もたもた

「よーし、じゃあ行くか。腹減ったぜもう」

「いや待ておい待てちょっと待て」

「あ? どした?」

「『どした?』じゃねえよ」

「似てる」

「え、そうか? って、だから! そうじゃねえよ、もう!」

「悪かったって。んで、どした?」

「大切な物忘れてるじゃねえかよ、ほら」

「あっ! 財布! いやー、悪ぃ悪ぃ」

「ったく、気を付けろよ?」

「それな。他になんか忘れてないか?」

「自分で確認しろよ」

「いやそうなんだけどさ」

「あー、これは? ちげーの?」

「そりゃ若のスマホだって」

「うぇ!? これ俺のスマホだったのかよ!?」

「んん!? いや……えぇ? じゃあなんだと思ってたんだよ」

「や、椅子の色と完全に同化してたから……ゴミかと思った」

「おい、ゴミ押し付けようとすんなよ。どうかしてんの若の頭じゃね?」

「おい! いつもマッキーが俺にやってることだろ」

「そうだっけ?」

「誤魔化すの下手だな。にやけてるぞ」

「若もにやけてるぞ」

「いや俺はにやけてな……にやけてるな」

「どっちだよ、若白毛」

「おい、今のおい。絶対今のバカにしただろ」

「してないしてない、苗字で呼んだだけじゃんか」

「いや不自然過ぎるわ! マッキーを万騎が原って呼ぶくらい不自然だわ! あとにやけてるし!」

「万騎が原ん時ろれつ怪しかったな」

「それな」

「てゆーか俺も今怪しかったんだけど。まきがはら」

「『が』に聞こえそうだけどそれ『ぎゃ』だったよな」

「まきゅぃぎゃはゃ」

「は?」

「は?」

「ちょっと……今のはないわ」

「それな。早く行こうぜ。腹減り過ぎて頭おかしくなってら」

「あー、悪ぃ」

「……ぷはっぁ」

「おん? しゃっくり?」

「いや、くしゃみだ、くしゃみ」

「いや、笑ってただろ。あれだな、思い出し笑いか」

「いやくしゃみだって」

「説得力ねえ顔だな」

「ひへっ」

「いやどんな?」

「いいから早く行こうぜ」

「ホントそれな」

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