ここに少年は始まりを刻む

 そんな言葉が最後にふと思い浮かんだ作品でした。
 それほど長くない物語ですが、多民族が共存する西洋的ファンタジー世界の片隅の空気だけでなく、少年少女たちの怒りや悔しさ、無気力、ほのかな思慕といった素直な感情が伝わってきました。物語の展開も過不足がなく、自然で。なんとなく、パステルカラーとか丸みのあるイラストとか、そういう優しいものが似合いそうと勝手ながら思いました。
 一人では立ち止まってしまう悩みでも、誰かと一緒なら歩いていけるんですよね。読んだ後には、暖かく柔らかな風が吹き抜けていくような気持ちになりました。

 個人的には、デリクとクロのやりとり、とりわけクロがデリクを励ますシーンが好きです。

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