類のケースの前に到着する。

「エール、エール、エール……」

 端から端まで舐めるように探す。

 ……ない、ない、ない。

 えー、ないぞ。

 マジか。昨日飲んだプレモルのアレもないぞ。


 もう一度、しっかりと探してみる。

「……おっ、これじゃないか」

 よーく見てみると、ケースの一番下の段に置いてあった。

 缶を回してラベルを正面に向け、よく見てみる。

「えーっと……よなよなエール、ね」

 そういや、昨日調べた時にこんな名前のエールを見たはずだし、コンビニで売っていると書いてあった。

「あー、置いてて良かったわ。何もなかったらどうしようかと――」

 そう思いながらエールをカゴに入れようとした時である。

 置いてある棚の下部。値段が書いてある場所を見てしまったのだ。

 そこに書いてあるモノを見て私は驚愕した。


 ――三八八


「は? 三五〇mlで三八八円!? マジで言ってんのか? 嘘だと言ってよバー……いや止めよう、何かマズい気がする」


 いやいやいや、マジかよ!?

 値段が想定外すぎる。

 昨日買ったプレモルが二二六円だぞ? プレモルで庶民殺しとか言ってた奴は誰だよ。プレモルさんに謝っとけよチクショーめが!


 すみません……私です……。


 いやいやいやいや……洒落にならんわ。

「あー、でもまぁ一缶だけだし、しゃーない……。コンビニに置いてあるエールは全制覇するって最初に決めたしな……」

 断腸の思いでカゴに入れる。

 若干テンション下がり気味で、つまみを探すために移動しようとした、その時であった。

 ありえないモノを見てしまったのは。


 カラカラカラ、と音を立てて『よなよなエール』を取った場所の奥から缶が現れた。

 それ自体は普通の事である。

 コンビニの飲料品ケースには傾斜が付けられてあり、前の商品を取れば後ろから次の商品が流れてくるようになっているのだから。

 その缶をよく見てみる。


 ――水曜日のネコ


「う、嘘だろ?」

 その缶のラベルにははっきりと『水曜日のネコ』と書かれていたのだ。

 どう見てもさっきの『よなよなエール』とは別物だ。

「そ、そういや、よなよなエールって公式サイトで四種類セットで売ってあったはず……いや、嘘だよね?」

 いや、何で? 何で一つの場所に別の商品が入ってんの?

 おもむろに水曜日のネコを取り出す。


 ――カラカラカラ、ガシャン


『インドの青鬼』


 震える手でそれを取り出す。


 ――カラカラカラ、ガシャン


『東京ブラック』







 そして無事死亡。

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