きょうだい


 なんと表現すれば良いのやら。


 非現実的と表現するべきか、

 現実的と表現するべきか。


 いや、幻想的か。


「どうしたの、お兄ちゃん?」


 何故ならば、

 俺を『お兄ちゃん』などと呼ぶ人間など

 ぼくを『おにいちゃん』と呼ぶ妹など




 もう、存在しないのだから。























              ――きょうだい――























「これは夢か」

「うん、そうだね、そうだよ、お兄ちゃん」


 肯定。


「でもね、お兄ちゃん。これは現でもあるんだよ」


 現。


 夢でありながら、


 現。


「そう」


 ゆったりと微笑む。


「夢を見ているという現」


 ひっそりと微笑む。


「現の中にあらわれた夢」























              ――きょうだい――


























 夢現。


 夢と現。


 ここは、


 何処だ?






















              ――きょうだい――
























「何処だって良いじゃない」


 影を落とすように、


「何だって変わらないじゃない」


 日溜まりのように、


「だから、ね」


 お兄ちゃん。


「私と遊ぼ?」

「――――っ」


 笑みを浮かべた。
























              ――きょうだい――

























「…………」


 夢か現か。


 こちらは、


 どちらだ。

























              ――きょうだい――



























「おい、いつまで寝ぼけてんだ、このクソ兄貴」


 ああ、

 夢ではなく、


 ここは現か。


 気持ち良く寝ている俺を踏み起こすなんて人間など

 うなされている人間を蹴り起こす出来損ないなど




 俺の妹しか存在しないのだから。























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