3話 いつか見た夢

 真っ白い空間に、ただ1人立ち尽くしている。ここにいるだけで息が苦しくなる。早く抜け出したいと思ってしまう。──僕の痛いと感じるところを抉る空間だ。

 強い不安感に襲われる。このままでは僕が僕でなくなってしまう。そう思えてくる。

「ここは⋯⋯」

 既視感がある。前に、いつだったろう⋯⋯。

 今朝だ。息苦しさのあまり目覚めた今朝のことを思い出す。どうしてこのような夢を見ているのか検討もつかない。

 しばらくしていると遠くに映像が流れ始める。目を凝らさないと見えないほど小さな画面。

 しかしそれは、もし今朝見たのと同じものだとしたらその時よりも近くなっているような気がする。気のせいだろうか。

 さらには映像が鮮明になっている。これは確かだ。アナログチックな正方形に色がついたようなものから丸みを帯びたものやぼやけが生じている。

 緑を背景に黒い球体の前に佇む赤色の棒。それに縋るようにしている真っ白い柔らかな棒。

 ゆったりと動く映像はその先を教えることを焦らしているようだ。

 じっと見つめて、見つめて、見つめて⋯⋯。僕はどんな意図があってこんな夢を見ているのか探ろうとした。

 蠢く真っ黒い球体。2本の棒。

 だが、それだけでは不完全だし、僕には何も理解できない。


 やがて映像に、否、視界にノイズのようなものが走り出す。そして──

 ぷつん、とアナログテレビを消した時のような光とともに辺りは一瞬で暗闇に満ちた。


 僕の夢は、再び闇に飲み込まれた。

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