第5話及第して帰省するに際し

及第後帰覲 留別諸同年

十年常苦學 一上謬成名 擢第未爲貴 賀親方始榮

時輩六七人 送我出帝城 軒車動行色 絲管舉離聲

得意減別恨 半酣輕遠程 翩翩馬蹄疾 春日歸鄉情



及第して帰省するに際し、同年の諸君にのこしおく


私は十年という間 本当に苦しい勉強に明け暮れてきた


そして たまたまであったにしても 一度の試験で合格することができた


しかし私は 試験に合格し栄えある官僚への道が開かれたことを 貴しとはしない


それより何より 今まで自分を支えてくれた親を祝ってあげられること そのほうが本当に晴れがましく 幸せなことなのだ。


それに 君達のような親しい仲間六、七人も、都の外まで送ってくれることも 心に響くものがある。



それでは、とうとう故郷への車は出発するようだ。


旅立ちに奏する楽団の別れの曲も聞こえてくる


私の念願はかなった。


別れの寂しさも、もう薄い。


というのも 諸君と酌み交わした酒で 私は 既に ほろ酔い気分。


こうなると 遠い旅路も 苦になることはない。


きっと軽やかに馬は走るだろう。


この愛すべき春の日


国に帰る私の心に ようやく春風が吹いている。



○貞元十六年(800)長安で作。

 白居易二十九歳にして、進士に合格。

 この詩は、合格し帰省の旅立ちを見送る受験生仲間に贈った歌と言われている。


 苦学が実った合格のうれしさ

 親への感謝

 受験生仲間の合格不合格はわからないけれど、見送りにきてくれるのだから良い人間関係だったと想定される。

 少々の酒を楽しみ、旅の辛さを減らすと詠むけれど、別れの寂しさも「お互い惜別の酒」を酌み交わし、やわらげているに違いがない。

 幸福感にあふれる詩だと思う。


自分の高校合格や大学合格の日のことを思い出してしまった。

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