ラノベ俺と自己啓発(妹)

ハカドルサボル

第1話 バカが全裸で撮ってみた

「AVを撮りたい」


 うちの妹(中2)がAV撮影なるものに興味を持った。


「お兄ちゃんは悲しいぞ」


「お兄、早くして」


 最近、中学校に行かずに本ばかり読んでいる妹は影響を受けやすい。

 何の本を読んだのか知らないが、親父のデジカメを片手に妹は俺に全裸になれ、と要求した。

 全裸、全裸、全裸! と突拍子もない相槌を送ってくる。


「お兄ちゃんが撮影されるの!?」


「全裸♡」


 顔を赤らめた妹は小悪魔的な笑みを浮かべる。

 全裸をカメラ撮影したら妹のAV欲求は満足されるそうだ。


「待ってくれ。何ならお兄ちゃんがモデルを紹介しよう」


「お兄、友達いないじゃん」


「友達いるよ!」


「高校いってないじゃん」


 妹が言うように俺は高校に行っていない。

 小学4年生の時からハマったケータイ小説にのめりこみ、16歳になった今でも続けている。

 ケータイ小説とは、昔のガラケーで書く小説のこと。

 書くのもケータイ、読むのもケータイ。

 作者のリアルな実体験の恋愛小説が話題を呼び、映画化されたこともある。

 まあ、7年間やってきた俺はアマチュアのケータイ小説家だった。

 妹が怒るのも無理はない。


「高校いかず友達作らず、『俺はケータイ小説で書籍化作家になる!』って――バカァアアアじゃないの?」


「うるせえ! お前だって学校いってないだろ」


 俺、駒田翔吾と妹、駒田歩は学校に行かず好きなことをやっているニート兄弟。


 俺はケータイ小説のなんたるかを極めるため、中学卒業と同時に親父に、「ケータイ小説を書く」と宣言して、高校を行くのをあきらめた。

 高校に興味はないが、大学進学を考えている。そのすべてがケータイ小説のためであって文学部に進学しようと高卒認定試験の勉強も並列で行っている。

 中学の友達を最後にリアル友達はつくっていない。


 妹が俺のベルトを強引に脱がそうとする。


「お兄のチ〇ポはナイスですね! お上手ですよ!」


「まだ脱いでねえ!? つうか脱がすなや!」


 おうちのリビングルームで、デジカメ片手に興奮する妹と、その妹に下半身を丸出しにされそうな半狂乱の俺がいる。どんな地獄絵図だ、それ。

 さいわい、両親は2人仲よくそろって海外出張に出かけているので、妹と2人きっり。それが非常にまずい。


 妹のセクハラが加速する。


「はい、まず1本いただきました」


 俺のぞうさんがデジカメに映る。

 半狂乱だ。


「らめぇえええええええええ!!!」


 ズボンをとられ、下半身が露出し、すっぽんぽんになった俺。

 妹に勝てないと判断し、自室に逃げ込むためリビングルームを出る。

 せめて映像に残る痴態だけはやめよう。

 玄関を走り抜け、自室で予備のズボンを穿くであります。


 ――ピンポーン。チャイムと同時に玄関が開く。


「あ……」「あ……」

 逃げる俺と追いかける妹、ヤバイと感じた。


 訪問者は美少女(自称)女子高生のレンチーさんだった。


「こんにちわ翔吾くん。ケーキ持ってきた……」


 レンチーさんと俺の目線があう。

 俺の下半身に視線を移し、再び俺と目線のあったレンチーさんは顔を赤らめ、盛大な悲鳴を上げた。


「きゃぁあああああああああ!!!!!!!!!」


 恥ずかしさのあまり俺のぞうさんはビッグマグナムと化す。

 妹のデジカメには14㎝の巨砲がばっちりと撮影された。

 瞬間、言い訳を考えてみたが3秒後にはレンチーさんの手元にあったケーキの箱が飛んできて俺の顔に生クリームが飛散した。

 下半身を露出した俺は生クリームだらけになり、調子に乗った妹が上半身も脱がせ始め、レンチーさんの絶叫の中、生クリームまみれの全裸男のAV撮影が開始。


 カオスだ!


 俺は気絶した。

 気絶した振りをした。

 この事態が収集するのを待つしかない。

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