買い物

 次の日の朝、おめかしをして、二人を待っていた。

(花ちゃんもお宮様もおそいな~)

 そう思い家の中で待っていた。久しぶりにさしたかんざしは、花ちゃんの作った物で、桃色の桜が付いている、着物は、上品な花模様にした。小花が散りばめてある、ありきたりな物であったが、私にとっては、立派な物である。

(二人共、おめかししすぎて遅れているのかな?)

 そう思い、家の外へ出ると、駕籠があった。

(えっ? 何で駕籠(かご)?)

 そう思っていると、中から、お宮様が出てきた。

「あら、青さん、今日は、珍しくおしゃれね」

 お宮様は、そう言って、手を取った。

「待って、私も駕籠に乗せられるの?」

「ええ、そうよ」

「青ちゃん、私もよ」

 もう一つの駕籠から、花ちゃんが顔を出した。くちびるに紅を指しているのがみえる。

「花ちゃん、駕籠の中って居づらくない?」

「とっても居づらいわ」

「……」

 三秒だけ考えた。乗るか乗らないか。

「乗らなかったら、どうなります」

 恐る恐る聞いてみると。

「道に迷うでしょうね」

「なんで、迷うの?」

「ええ、街は広いし、人も多い、行くのにだってそれなりの距離はあるわ、子供一人で行ける物じゃないわ」

「そ、そうかな?」

「ええ、だから、駕籠を用意したの、分かる?」

「ありがとうございました」

 不本意ながら、礼を言わなければいけない立場なのだと気が付いた。

「あなたたちが、このくらい考えていないことは、分かっていた物、いいのよ」

「さすが、お宮様、でかけ慣れていますね」

「まあね」

 よいしょしておくといい事がありそうだと思ったので、そうした。

「さあ、御簾(みす)を避けて乗って」

「はい」

 恐る恐る御簾を開けて、中へ入ると、狭い空間があった。

(これが、お金持ちの移動手段)

 ワクワクと困惑が混じる。

「では、行きますよ」

 男の人が担ぎ上げたのか、体が浮いた気がした。

(うわ~、これで街まで行くのか~)

 確かにいづらいが、ワクワクが勝ってしまった。

(おもしろい)

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